公開シンポジウムを開催しました

フィールド科学教育研究センター

社会連携シンポジウム

「ひろげよう、フィールドの世界」

 

2017年3月19日(日)に、フィールド科学教育研究センター社会連携シンポジウム「ひろげよう、フィールドの世界」を京都大学益川ホールにて開催しました。大学の研究林をはじめとしたフィールドの利用を、これまでの自然科学分野だけでなく、芸術・社会・文化へも広げ、そこから新たな学問的発見を見出そうという視点から企画されたシンポジウムです。

講演ではまず、吉岡崇仁教授(センター長・当時)が、科学(洋才)と日本の心(和魂)が出会う場所としての森・自然という観点を提示し、続けて伊勢武史准教授(芦生研究林長)が、自然科学的手法を用いながら、森が人を感動させる理由を探る研究を紹介しました。一方、望ましい公共政策を追求する過程で自然にたどりついた広井良典教授(こころの未来研究センター)は、寺社の鎮守の森を中心に、成熟社会における理想的なコミュニティを作る構想を紹介。両氏は自然科学、人文社会科学という別々の出発点から、同じ森というフィールドに可能性を見出しています。また池坊の華道家である髙林佑丞氏は、自然と芸術の接点である生け花に関する講演と実演を行い、会場内は厳粛な雰囲気と、花々の春らしい空気に満たされました。

後半のパネルディスカッションでは司会の清水夏樹特定准教授(森里海連環学教育ユニット)が、参加者からの質問も紹介しつつ、登壇者へ問いを投げかけました。討論には山極壽一総長も参加しました。山極総長は、技術によって人間が翻弄され、現実の世界よりもイメージに囲まれるようになった現代、もう一度自然に立ち戻って考えようというシンポジウムだと評し、しゃれぼく生け花が木の皮や曝木を加えて時間を表現するように、表面に見える世界とは別の時間の流れをもたらすものが、人間には必要だと述べました。さらに広井教授の現代を文明的転換期と見る考えに同意し、過去の歴史を見てもそのような時期には学際研究が必要になると強調しました。

当日は約160人の参加者とともに、フィールドとしての森や自然を見つめ直すことができました。(京大フィールド研「ニュースレター42号」より転載)

 

 

【当日のプログラム】

日時: 2017319日(日) 14:00~16:00

 会場: 京都大学 益川ホール

     (吉田キャンパス北部構内北部総合教育研究棟1階)

 

◎講演

・講演1 「和と洋が出会う場所」

吉岡崇仁(フィールド科学教育研究センター長・教授)

・講演2 「人はなぜ、森で感動するのか」

伊勢武史(フィールド科学教育研究センター 准教授・芦生研究林長)

・講演3 「鎮守の森とコミュニティづくり」

広井良典(こころの未来研究センター 教授)

・講演4+公開制作 「いけばなから見る植物」

髙林佑丞(華道家、池坊短期大学 非常勤講師)

◎パネルディスカッション

・コメンテーター 山極壽一(京都大学総長)

 

〇登壇者(五十音順)

伊勢武史

(フィールド科学教育研究センター 准教授・芦生研究林長)

1972年徳島県生まれ。高校卒業後、社会人経験を経て、米国ワイオミング大学からハーバード大学大学院に進む。専門は生態学。地球温暖化と生態系のシミュレーションに取り組むかたわら、進化生物学の視点から人と自然のかかわりについて幅広く研究している。著書に『学んでみると生態学はおもしろい』『生物進化とはなにか?:進化が生んだイビツな僕ら』など。

髙林佑丞(華道家、池坊短期大学 非常勤講師)

1986年生まれ。昨年は京都いけばなプレゼンテーション・京都駅歓迎いけばなに出瓶、伏見稲荷大社・梨木神社へ池坊京都支部を代表して献華するなどの活躍のかたわら、池坊が京都市・スターバックス・伊勢准教授の協力で開催した「YES, WE DO KYOTO! 外来種いけばな」の立役者となる。2017年度より池坊短期大学非常勤講師。

広井良典(こころの未来研究センター 教授)

1961年岡山県生まれ。東京大学大学院修了後、厚生省、千葉大学法経学部教授を経て、2016 年より現職。専門は公共政策と科学哲学。「人間についての探究」と「社会に関する構想」を結ぶことに関心を持ち、近年は「鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想」をすすめている。著書に『ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来』『人口減少社会という希望』など多数。

山極壽一(京都大学総長)

1952 年東京都生まれ。京都大学大学院理学研究科出身。同研究科助教授、同教授などを経て、2014 10 月より現職。専門は人類学・霊長類学。著書に『京大式おもろい勉強法』『「サル化」する人間社会』『家族進化論』『ゴリラ』など多数。日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長を歴任。日本アフリカ学会理事、中央環境審議会委員、日本学術会議会員、国立大学協会副会長。

吉岡崇仁(フィールド科学教育研究センター長・教授)

1955年大阪府生まれ。森、川、海の各生態系のつながりに関して、森林集水域を対象として、栄養物質や溶存有機物などの動態を研究。自然と人間のつながりについても関心を持ち、人々の環境に対する価値観、意識について、アンケートや聞き取り調査をもとに解析してきた。著書・編著に『環境意識調査法―環境シナリオと人々の選考』『川と湖を見る・知る・探る―陸水学入門』など。

 

◎司会・進行

清水夏樹(森里海連環学教育ユニット 特定准教授)

京都大学と日本財団の共同事業で設立された森里海連環学教育ユニットの流域環境ガバナンス領域所属。農村計画学をベースに主に「里」をフィールドとして教育と研究,地域づくりの実践に取り組む。

主催/フィールド科学教育研究センター

共催/森里海連環学教育ユニット

 

~大学の森を守ろう~