パナソニックとの共同研究その2

“窒素”と“きのこ”がつなぐ森林社会。これからの自然と人の共生を考える。

-パナソニックとの共同研究 ILASセミナー振り返りVol.1-

持続可能社会に向けた「自然・こころ・社会」に関する共同研究。2020年5月に開始した、京都大学フィールド科学教育研究センターと京都芸術大学そしてパナソニック株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部(以下、パナソニック)による取り組みを紹介します。

以下は、パナソニックの社内報に掲載されたILASセミナーの振り返り記事です。

About

「持続可能な社会をつくるためには、どうすればよいのか。わたしたちには何ができるか?」を自分ゴトとして考えてみる。京都大学の学生とパナソニックの社員さんが合同セミナーを通じて、探求し続けています。

みなさん、森里海連環学(読み方:もりさとうみ れんかんがく)って聞いたことありますか?これは、森から海における生態系間のつながり、生態系と人のつながりを考える学問で、京都大学が新しい学問領域として提唱し、教育・研究・社会連携を進めています。

「これまでの100年は、人々のくらしを物質的に豊かにすることで社会へのお役立ちを果たしてきました。一方で、人や自然を中心に考えると、心や体の悩み、環境・エネルギー問題など、くらしを豊かにするために犠牲にしてきたことがあるのではないでしょうか。過去100年で犠牲にしてきたことを取り戻すために、これからの100年、わたしたちに何ができるのか?を考えていく必要があると思っています。」と話すパナソニックの皆さんと一緒に学んでいければと思います。

Review

今回紹介する講義テーマは、徳地先生の「窒素」と赤石先生の「きのこ」です。地球全体の循環を二酸化炭素でなく窒素で見ると森林生態系と物質循環が、また、赤松の根と松茸の菌糸が地下でつながり共生しているなど、植物ときのこ、動物ときのこの多様なつながりから森林生態系でのきのこの重要な役割が、それぞれ見えてきました。

■「窒素」講義内容と感想

徳地 直子 さん (京都大学フィールド科学教育研究センター ・センター長 教授)

持続可能な社会、環境保全のイメージ、今あるものを減らさない、保つ、というイメージがあった。人間が手を加えて多様性を高める、という行動に違和感があった。変化に対して、対応していく、という考え方もあることに気づいた。行動につながる、考えることができそう。(農学部 資源生物科学科 山口真由さん)

個人的に、経済の発展と環境の保護が相反するという意見に違和感を覚えた。両者を同時に満たすことは決して不可能ではないと思う。人間活動が環境に与える影響を「悪」だと決めつけるのではなく、win-winの関係を築くこと、そのための方法を考えることが重要だと思う。もし経済と環境の両立を諦めてしまえば、経済に余裕がある国でしか環境保護が行われないことになってしまう。自然で儲ける、自然の恵みを利用して暮らす、といった方法を模索できないかと思う。(農学部 資源生物科学科 佐山葉さん)

「何事も過剰に行ったり極端な方法を取ることは良くない」という考えにまとまっていった場面が何度かあったように感じます。一体過剰という基準はどこからなのだろうかと思いました。科学的に検証されて出来上がった基準というものがあるとお話しされていましたが、あくまで人が作り上げたものであり、そもそも持続可能な環境を作らねばならないきっかけとなったのは、人が自らの主観でこれほどなら大丈夫であろうと思い続けてきた結果故であるので、今この瞬間での対応がいかに基準に沿ったものであっても、後の自然に与えてしまうマクロな影響を考慮することは非常に難しく、それほど自然は繊細なものなのだなあと思いました。(医学部 人間健康科学科 金善太さん)

■「きのこ」講義内容と感想

赤石 大輔 さん(京都大学フィールド科学教育研究センター 特定助教)

食材としてのきのこがあまり好きではなく、今までなんとなく負のイメージを持っていました。きのこは、分解者として資源循環の一端を担っているだけでなく、樹木や植物、昆虫と繋がりあって、人間の目の届かない土中や空中にも広がっているきのこの不思議な魅力を感じることができ、食卓にのぼるきのこたちにも少し好感がもてた気がします。ランも、なんとなく非自然的な感じがしてあまり好ましく思っていませんでした。しかし、他の植物とは違ったランの生き方を知って、葉緑体を持たない宇宙人的な姿を美しいと思えるようになりました。(農学部 地域環境工学科 堺美也さん)

山と疎遠になった現在の私たちの状況で、新たに自然とどのような関係を築いていくべきなのかと、考えさせられます。まだまだ謎が多いきのこの世界に、興味は尽きません。キノコの生態系や人に対する影響は大きいにも関わらず研究している人が少ないのも不思議ですね。個人的に色々調べてみたいです。前回セルロースファイバーのお話を聞いたので、原木や菌床を使って栽培した椎茸など食用きのこがあるように、使用済みの繊維を活用したセルロースファイバー椎茸なんてものがあったらと妄想しました。(農学部 資源生物科 玉田結唯さん)

きのこの全体は到底つかみきれない複雑で色んな種類がある、それ自体が面白い。ハエが舐めて死ぬ、それが何の役に立つか分からない、これが面白い。目先の利益などにこだわる昨今、どうなるか分からない転がる感じ、遊ばないといけないなという感じが良いと思いました。(京都芸術大学空間演出デザイン学科・教授 (株)ドットアーキテクツ代表 家成俊勝氏)

Interview

天野 智貴さん

パナソニック株式会社 マニュファクチャリング本部 マニュファクチャリングソリューションC メカトロ・システム技術部 資源循環技術課 

ILASセミナーに参加させていただいて、物事を多様な見方で据えられるようになりました。特に窒素循環のお話しを聞いて、単純に海が綺麗になれば環境に良いのではなく、窒素の含有量が増えた方が魚介類にとっては良かったりすると、複雑に事象が絡み合っていることを知りました。そして、様々な講義の中から多様な視点で考えることの大切さを感じました。学生みなさんとの交流によって、物事の見方に対する引き出しが増えたと思います。物事に対して業務のように深く考えたり、素朴に戻したりと考え方の幅が広がりました。このセミナーで学んだサスティナビリティの考え方を自らの業務に活かしていきたいと思います。

関連リンク

 パナソニック企業情報 サスティナビリティ トップメッセージ「社会の公器として」

https://www.panasonic.com/jp/corporate/sustainability/message2020.html