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フィールド 実習

ILASセミナー「北海道の昆虫相」、公開森林実習Ⅱ「夏の北海道東部の人と自然の関わり」

8月7日から11日の5日間、併催でILASセミナー「北海道の昆虫相」と京都大学公開森林実習Ⅱ「夏の北海道東部の人と自然の関わり」が行われました。

コロナの影響で定員に制限をかけ、感染対策をした中での開催でしたが、京都大学の学生が北海道で実習するのは3年ぶりです。

ILASセミナーの参加者として京都大学から7名、公開森林実習の参加者として筑波大学、信州大学から各2名、京都府立大学、日本大学、北海道大学、東京農業大学から各1名の計15名が参加しました。

実習ではアカエゾマツ人工林の間伐体験、ピットフォールトラップやライトトラップを用いた異なる植生下での昆虫相の調査、火山や湿原といった道東ならではの地形や植生の見学を行いました。

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フィールド

木登りセミ

木に登るセミの幼虫

林内での作業後、一息ついているとカラマツの幹をセミの幼虫が登っていました。

セミの抜け殻はよく見るのですが、動く幼虫は新鮮でつい見入ってしまいました。

事務所に戻って何の種か調べようとしたのですが、抜け殻での識別は触角が重要なカギとなっているようで、ピントが怪しい写真と、サイズも測定していないうろ覚えの記憶では「恐らくエゾゼミ、かなぁ」までしかたどりつけませんでした。研究林あるあるです。

また山に入った際に手に届く範囲で羽化して、抜け殻が残っていることに期待します。

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イベント フィールド

沼幌小学校 木工教室

沼幌小学校の1,2年生9人が来研し、木工教室を行いました。

今回は初の試みで、モルックというフィンランドの伝統的なゲームを元に開発されたスポーツに挑戦しました。ただゲームをするだけではなく、実際に丸太を森から運び出して道具を作り、木の種類や使い道、森の手入れについて学び、さらには足し算、引き算の練習までするという盛りだくさんなメニューとなりました。

初めての体験に始めは悪戦苦闘していましたが、2年生が1年生をリードしてあげるなど、チームで協力して取り組んでいました。先生や職員も初体験のモルック。シンプルながら奥深い魅力につい熱くなってしまいます。

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イベント フィールド

初夏の花観察会 北海道フラワーソン2022

標茶区にて初夏の花観察会 北海道フラワーソン2022を開催しました。

北海道フラワーソンは北海道全域で5年に1回、同じ時期に開花している植物を探す市民参加型の調査イベントで、北海道研究林としては自然観察会の一環で参加を募って実施しました。

イベントには16人が参加し、研究林スタッフと一緒に林道脇、湿地、造林地、新植地などさまざまな環境で花探しをしました。普通に歩いていても目に留まらない小さな花も見つけ、観察会では101種の花(つぼみ、花終わり含む)を発見しました。

植物や鳥類などの目録の作成も業務で取り組んでいますが、草本植物は種数も多く、開催にあたっては職員で予習をして臨みました。初めて目にする花との出会いや、微妙な違いにも目を向けることで勉強になりました。

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フィールド

チトセバイカモ

バイカモ

環境DNAの採水をしている小河川にチトセバイカモ(Ranunculus yesoensis)が咲いていました。

本州と北海道に分布しているバイカモ(Ranunculus nipponicus var. submersus)は、湧水起源の水路など15℃前後で流量が安定した場所に生育する沈水植物です。漢字で書くと「梅花藻」で梅の花に似た花が特徴的です。清流のイメージと相まって、保全活動が行われている場所もあります。

よく似ているのですが、全体的に小型で花床に毛がないものをチトセバイカモと分類し、北海道の固有種です。

標茶区の河川は勾配が緩く、湧水も見られるなど、流量、水温ともに安定していて生育には適しているのか、群落としては小規模ながら随所でチトセバイカモを見ることができます。ただ、3年ほど前までは川底一面を覆うくらい繁茂していたのですが、春の大雨で流されて激減しました。

湿地を縫って流れているこの小河川には綿毛をまとった柳の種も流れていました。

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フィールド

イタヤカエデの花

イタヤカエデの花
イタヤカエデの花

次々と開葉、開花の始まっている標茶区です。作業道の巡視中にたくさん花を着けたイタヤカエデを見かけました。黄色いのでぱっと見では花と気が付かないかもしれませんが、枝先がもこもこしており、近づくと満開状態でした。

