カテゴリー
フィールド 業務報告

マツ枯れ防止のための樹幹注入剤施工2023

2023年4月13日にマツ枯れ防止樹幹注入剤を施工しました。薬剤は昨年から施工を開始したマッケンジーで、樹脂流出の少ない時期に施工が限定される従来のマツガード等の薬剤に比べて施工適応時期が広いため、この時期の施工が可能です。施工は4.5~6mm径のドリルで深さ3~8cmの孔をあけて、その孔に薬剤を注入します。幹径によって孔数が変わり、当試験地では省力化のため薬効を2年間持続させるため、2ml/孔としています。昨年は5mm径で5cmの孔をあけて、2mlの薬剤を注入するのに10分程度かかったため、今年度は6mm径で6cmの孔としたところ、2mlを20秒程度で注入することができました。注入後は、孔を木栓や癒合剤で塞ぎますが、孔から樹脂が出てくることを確認するため、後者を採用しています。
また、今年度はゴヨウマツ類に加えて、現存数が減少している2葉マツの一部にも施工しました。今後は他のマツ類や剪定したマツにも施工対象を広げることを検討しています。

text/長谷川 敦史

カテゴリー
フィールド 業務報告

見本樹植栽

苗畑で育成したマンシュウクロマツ(Pinus tabulaeformis Carr.)の新植及び補植と見本樹として植栽していたチョウセンゴヨウ(Pinus koraiensis Sieb. et Zucc.)の移植を2023年3月に行いました。

新植及び補植

マンシュウクロマツは2007年に導入した種子を翌年に播種し、実生苗を10年以上苗畑で育成して3本が現存していました。育成期間が長く樹高が2m以上となったこと、植栽地と土壌環境が異なること、寄植えに近い状態であったこと等を考慮して、昨年10月に根回し(根元周囲の根系をきれいに切断し、細根を多数生じさせ、移植後の活着率の向上および良好な生育を促す技術の一つ)を行っています。2本は見本園に、残り1本はマツ見本林に補植として植栽しました。根回し期間が不十分だったとはいえ、若い個体のため、細根の発生を期待していましたが、新たな根はほとんど見られませんでした。さらに下部に硬い粘土層があるため、地下方向にも根がほとんど伸長していない状態でした。

新植地では、植穴で生じた土とバーク堆肥を混合して土壌改良を行った後、排水性を考慮して高植えとしました。前日に降雨があり、土壌中に水分が十分に含まれていたため、土極め(植栽種の根鉢に土を細い棒などで押し固め、空隙を少なくして根の乾燥を防ぎ、生育不良を起こさないように配慮すること)を行ってから灌水のみとしました。最後に支柱を設置し、一般的ないぼ結びで樹木を固定しました。試験地では、植栽木への獣害被害が懸念されること、獣害防除対策の省力化を図ることから、苗木の育成期間を長く設定しています。

移植

昨年実施した根回し作業から1年が経過したため、細根の発生を期待しながら掘り進めていきましたが、期待した効果は得られませんでした。根鉢は崩れることなく安定していましたが、念のため根巻きを施しました。本来は根鉢を包み込むようにしますが、今回は簡易的に、幅の狭い麻布を放射状に巻き、その上から荒縄を巻き付けました。
移植場所は近接地のため、重機と小型車で運搬を行い、先の新植と同様に改良後の土で埋め戻しを行いました。
4月に入り、順調に新芽が伸長していることを確認できたので、ひとまず移植は成功しました。今後も生育状況を注視していきたいと思います。

record and text / 長谷川敦史

カテゴリー
お知らせ

2023年度春の自然観察会開催中止について

新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大防止のため、2020年度から引続き、今年度も春の自然観察会の開催を中止させていただきます。
皆様のご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。

