研究

試験地で行われているおもな研究

外国産マツ属の生育と交雑育種

本試験地では、世界各地に分布する約100種のマツ属のうち、85種が生育している。ガラス室内で育成されている一部の種を除いて、大半は野外で育成されている。生育状態は、北アメリカ東部およびアジア東部原産種は比較的良く、北アメリカ西部およびヨーロッパ原産種は生育の悪い種が多いなど、原産地による生育状況の違いが明らかになっている。
マツノザイセンチュウに対する抵抗性は、北アメリカ東部原産種で強く、北アメリカ西部およびメキシコ原産種は弱いなど、その違いが明らかにされている。収集育成されたマツ属を利用して、1960年より100余通りの組み合わせについて種間交雑の可能性が調べられ、創出した14F1雑種の生育、形質が調べられている。

ダイオウショウの雄花

タケ類の開花周期

タケ類は見本園に14属88種が収集育成されている。タケ類は開花周期が数十年と長く、実生から開花までの期間を正確に確認できた例はわずかしかない。本試験地では、1979年と1997年にモウソウチクの67年目の開花を確認している。この開花したモウソウチクの種子から、次世代の育成を進めている。開花周期の確認はできていないが、1998年春にミクラザサ、1998年秋から2000年春にかけてナリヒラダケが開花した。このうちミクラザサについては、開花周期の解明のために、次世代の実生を育成している

モウソウチクの花

都市近郊の二次林

ヒノキが優占する本試験地の天然生林は、かつては隣接する地区の薪炭林として利用され、試験地への移管時(1949年)には、アカマツと広葉樹を主とする森林であったと考えられる。
近年、「里山」とも呼ばれるこのような二次林の存在意義が、森林利用や生物多様性の観点から見直されている。里山は本来、伐採や落ち葉かきなど定期的に人為攪乱が加えられることにより維持され、その環境に特有の多様な生物が生息していたが、生活・生産様式の変化に伴って放置され、極相林へと遷移が進行している。そして、遷移の進行に伴う、生物多様性の低下が指摘されている。
本試験地では、多様な樹種からなる植生の再生を目的とした小面積の伐採による人工ギャップの創出を行い(2000年1月)、人工ギャップ創出後の植生の変化などについて調査している。
2000年度からは、林相別に固定調査区を設定し、天然生林の成長量ならびに動態調査を行っている。

都市近郊林研究プロット

種子交換

世界各地の植物園や研究機関の相互協力のもとに、それぞれが採集した植物の種子を無償で提供しあうもので、毎年、提供可能な種子のリストを交換し合い、その中から希望する種子の発送を依頼する仕組みである。現在、上賀茂試験地では約120ヶ所の機関と種子交換を行っている。

交換用種子

外国産樹種の導入・育成

本試験地では、海外の植物園、研究機関との種子交換によって、これまで数多くの外国産樹種を導入し、本試験地の環境下での生育状況を調査してきた。多種を集めることを目標とした模索的な初期の導入期を経て、現在は見本林園の充実と再整備を目的に、マツ属、ツツジ科、ブナ科、カエデ科などを中心に導入を進めている。これまでに収集された樹種は105科、380属、4,300種におよぶが、半数は発芽に至らず、発芽しても環境への不適合や病虫害などによって枯死するものが多かった。現在生育しているのは99科、350属、750種である。その中で生育の優れたものは、ツツジ科、バラ科、メギ科などの花木類や、マツ、モミ、ヒノキ科に属する高木種で、高木種は構内の見本園だけでなく、見本林、実験林として植栽されている。
1950年に、アメリカから日本に送られたメタセコイアの苗木100本のうち、3本が構内に植栽され、現在では樹高が40mに達している。

メタセコイアとラクウショウの気根