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凍ったヤチボウズの間をうろうろと

最後に残しておいた固定標準地調査サイト、湿性林の調査を行いました。

冬以外はぬかるみで歩きにくいため、凍り付くのを待って決行しました。ここ数日よく晴れて氷点下10度を下回る日が続いていたので、足元のコンディションはまずまず。その分気温は低く、谷底で日当たりも悪く、時折雪がちらつき寒さは厳しかったです。

途中、地上1m程度のホザキシモツケの藪の中に鳥の巣を見かけました。鳥は種ごとに異なる巣を作るのですが、主がいないと何の鳥が作ったものか分からないことも多いです。この巣から旅立った雛たちは今頃大きくなって、どこか遠くで羽ばたいているのかもしれません。

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研究ハイライト

希少鳥類の交通事故発生パターンの推定―長期データと状態空間モデルを用いた解析

フィールド科学教育研究センター 小林 和也

1.背景

 野生動物と車両の衝突事故は、人命と生物多様性保全に関わる大きな問題です。このような事故を防ぐためには、過去の事故データを分析し、有効な対策を議論することが重要と考えられています。しかし、欧米と比べてアジアではこのような研究はまだ少ない傾向にあります。また、これまで各国では主に道路での事故(ロードキル)について研究が進められてきており、鉄道事故(レールキル)はあまり注目されてきませんでした。

 本研究では、環境省が北海道で収集した 31 年分の道路と鉄道での事故記録を活用し、希少鳥類であるオジロワシ、オオワシ、タンチョウの車両事故における時空間的動態の解明を目的としました。交通事故はこれらの種の存続を脅かす要因として以前から認識されていましたが、今まで学術的な分析は実施されてきませんでした。そのため、今回の研究を通して北海道内における事故発生パターンおよび各種における特徴を科学的に理解し、事故対策へ役立つ情報を得ることを目指しました。

2.研究手法・成果

 本研究ではまず、環境省が 1991 年から 2021 年にわたり北海道で収集した道路と鉄道での事故記録を提供いただきました。この記録の中から、車両との衝突が保全上のリスクとして懸念されているオジロワシ、オオワシ、タンチョウ(いずれも環境省レッドリスト絶滅危惧 II 類、環境省保護増殖事業対象種)のデータを抽出しました。これらの種で衝突事故の時空間的動態を明らかにするために、季節、土地利用、地域を説明変数として年変動を状態空間モデル(用語 1)で解析しました。

 解析の結果、北海道全土で回収された個体の期待値は、1991 年から 2021 年の間にいずれの種においても数百から数万倍に増加したことが示唆されました。要因としては個体数の増加、事故発生確率の増加、事故の目撃・報告確率の増加が考えられます。また、それぞれ種において利用している環境や生息地での事故発生件数が多いこと、渡りの性質の違いを反映した季節性があることが示され、事故発生パターンには種間差があることもわかりました。

種ごとの推定事故報告件数の期待値経年変化。右下の凡例は一か月当たりの推定件数、図中の黒い箇所は、道路や線路のないエリアを示します。

3.波及効果、今後の予定

 オジロワシ、オオワシ、タンチョウにおけるロードキルとレールキル事故は長年懸念されてきましたが、本研究では統計的に事故が増加していることを示し、希少鳥類のロードキル/レールキル問題を客観的なデータを基に議論する重要な基礎を固めることができました。前述のとおり、事故増加の理由としては、(1)個体数の増加、(2)事故発生確率の増加、(3)事故の目撃・報告確率の増加、の三つが考えられ、今後の研究でこれらの要因を一つずつ紐解いていく必要があります。また、オジロワシ、オオワシ、タンチョウの生態学的特性や生息環境が事故発生の推定値の違いとしても反映されていました。このような種差は、各種に特化した車両事故対策に役立てることができる上に、生息域・利用する環境をはじめとした各種の基礎的な生態情報の理解にもつながると期待されます。

研究者のコメント

 このプロジェクトは若手研究者が集まってそれぞれの本業とは別のサブテーマとして動いていたため、プロジェクト専用の予算がない中で、打ち合わせや学会発表を重ね、何とか論文出版にたどり着いたものです。これまでもオジロワシ、オオワシ、タンチョウなどの北海道の大自然を代表する希少鳥類の交通事故増加は専門家の間では示唆されていましたが、データが公にされておらず、経年変化や季節性、土地利用などとの関連性を示した詳しい解析もなされていませんでした。本研究によりデータや解析手法、解析結果を公開でき誰もが利用できるようになったことにより、希少鳥類の交通事故死という喫緊の課題に対して、有効な手段を模索できるようになると期待しています。