今年の秋にはプロペラ(イタヤカエデの種子)が降り注ぐかもしれません。

樹木の開花や種子の生産は年によって豊凶があります。他にも、シラカンバやヤチダモも昨年以上の花を咲かせているように感じます。

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イベント

初夏の花観察会 北海道フラワーソン2022のご案内

北海道研究林では市民の皆様を対象に、標茶区で初夏の花観察会を開催します。

5年に1回、北海道全域で野の花を一斉調査する北海道フラワーソンに合わせて行うもので、林内に咲いている花を探してリストアップし、報告も行います。

研究林スタッフと観察のポイントを確認しつつ、図鑑片手に花探しに挑戦しましょう。

新型コロナ感染症の状況によっては、中止する場合がございます。

  • 開催日時
    • 2022年6月18日(土)10:00-15:30(受付開始9:30)
  • 開催地
    • 京都大学フィールド科学教育研究センター北海道研究林標茶区(受付会場は研究林管理棟前(標茶町多和553))
      • 駐車場あり、標茶駅への送迎あり
  • 定員
    • 10名(応募多数の場合は抽選)
  • 参加費
    • 無料
  • 持ち物
    • 山歩きのできる(汚れてもいい)服装、歩きやすい靴、雨具、筆記用具、昼食、(適宜)虫よけ、図鑑等
  • 申込方法
    • 参加希望者全員の氏名、生年月日、性別、連絡先、送迎希望の有無を明記し、はがき、もしくはメールにてお申し込みください。メールの件名は「観察会申し込み」としてください。小学生以下のご参加は保護者同伴でお申し込みください。
  • 申込締切
    • 5月31日必着。抽選結果は6月6日までに郵送、もしくはメールにてお知らせします。
  • 申込先
    • (郵送)〒088-2339 北海道川上郡標茶町多和553 京都大学フィールド科学教育研究センター北海道研究林
    • (メール)hokuken(@マーク)mail2.adm.kyoto-u.ac.jp
  • 問い合わせ先
    • (電話)015-485-2637
    • (メール)hokuken(@マーク)mail2.adm.kyoto-u.ac.jp

当日はイベント保険に加入しますが、保険の範囲を超える補償はできない場合があります。参加される際は、マスクの着用等感染拡大の防止にご理解、ご協力をお願いします。個人情報は当イベント運営のみに使用します。

秋には白糠区でも自然観察会を開催予定です。

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フィールド

冬眠明けのエゾアカガエル

構内の見本林を整備している最中、日向でじっとしているエゾアカガエルに遭遇しました。

冬眠明けでまだ本調子じゃないのでしょうか。それとも見つかっていないと思っているのでしょうか。至近距離で撮影させてもらいました。

北海道には在来のカエルとしてニホンアマガエルとエゾアカガエルが生息しています。

そのエゾアカガエル、学名はRana pirica。アカガエルの仲間であることを示すRanaにアイヌ語で「美しい・可愛い」を意味するpiricaと名づけられています。一方で、アイヌ語では「美しい」要素はなく、テレケプ(飛ぶ者)、オオワッ(鳴き声に由来)と呼ばれています。

この時期は繁殖期にあたり、水たまりではにぎやかに鳴いている様子を観察することもできます。

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フィールド

フクジュソウ

フクジュソウ

日差しに力強さが戻り、凍りついていた構内の雪も目に見えて減ってきました。

いち早く雪が解けた木の根元に、フクジュソウの黄色い花が咲いていました。

道東地域では1つの茎に1つだけ花をつけるキタミフクジュソウ (Adonis amurensis) が多いのですが、こちらはフクジュソウ (Adonis ramosa) です。茎に複数の花がつき、葉の裏には毛がありません。

少し離れた場所にはキタミフクジュソウも咲き始めており、白い雪と茶褐色の地面にあって陽だまりのように輝く花が春の訪れを彩っています。

これから樹木の開葉が完了するまでの期間、太陽の光が降り注ぐ明るい林床でスプリング・エフェメラルと呼ばれる植物が、ひとときの光を活用すべく次々と開花させます。

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研究ハイライト

日本新産種のキクラゲAuricularia americana s. str.

北海道研究林白糠区で採取されたキクラゲが日本国内で初めて記録された種として報告されました。

このキクラゲは2020年9月に天然林での調査中にトドマツの落枝についていたものと、2021年4月にトドマツ造林地の除伐中に、枯死した個体の幹についていたものを技術職員が採取したもので、栃木県内のウラジロモミに発生していたものとともに、三重大学の白水貴博士らによって分子系統解析と形態比較が行われA. americana s. str.と同定されました。

これまで国内において正式なA. americana s. str.の報告がないため,本種の日本初報告となりました。
北海道から多くの標本が得られたことから、A. americana s. str.の和名としてキタキクラゲと提唱されました。

白水博士によると、市場に広く流通しているキクラゲ属菌の栽培では、培地の主原料として広葉樹材が用いられており、針葉樹材の利用は不適とされています。
一方、A. americana s. str.の子実体はモミ属やマツ属などマツ科の針葉樹材上に発生することから、針葉樹材を用いたキクラゲ属菌栽培手法の確立において有望な系統となることが期待されています。

枯死したトドマツについていたキクラゲ
枯死したトドマツについていたキクラゲA. americana s. str.
Microscopic morphology of Auricularia americana s. str. (TNS-F-91421). A: Abhymenial hairs. B: Basidia. C: Basidiospores. Bars: A 20 µm; B, C 10 µm.

白水貴,大前宗之,新井文彦,稲葉重樹,服部友香子(2021)日本新産種Auricularia americana s. str. (キクラゲ目).日本菌学会会報62.125–130