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ウツクシマツ見本樹の伐採

今年1月に京都市内で記録的な積雪がありました。上賀茂試験地でも積雪による見本樹の被害が発生し、中でも滋賀県旧甲西町(現湖南市)の自生地から教育研究のため導入した現存するウツクシマツ3本のうち1本が幹折れの被害にあいました。当初は枯れずに耐えていましたが、今夏にかけて次第に葉が褐変し、とうとう枯死しました。貴重な見本樹が一つ失われ、非常に残念ですが、現存する2本を今後も維持していきたいと思います。
※伐採作業は、有資格者が十分安全に配慮し行っています。

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マツ枯れ防止のための樹幹注入剤施工2023

2023年4月13日にマツ枯れ防止樹幹注入剤を施工しました。薬剤は昨年から施工を開始したマッケンジーで、樹脂流出の少ない時期に施工が限定される従来のマツガード等の薬剤に比べて施工適応時期が広いため、この時期の施工が可能です。施工は4.5~6mm径のドリルで深さ3~8cmの孔をあけて、その孔に薬剤を注入します。幹径によって孔数が変わり、当試験地では省力化のため薬効を2年間持続させるため、2ml/孔としています。昨年は5mm径で5cmの孔をあけて、2mlの薬剤を注入するのに10分程度かかったため、今年度は6mm径で6cmの孔としたところ、2mlを20秒程度で注入することができました。注入後は、孔を木栓や癒合剤で塞ぎますが、孔から樹脂が出てくることを確認するため、後者を採用しています。
また、今年度はゴヨウマツ類に加えて、現存数が減少している2葉マツの一部にも施工しました。今後は他のマツ類や剪定したマツにも施工対象を広げることを検討しています。

text/長谷川 敦史

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業務報告

見本樹植栽

苗畑で育成したマンシュウクロマツ(Pinus tabulaeformis Carr.)の新植及び補植と見本樹として植栽していたチョウセンゴヨウ(Pinus koraiensis Sieb. et Zucc.)の移植を2023年3月に行いました。

新植及び補植

マンシュウクロマツは2007年に導入した種子を翌年に播種し、実生苗を10年以上苗畑で育成して3本が現存していました。育成期間が長く樹高が2m以上となったこと、植栽地と土壌環境が異なること、寄植えに近い状態であったこと等を考慮して、昨年10月に根回し(根元周囲の根系をきれいに切断し、細根を多数生じさせ、移植後の活着率の向上および良好な生育を促す技術の一つ)を行っています。2本は見本園に、残り1本はマツ見本林に補植として植栽しました。根回し期間が不十分だったとはいえ、若い個体のため、細根の発生を期待していましたが、新たな根はほとんど見られませんでした。さらに下部に硬い粘土層があるため、地下方向にも根がほとんど伸長していない状態でした。

新植地では、植穴で生じた土とバーク堆肥を混合して土壌改良を行った後、排水性を考慮して高植えとしました。前日に降雨があり、土壌中に水分が十分に含まれていたため、土極め(植栽種の根鉢に土を細い棒などで押し固め、空隙を少なくして根の乾燥を防ぎ、生育不良を起こさないように配慮すること)を行ってから灌水のみとしました。最後に支柱を設置し、一般的ないぼ結びで樹木を固定しました。試験地では、植栽木への獣害被害が懸念されること、獣害防除対策の省力化を図ることから、苗木の育成期間を長く設定しています。

移植

昨年実施した根回し作業から1年が経過したため、細根の発生を期待しながら掘り進めていきましたが、期待した効果は得られませんでした。根鉢は崩れることなく安定していましたが、念のため根巻きを施しました。本来は根鉢を包み込むようにしますが、今回は簡易的に、幅の狭い麻布を放射状に巻き、その上から荒縄を巻き付けました。
移植場所は近接地のため、重機と小型車で運搬を行い、先の新植と同様に改良後の土で埋め戻しを行いました。
4月に入り、順調に新芽が伸長していることを確認できたので、ひとまず移植は成功しました。今後も生育状況を注視していきたいと思います。

record and text / 長谷川敦史

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冬への入り口

今年も秋が終わり、冬に差し掛かろうとしています。多くの落葉樹が紅葉した葉を落とし、常緑樹とのコントラストもはっきりしてきました。11月30日と12月9日にそれぞれ撮影した写真では、後者の中央付近にあるラクウショウ(Taxodium distichum Rich.)の落葉が進んでいます。また、左奥にあるメタセコイア(Metasequoia glyptostroboides Hu et Cheng)はほぼ落葉が終わり、最前には常緑樹のヒヨクヒバ(Chamaechiparis pisifera cv. Filifera)が並びます。ヒヨクヒバの奥には、常緑樹メキシコラクウショウ(Taxodium mucronatum Ten.)の淡緑の葉が目立ちます。ヒヨクヒバはサワラの園芸品種ですが、他の3種はすべて近年までスギ科に分類されていた種で(現在はヒノキ科)、樹種により異なった情景を作り出しています。

text/長谷川 敦史

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モニタリングサイト1000毎木調査

12月5日から8日にかけて、モニタリングサイト1000(以下、モニ1000という)に係る毎木調査を行いました。モニ1000は「日本の複雑で多様な生態系の劣化をいち早くとらえ、適切に生物多様性の保全へつなげる」ことを目的に、環境省が2003年に始めた事業で、全国に1000か所以上の調査地(サイト)があります。当試験地は2007年より森林・草原調査のコアサイトの一つとして、毎年調査を行っています。毎木調査はプロット(0.64ha)に生育する樹木のうち、胸高(地上高1.3m)の幹周囲長が15cm以上の個体について、その値を計測します。プロットを10m四方の方形に区分けし、効率よく調査をするために斜面に対して平行移動できるようにナンバリングしたり、計測位置には目印として白のラインを付けています。昨年度より現場で電子野帳を使用し、データ入力の省力化を図っています。得られたデータから森林の種組成や構造、バイオマスなどを把握することができ、毎年調査することで経年変動や個体の生死及び生長量をもとに、構成種の動態を推測することが可能になります。
モニタリングサイト1000に関する詳しい内容はこちら

text/長谷川 敦史