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モニタリングサイト1000毎木調査

12月5日から8日にかけて、モニタリングサイト1000(以下、モニ1000という)に係る毎木調査を行いました。モニ1000は「日本の複雑で多様な生態系の劣化をいち早くとらえ、適切に生物多様性の保全へつなげる」ことを目的に、環境省が2003年に始めた事業で、全国に1000か所以上の調査地(サイト)があります。当試験地は2007年より森林・草原調査のコアサイトの一つとして、毎年調査を行っています。毎木調査はプロット(0.64ha)に生育する樹木のうち、胸高(地上高1.3m)の幹周囲長が15cm以上の個体について、その値を計測します。プロットを10m四方の方形に区分けし、効率よく調査をするために斜面に対して平行移動できるようにナンバリングしたり、計測位置には目印として白のラインを付けています。昨年度より現場で電子野帳を使用し、データ入力の省力化を図っています。得られたデータから森林の種組成や構造、バイオマスなどを把握することができ、毎年調査することで経年変動や個体の生死及び生長量をもとに、構成種の動態を推測することが可能になります。
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text/長谷川 敦史

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見本樹への殺虫剤散布

5~8月にかけて、見本園に植栽している各種樹木(主にマツ属)に殺虫剤散布を実施しました。特にマツ属は外国産も多く、マツ枯れ防止のためには重要な業務の一つで、その病気を引き起こすマツノザイセンチュウを媒介するマツノマダラカミキリの活動時期に合わせて散布することで薬剤の効果が発揮されます。抵抗性害虫の出現を抑止すること、残効期間と使用限度回数を考慮して、薬剤は2種類を併用しています。これらの薬剤は毒劇物に指定されているため、化学防護服等の着用が必要で、真夏の時期は特に熱中症にも注意が必要です。散布にはトラクターの後部に散布用のアタッチメントをつけて、ノズルから高圧噴射させているので、高木性の樹木にもある程度は対応できます。

また、今年度よりトラクターが進入できない山地斜面に植栽されている一部のマツ属数種についても、新たに散布を開始しました。これらの種は、噴霧器で散布可能な樹高に限られますが、試験地内で生育数が少ないもの、新植や補植したものを中心に長谷川及び紺野技術職員が行いました。

text/長谷川敦史

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モニタリングサイト1000調査

5月23日から26日にかけて、モニタリングサイト1000(以下、モニ1000という)に係る各種調査を行いました。モニ1000は「日本の複雑で多様な生態系の劣化をいち早くとらえ、適切に生物多様性の保全へつなげる」ことを目的に、環境省が2003年に始めた事業で、全国に1000か所以上の調査地(サイト)があります。当試験地は2007年より森林・草原調査のコアサイトの一つとして、毎年調査を行っています。今回は落葉落枝・落下種子調査(以下、リター調査という)、セルロースフィルター分解試験、地表徘徊性甲虫調査(以下、甲虫調査という)の3項目について行いました。リター調査は毎月一回、直径約80cmの逆円錐形トラップの中に落下した枝葉や種子を紙袋に回収します。約1haの調査地内にトラップを25個設置しており、月ごとに落下量に差があります。この調査は落葉落枝量や種子生産量の推定や、樹木の更新特性を明らかにする上で重要なデータになります。セルロースフィルター分解試験では、地中および落葉層にセルロースフィルターを埋設し、埋設及び回収時期を変えて、分解の程度を明らかにします。今回は昨年の秋期に埋設したフィルターを、埋設場所近くに付けた目印を頼りに、破らないように慎重に回収しました。甲虫調査は、円柱型のピットフォールトラップを地面に仕掛けて、約3日間、そこに落下する地表徘徊性甲虫を捕獲します。調査地には合計20個のトラップを地面と同じ高さになるように、かつ凹凸を無くすように設置し、落下の妨げとならないよう配慮します。同省が対象とする甲虫類は、温度に対する感受性が高く、寿命が短いため、地球温暖化影響が早期に検出できる生物として重要な位置付けがなされています。
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text/長谷川敦史

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外国産マツの根回し

3月15日にチョウセンゴヨウ(Pinus koraiensis Sieb. et Zucc.)の根回しを行いました。
植栽後30年を経過しましたが、同時期に植栽した周囲のマツに被圧されて生育不良となっていたので、移植の前段階として実施しました。
根回しは、特に老木や生育不良木にとっては重要な作業の一つで、根元周囲の根系に細根を多数生じさせ、移植後の活着率の向上および良好な生育を促すことが期待されます。
まず、地際部の幹の直径を計測し、その値をもとに根鉢の大きさ(幹径の4~5倍程度)を決めます。その根鉢の周囲を、細い側根等を切りながら掘り下げていきます。ここで、太い根(概ね3cm程度以上)は切らずに残しておきます。

ある程度掘り下げた後は、小型のつるはし等も併用しながら横方向に掘り進めていき、幹の直下にある太い根も支持根として切らずに残しました。切断した細い側根は切り戻しを行って切口を整形します(断根法)。その後は残した太い根の処理前に一部の土を埋め戻しますが、既存土壌が堅固であったため、軽石や砂などを混合して排水性及び通気性を確保するとともに、切断した根の乾燥防止のため水極めによる突き固めを行いました。

先ほど残した太い根は、樹皮を剥ぎ取り、その部分に発根促進剤を塗布して、細根の発生を促します(環状剝皮法)。この方法は先の断根法と異なり、通水機能は保持されるので、枝枯れ発生を軽減でき、剪定量を少なくするメリットもあります。その後、通気性の確保のため、節を抜いたタケ4本(うち2本は環状剥皮した根の目印のため、その近接に)を土中に差し込み、すべての土を埋め戻しました。

最後に根鉢の上から灌水し、枝葉の一部を剪定しました。試験地のチョウセンゴヨウはマツ枯れにより現存数が減少しているため、今回の根回しによる移植準備を行いましたが、他の見本樹においても様々な手法を用いて 、保存に努めたいと考えています。

text/長谷川敦史

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モッコクの剪定

3月11日に事務所前に植栽しているモッコク(Ternstroemia gymnanthera Sprague)を剪定しました。数年間手付かずであったことと、日当たりも良いため、写真のように上下の枝間が無くなるほど枝葉が伸長していました。今回は樹冠の上部と下部で剪定強度を変えて仕立てるため、一人一本ずつ剪定をしました。枝ぶりを再構成するような剪定ができる職員が少ないため、その技術を身につけるとともに、職員間で技術継承を実施しています。

text/長谷川敦史