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2023実習 学生実習

森林に対する環境意識(放送大学面接授業)

 2023年5月20、21日に、吉岡崇仁教員による放送大学京都学習センター面接授業「森林に対する環境意識」が行われました。この授業は専門科目(自然と環境)として開講され、9名の受講者が参加しました。試験地の植物・林相観察を通して、人間と植物・森林との関わりについて考え、環境に対して人間が抱く「環境意識」について考察すること、環境哲学や環境倫理学、さらには環境経済学にも触れながら、その意識のもとで森林の価値を判断していることを体系的に把握することを目的にしています。
 初日は、試験地に自生している一般的な1 0種類の樹木の枝葉サンプルを用いて、葉の形状や枝への付き方等の見分けるためのポイントを習得する樹種同定を行いました。その後、試験地の紹介を兼ねた講義「森林の成立条件」が行われ、温量(暖かさの)指数および降水量の関係から、どのような森林が成立し得るかを学び前半が終了しました。後半は、歩きながら自生している樹木個体を観察し、識別のスキルアップを目指しました。野外実習の後は講義が行われ、環境の価値を考えるうえで、個人の価値観と環境への意識が重要であり、様々な価値判断がなされることなどが解説されました。さらに環境経済学や環境倫理学の観点から環境の価値を考えるための理論や方法を学びました。

 二日目は、まず一日目の樹木実習の復習も兼ねて、受講生より、いくつかの樹種で作成した死環(葉に熱を加えると、葉の細胞が破壊されるが、酵素の活性が維持されている部分では、細胞内のタンニンと空気中の酸素とがこの酵素により反応し、黒色に変化する現象)が紹介されました。その後は事務所から樹木観察をしながら、炭焼き窯や公開森林実習Ⅲ等で活用している里山実習地を見学しました。散策後は、講義「環境意識調査法について」が行われ、数値化できない環境意識の計り方に関して、一般人を対象にした社会調査事例をもとに紹介されました。フィールド科学教育研究センター(フィールド研)が実施した「木文化プロジェクト」の成果からは、国産材や間伐材に対するイメージ、住宅用木材に国産材を使用する際に支払うことができる価格が、居住環境等の属性が異なる回答者によってバリエーションを持つことなどが説明されました。フィールド研のメインテーマである森里海連環学を進めるうえで、環境意識が重要なファクターでもあることなどが説明され、最後にディスカッションとまとめが行われました。両日とも長谷川技術職員が実習の安全管理及び記録、サポートを行いました。

record and text/長谷川 敦史