用語解説

状態空間モデル:生き物の個体数の経年変化のような時系列データは、どうしてもある時点の個体数は直前や直後の個体数と似た値になります。そこでそれぞれの年の個体数を直接解析するのではなく、変化量を解析するなどの工夫が必要になります。また同じ年に同じように調査を行っても、偶然によって目撃出来たり出来なかったりしてしまうため、全く同じ個体数が目撃されるとは限りません。このような観測誤差と変化量を同時に推定するためのモデルが状態空間モデルと呼ばれる解析手法です。

文献情報

  • タイトル:Long term data reveals increase in vehicle collisions of endangered birds in Hokkaido, Japan(長期データによって示された北海道における希少鳥類の車両事故件数の増加)
  • 著者:小林和也、内藤アンネグレート素、貞國利夫、森井悠太
  • 掲載誌:Conservation Science and Practice DOI:10.1111/csp2.13250
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セグロカッコウ

5月の中旬頃に、標茶区構内で聴きなれない独特な鳴き声(「アカゲラの子育て」にも出ています)が構内に響き渡りました。何だろうと調べたら、セグロカッコウであることがわかりました。セグロカッコウはカッコウ科の旅鳥で、道東では確認記録がありませんが、北日本での観察記録が増えているそうです。(バードリサーチの記事(https://db3.bird-research.jp/news/202106-no2/)より)

見た目はカッコウに似ていますが、尾羽の先に太い黒色の帯があることから見分けられます。
従来の托卵相手が道東には生息していないため、ここで繁殖しているようであれば、新たな托卵相手がわかるかもと思いましたが、7月後半に姿(鳴き声)を消してしまいました。

セグロカッコウ
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白いカラス

夏頃から事務所周辺に白いカラスが出没しています。

ハシボソガラスのアルビノ(遺伝的に色素がない個体)でしょうか。

「今日は〇〇にいた。」と、目撃情報が話題になるなど、気になる存在です。

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越冬期の鳥類調査

林内で観察される野鳥のリストを作成すべく、夏期に続いて、越冬期の鳥類調査を行いました。

鳥類調査中

調査はあらかじめ決めたルート上の5地点を往復、それぞれ10分間に観察できた鳥を記録します。

調査開始時点の気温は約-13℃。スノーシューを履き、雪に覆われた林道を歩きます。調査中はほとんど動かないのでペンを持つ手もかじかみ、音声録音用のレコーダーの電池もすぐに消費してしまいました。

寒すぎなのか事務所周辺ではよく見るハシブトガラやゴジュウカラなどの小鳥たちは姿をほとんど見せず、カラスが鳴くばかり(牧場の多い標茶はカラスが多い)。正直盛り上がりに欠ける調査になりかけましたが、終盤にオオワシの群れが出没しました。以前より標茶でオオワシやオジロワシを見る機会は増えているように感じます。

鳥類調査はこれまで経験がなく、声だけとか、姿が見えても一瞬だけ、それも逆光で色が良くわからないなど、植物にない難しさがありますが、トレーニングして識別能力を身につけたいと思います。

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クマゲラ

構内に「キョーン、キョーン」とクマゲラの鳴き声が響いてました。

以前はほとんど見ることがなかったのですが、居心地の良い空間になったのでしょうか。

カメラを手に声の主を探してウロウロ。

トドマツの幹にその姿を発見しました。

つがいで鳴きかわしていたようでしたが、とんだお邪魔をしてしまいました。

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今年もオオジシギがやってきた

オオジシギ

【標茶】ズビャークズビャークという特徴的な声で目が覚めました。北海道には夏鳥としてやってくるオオジシギの声です。

あまりにも近くで聞こえたので、宿舎の窓から目を凝らして探してみると、地面の色に溶け込んだ2羽を見つけることができました。

画像サイズが小さいので、ここをクリックすると大きなサイズでご覧いただけます。

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タンチョウがやってきた

【標茶】夜の間にうっすらと雪が積もった日、2羽のタンチョウが宿舎のすぐ近くまで来ていました。特別天然記念物に指定されている鳥で、日本では絶滅してしまったと思われていましたが1924年に釧路湿原で再発見され、様々な保護活動によって生息数が回復してきたという経緯があります。

右の写真はタンチョウの足跡です。人間の足跡と比べて、その大きさが伝わるでしょうか。3本指の足跡は、まるで恐竜の足跡のように見えます。

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構内のタンチョウの親子

タンチョウの親子頭が白くなりかけている?幼鳥
【標茶】土曜日の朝、タンチョウの鳴き声で目が覚め、宿舎の外にでると構内と隣接する線路上に親子がいました。3羽いましたが1羽は餌を探してかこちら側の沢に下りてきていました。幼鳥は目の横が少し白くなっているように見えました。

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カワセミ

カワセミカワセミ
【標茶】構内の防火水槽に魚を放していますが、それを狙ってかカワセミが飛来していました。