カテゴリー
フィールド 業務報告

外国産マツの根回し

3月15日にチョウセンゴヨウ(Pinus koraiensis Sieb. et Zucc.)の根回しを行いました。
植栽後30年を経過しましたが、同時期に植栽した周囲のマツに被圧されて生育不良となっていたので、移植の前段階として実施しました。
根回しは、特に老木や生育不良木にとっては重要な作業の一つで、根元周囲の根系に細根を多数生じさせ、移植後の活着率の向上および良好な生育を促すことが期待されます。
まず、地際部の幹の直径を計測し、その値をもとに根鉢の大きさ(幹径の4~5倍程度)を決めます。その根鉢の周囲を、細い側根等を切りながら掘り下げていきます。ここで、太い根(概ね3cm程度以上)は切らずに残しておきます。

ある程度掘り下げた後は、小型のつるはし等も併用しながら横方向に掘り進めていき、幹の直下にある太い根も支持根として切らずに残しました。切断した細い側根は切り戻しを行って切口を整形します(断根法)。その後は残した太い根の処理前に一部の土を埋め戻しますが、既存土壌が堅固であったため、軽石や砂などを混合して排水性及び通気性を確保するとともに、切断した根の乾燥防止のため水極めによる突き固めを行いました。

先ほど残した太い根は、樹皮を剥ぎ取り、その部分に発根促進剤を塗布して、細根の発生を促します(環状剝皮法)。この方法は先の断根法と異なり、通水機能は保持されるので、枝枯れ発生を軽減でき、剪定量を少なくするメリットもあります。その後、通気性の確保のため、節を抜いたタケ4本(うち2本は環状剥皮した根の目印のため、その近接に)を土中に差し込み、すべての土を埋め戻しました。

最後に根鉢の上から灌水し、枝葉の一部を剪定しました。試験地のチョウセンゴヨウはマツ枯れにより現存数が減少しているため、今回の根回しによる移植準備を行いましたが、他の見本樹においても様々な手法を用いて 、保存に努めたいと考えています。

text/長谷川敦史