カテゴリー
2022実習 学生実習

公開森林実習III −森林・里山の生態系サービスを学ぶ−

10月15日から12月10までのうち5日間の日程で、他大学学生を対象とした公開森林実習Ⅲが実施されました。この実習は今年度で3年目になり、これから新たな里山を作り上げて、維持管理していくために必要な作業について、実習計画を自ら立案できるノウハウを修得するとともに、計画の実施を自らの責任で行う能力を醸成することを目標にしています。初回(10月15日)は、午前に赤石教員によるガイダンス及び舘野教員による試験地概要と講義が行われました。午後は最初に見本林の見学や薪を燃料として効率的に使用する方法を体験し、その後、炭窯を見学して製炭方法を学び、製炭用材の重量を計測しました。最後は里山を作るための実習地(19林班)に足を運び、これからの管理方法や方向性の議論を行いました。
2回目(10月22日)は、はじめに吉岡教員による講義「森林・里山に対する人々の思い」が行われました。講義終了後、標本館の見学が行われた後に昼食となりました。午後からは、炭となる原木の重量計測並びに原木を炭窯に詰め込む作業が学生らによって行われました。その後、里山実習地の19林班に移動し、舘野教員からコナラのバイオマス調査に関する説明後、技術職員によるコナラの伐倒作業を見学しました。学生らはコナラの樹高測定や枝葉の切り取りおよび回収を行った後、幹、枝、葉のそれぞれの重量を測定しました。
3回目(11月19日)は株式会社HighLogic代表取締役の小森 優美氏を迎えて、国内の生糸や野草などを使った染物に関する講義が行われました。また自社の商品がどのように若い世代に受け入れられているか、エシカル、SDGs、地産地消などについても話がありました。講義終了後、シイタケの収穫、クチナシとクロクルミを使った草木染を行った。お昼休みに収穫したシイタケを焼いて舌鼓を打ちました。午後からは、コンポスト作成班、草刈り班、歩道作成班の3班に分かれ、コンポスト班と草刈り班は19林班、歩道作成班は20林班に向かいそれぞれ作業を行いました。
4回目(11月26日)は、午前に舘野教員による講義「里山の物質循環」が行われました。午後からは炭窯で実習を行い、はじめに大橋技術職員から、炭焼きを行っている間の炭窯や煙の温度や色の変化、その変化に応じた空気量の調整などについて解説が行われました。解説後、炭の窯出し作業や炭切りの作業、炭の重量計測の作業を行いました。炭窯の窯出し体験の後は、19林班の実習地に移動し、前回の実習で作成したコンポストで堆肥づくりを行うための落ち葉はき作業、道づくりのための伐開作業、最終回で植樹を行う場所の刈払い作業を行いました。
5回目(12月10日)の午前は、舘野教員の指導でバイオマス計算の演習が行いました。アロメトリ-式を使って胸高直径から樹高を算出し、バイオマスを測定することで、上賀茂試験地内の木質バイオマスの推定を行いました。そこから、一般家庭の年間利用エネルギーを賄う木質バイオマスの量から、何軒の家庭を上賀茂試験地で維持できるかを求め、里山の持続可能な利用についての理解を深めました。午後は19林班に移動して、今後の里山整備の方向性についての議論を行いました。その際に学生からの提案で、これまで19林班で果樹の植樹を行なってきたが、今後はさらに計画的に何を植えるべきか考える必要があること、上賀茂の景観や気候に適した、また周辺の在来植物等への遺伝的な撹乱を引き起こさないような樹種を選定すべきという方針がまとまりました。
5日間の実習を通して、里山として森林を様々に利用する方法や里山の生態系サービスに関する学術的知見を体験的に学びました。上記日程では、技術職員7名が安全管理及び記録、技術指導を行いました。

文:上賀茂試験地技術職員

カテゴリー
フィールド 日誌

冬への入り口

今年も秋が終わり、冬に差し掛かろうとしています。多くの落葉樹が紅葉した葉を落とし、常緑樹とのコントラストもはっきりしてきました。11月30日と12月9日にそれぞれ撮影した写真では、後者の中央付近にあるラクウショウ(Taxodium distichum Rich.)の落葉が進んでいます。また、左奥にあるメタセコイア(Metasequoia glyptostroboides Hu et Cheng)はほぼ落葉が終わり、最前には常緑樹のヒヨクヒバ(Chamaechiparis pisifera cv. Filifera)が並びます。ヒヨクヒバの奥には、常緑樹メキシコラクウショウ(Taxodium mucronatum Ten.)の淡緑の葉が目立ちます。ヒヨクヒバはサワラの園芸品種ですが、他の3種はすべて近年までスギ科に分類されていた種で(現在はヒノキ科)、樹種により異なった情景を作り出しています。

text/長谷川 敦史