2024年10月20・21日の二日間の日程で 京都大学大学院人間・環境学研究科附属学術越境センター 2024年度第1回「Field Encounter」芦生 が開催され、日本人学生1名、中国人留学生5名の計6名の大学院生が参加しました。
この実習は、「美山町の自然の保全と利用、芦生研究林における研究活動を学ぶ」をテーマに、今年初めて開催されたものです。
1日目、まず京都丹波高原国定公園ビジターセンターにおいて、一般社団法人南丹市美山観光まちづくり協会から「日本一の田舎」をキーワードに観光中心のまちづくりに力を入れている美山町の取組みについての講義を受けました。なぜ美山町がUNWTO(国連世界観光機関)よりベスト・ツーリズム・ビレッジに認定されるほどの評価を受ける観光地域になったのか、その背景にある人口減少問題や、消費者である来訪者だけではなく提供者である住民の視点も大事にした事業展開について学びました。
地元の料理旅館のお弁当を食べた後、かやぶきの里に移動し、地域のガイドさんに案内していただきました。かやぶきの里が国の重要伝統的建造物群保存地区になった経緯や、かやぶき家屋の作りについての解説を受け、さらに循環型社会が営まれていた昔の暮らしについて学びました。
夕方、芦生研究林に移動し、石原正恵准教授 (研究林長) より芦生研究林について、その歴史や現在直面しているシカの過採食をはじめとした諸問題に関しての講義を受けました。また、今年リニューアルオープンした資料館 斧蛇館を見学し、翌日の林内散策に向けてのイメージを膨らませました。
2日目、バスで長治谷に移動、そこからウツロ谷までの見学を行いました。往復約2時間の道中、植生、動物、きのこや生態系について、さらにかつて森を利用した人々の生活が営まれていた歴史についての解説を受けました。また、大規模シカ柵内の様子も見学するとともに、かつての下層植生があった頃の写真と比較することで、1日目の講義で学んだ芦生の現状問題についての再認識にも繋がりました。
下山後、参加大学院生が2日間の振り返りを行いました。今回の大学院生は、心理学・文学や言語学などを専門としており、森に関する研究とは全く異なる分野ですが、「聞くだけではなく実際に芦生の森に入ることで、植物と動物のつながりについて知ることができた」、「森は循環しており、人間も循環の中の一部であることを感じることができた」、「シカ問題と人間社会のつながりが印象深かった」などの感想がありました。また、「理系研究がどのように行われているのか、そしてその大変さを感じた」という文系学生ならではの率直な意見も聞かれました。学術を横断的につないでいこうとされている学術越境センターや、超学際研究教育拠点や森里海連環学を目標とするフィールド科学教育研究センター芦生研究林ならではの実習が実施できたと思います。



