センター長挨拶

asakura akira
ご挨拶

センター長 朝倉 彰

 京都大学フィールド科学教育研究センターは、全国にある京都大学のフィールド系研究施設を統合し2003年に設立され、異なる生態系のつながりと相互作用を科学する森里海連環学を標榜して多種多様な研究と教育を展開してきました。本年度で創立20周年を迎えます。森林系の施設として北海道、和歌山県有田川町、京都府芦生、里域系として京都市の北白川と上賀茂、山口県の周南市、和歌山県の串本町、海域系として和歌山県の白浜町、京都府の舞鶴市に施設があります。これらフィールド研の管理する土地は京都大学が所有する土地の90%にも及びます。また和歌山県に社会教育施設である白浜水族館があり年間10万人の来館者があります。

 フィールド研の教育研究部は、研究推進部門、森林生態系部門、里域生態系部門、海洋生態系部門の4部門、7分野から構成されます。研究内容として、森里海連環学をキーワードとして隔地施設のフィールドを活かした森林生態学、森林管理学、生物地球化学、里域から沿岸域にかけての人間-自然相互作用環解明の研究、人間-自然共生システム構造の研究、生物多様性を基軸とする系統分類学、生態学などの自然史分野の研究や、環境DNAやDNAバーコーディングによる多様性モニタリング、環境と生物の関係の長期モニタリング調査などを展開してきました。

 教育活動としては、学部教育において全学共通科目の森里海連環学分野での多数の講義やILASセミナー、農学部や理学部に対する多様な授業や隔地施設のフィールドを活かした実習を実施しています。大学院教育では、農学研究科と理学研究科、地球環境学舎の協力分野があり、多数の大学院生が学び、フィールドワーク系の研究を行って学位を取得しています。5施設(3拠点)が文部科学省から教育関係共同利用拠点に認定され、隔地施設とそのフィールドを全国の大学生、大学院生の教育と研究の場として公開し活用しています。

 今日のデジタル技術の著しい発達の中、我々の生活も大きく変わりつつあります。しかしそれがどんなに発達しても、自然に出て五感でそれを感じることに勝ることはできないでしょう。日本列島は東西にも南北にも長く、様々な気候帯を含みます。平地もあれば高い山脈もあり、大きな湖、大小様々な島もあり、自然のあり方が多種多様です。したがって日本の各地をフィールドとした研究は、様々な環境のモデルケースとして考えることができます。そこでの研究成果は、世界の様々な気候帯と地形における環境問題への応用が可能でしょう。自然とそこに住む生物の実態に根ざした研究は重要性を増し、人間と自然が共存する持続可能な開発と地球環境問題の解決に貢献すると考えられます。そしてそこに我がフィールド研の教育と研究の意義もあります。こうしたことを基盤として今後さらに次の20年に向かって新たな展開をしていきたいと考えます。

(2023年4月14日)