カテゴリー
学生実習

公開森林実習III −森林・里山の生態系サービスを学ぶ−

10月15日から12月10までのうち5日間の日程で、他大学学生を対象とした公開森林実習Ⅲが実施された。この実習は今年度で3年目になり、これから新たな里山を作り上げて、維持管理していくために必要な作業について、実習計画を自ら立案できるノウハウを修得するとともに、計画の実施を自らの責任で行う能力を醸成することを目標にしている。初回(10月15日)は、午前に赤石教員によるガイダンス及び舘野教員による試験地概要と講義が行われた。午後は最初に見本林の見学や薪を燃料として効率的に使用する方法を体験し、その後、炭窯を見学して製炭方法を学び、製炭用材の重量を計測した。最後は里山を作るための実習地(19林班)に足を運び、これからの管理方法や方向性の議論を行った。
2回目(10月22日)は、はじめに吉岡教員による講義「森林・里山に対する人々の思い」が行われた。講義終了後、標本館の見学が行われた後に昼食となった。午後からは、炭となる原木の重量計測並びに原木を炭窯に詰め込む作業が学生らによって行われた。その後、里山実習地の19林班に移動し、舘野教員からコナラのバイオマス調査に関する説明後、技術職員によるコナラの伐倒作業を見学した。学生らはコナラの樹高測定や枝葉の切り取りおよび回収を行った後、幹、枝、葉のそれぞれの重量を測定した。
3回目(11月19日)は株式会社HighLogic代表取締役の小森 優美氏を迎えて、国内の生糸や野草などを使った染物に関する講義が行われた。また自社の商品がどのように若い世代に受け入れられているか、エシカル、SDGs、地産地消などについても話があった。講義終了後、シイタケの収穫、クチナシとクロクルミを使った草木染を行った。お昼休みに収穫したシイタケを焼いて舌鼓を打った。午後からは、コンポスト作成班、草刈り班、歩道作成班の3班に分かれ、コンポスト班と草刈り班は19林班、歩道作成班は20林班に向かいそれぞれ作業を行った。
4回目(11月26日)は、午前に舘野教員による講義「里山の物質循環」が行われた。午後からは炭窯で実習を行い、はじめに大橋技術職員から、炭焼きを行っている間の炭窯や煙の温度や色の変化、その変化に応じた空気量の調整などについて解説が行われた。解説後、炭の窯出し作業や炭切りの作業、炭の重量計測の作業を行った。炭窯の窯出し体験の後は、19林班の実習地に移動し、前回の実習で作成したコンポストで堆肥づくりを行うための落ち葉はき作業、道づくりのための伐開作業、最終回で植樹を行う場所の刈払い作業を行った。
5回目(12月10日)の午前は、舘野教員の指導でバイオマス計算の演習が行なわれた。アロメトリ-式を使って胸高直径から樹高を算出し、バイオマスを測定することで、上賀茂試験地内の木質バイオマスの推定を行った。そこから、一般家庭の年間利用エネルギーを賄う木質バイオマスの量から、何軒の家庭を上賀茂試験地で維持できるかを求め、里山の持続可能な利用についての理解を深めた。午後は19林班に移動して、今後の里山整備の方向性についての議論を行った。その際に学生からの提案で、これまで19林班で果樹の植樹を行なってきたが、今後はさらに計画的に何を植えるべきか考える必要があること、上賀茂の景観や気候に適した、また周辺の在来植物等への遺伝的な撹乱を引き起こさないような樹種を選定すべきという方針がまとまった。
5日間の実習を通して、里山として森林を様々に利用する方法や里山の生態系サービスに関する学術的知見を体験的に学んだ。上記日程では、技術職員7名が安全管理及び記録、技術指導を行った。

文:上賀茂試験地技術職員

カテゴリー
フィールド 日誌

冬への入り口

今年も秋が終わり、冬に差し掛かろうとしています。多くの落葉樹が紅葉した葉を落とし、常緑樹とのコントラストもはっきりしてきました。11月30日と12月9日にそれぞれ撮影した写真では、後者の中央付近にあるラクウショウ(Taxodium distichum Rich.)の落葉が進んでいます。また、左奥にあるメタセコイア(Metasequoia glyptostroboides Hu et Cheng)はほぼ落葉が終わり、最前には常緑樹のヒヨクヒバ(Chamaechiparis pisifera cv. Filifera)が並びます。ヒヨクヒバの奥には、常緑樹メキシコラクウショウ(Taxodium mucronatum Ten.)の淡緑の葉が目立ちます。ヒヨクヒバはサワラの園芸品種ですが、他の3種はすべて近年までスギ科に分類されていた種で(現在はヒノキ科)、樹種により異なった情景を作り出しています。

text/長谷川 敦史

カテゴリー
フィールド 業務報告

モニタリングサイト1000毎木調査

12月5日から8日にかけて、モニタリングサイト1000(以下、モニ1000という)に係る毎木調査を行いました。モニ1000は「日本の複雑で多様な生態系の劣化をいち早くとらえ、適切に生物多様性の保全へつなげる」ことを目的に、環境省が2003年に始めた事業で、全国に1000か所以上の調査地(サイト)があります。当試験地は2007年より森林・草原調査のコアサイトの一つとして、毎年調査を行っています。毎木調査はプロット(0.64ha)に生育する樹木のうち、胸高(地上高1.3m)の幹周囲長が15cm以上の個体について、その値を計測します。プロットを10m四方の方形に区分けし、効率よく調査をするために斜面に対して平行移動できるようにナンバリングしたり、計測位置には目印として白のラインを付けています。昨年度より現場で電子野帳を使用し、データ入力の省力化を図っています。得られたデータから森林の種組成や構造、バイオマスなどを把握することができ、毎年調査することで経年変動や個体の生死及び生長量をもとに、構成種の動態を推測することが可能になります。
モニタリングサイト1000に関する詳しい内容はこちら

text/長谷川 敦史

カテゴリー
2022実習 学生実習

森里海のつながりの向こう(放送大学面接授業)

この授業は、放送大学京都学習センターが提供する専門科目(1単位)の自然と環境コースに位置づけられており、11月12、13日に10人の学生が受講した。この授業では、フィールド科学教育研究センターが進めている森里海連環学(森里川海からなる流域生態系における、物質と生物のつながり及び人とこれらの生態系の関係を明らかにする学問)について実習を通して学び、さらにそのつながりの先に何があるのかを考えることを目的としている。初日は、まず吉岡教員より里山の景観変化及び樹木検索法についての講義があり、10種類の樹木サンプルを同定するために樹木検索図鑑の使い方について学んだ。その後、事務所周辺や林道沿いに生育する国内外の樹木について識別実習が行われた。実習後は、森里海連環学や人間と自然の関係についての講義が行われた。翌日は、里山景観(里山を代表する樹種や炭窯や製炭等)を観察し、教育関係共同利用拠点である上賀茂試験地が実施している公開森林実習で整備している里山実習地の見学と解説が行われた。その後、環境哲学や環境倫理学についての講義が行われ、最後に森里海連環学の目的について討論が行われた。2日目は雨天であったが、無事に実習を終えた。なお、初日は境技術職員、2日目は藤井技術職員がそれぞれ、授業の安全管理及び記録、技術補助に当たった。

text/長谷川 敦史

カテゴリー
お知らせ

年末年始の休業について

上賀茂試験地では、下記の日程で休業いたします。当試験地をご利用の皆様には、ご不便をおかけいたしますが、ご理解ご協力をよろしくお願いいたします。

2022年12月29日(木) ~ 2022年1月3日(火)

以上