研究

 本研究林では、多くの森林に関する研究が行われています。主な研究は動植物の生態や分類に関するものですが、その他にも林業や林産業に関するもの、気象や地形など自然環境に関するものなど多岐にわたっています。この他に学内外の研究者が本研究林と行う共同研究や、研究者が独自に行う研究が進められています。詳細は芦生研究林利用成果物一覧(1930-2020)、「京都大学で行われた試験研究目録 第1号(1968) 第2号(1980) 第3号(1990) 第4号(2000) 第5号(2009)」をご参照ください。 現在まで本研究林が主体的に取り組んできた研究を以下に示します。

芦生研究林で行われている主な研究

生物相と生態の解明

 アシウスギ、アシウアザミ、アシウテンナンショウなど新種・新変種として本研究林で初めて記載された種は58種に上ります。2019年には北近畿初記載となる着生ランのフガクスズムシソウが見つかっています。遺伝的多様性の面から本研究林内の個体群の評価も進められています。環境DNA・AI等の手法も活用し、植物・菌類・脊椎動物・無脊椎動物・微生物など様々な生物の生態・個体群動態・群集に関する研究も行われています。

森林機能の解明

 本研究林は由良川の最源流部に位置し、森林集水域研究が可能な地形を有しています。この地の利を生かして、水土保全、物質循環をはじめとする環境保全機能を長期的にモニタリングし、解析・評価しています。

森林の維持機構の解明および環境変化・攪乱の影響評価

 1979年より多数の固定標準値調査が設定され3~5年毎にモニタリングを続けています。さらに、1990年代以降、3ヶ所の大面積天然林動態調査区(面積16ha、8ha、6ha)が設定され、種子生産・実生・成木のモニタリングが継続されています。2007年からは「モニタリングサイト1000」(環境省プロジェクト)のコアサイトに認定されています。加えて2016年に、国際長期生態学研究ネットワーク(ILTER)および日本長期生態学研究ネットワーク(JaLTER)のコアサイトに認定され、国際的なデータ公開を進めています。これらのデータを解析し、地球温暖化等による森林の変化の早期検出・将来予測を進めています。

人と自然の持続的関係についての学際研究

 本研究林は設定前より現在にいたるまで人が利用しています。こうした歴史を生かし、森里海連環学の研究が行われています。森・川・海の繋がり、さらに生態系と人間社会との関係を、自然科学、社会科学や人文学も含めた分野横断的学際手法で明らかにしようとするものです。

LIFEPLANプロジェクト

 芦生研究林は、LIFEPLANという生物多様性調査の国際プロジェクトに参加しています。LIFEPLANプロジェクトは、世界の生物多様性の把握を目的として、ヘルシンキ大学が中心となり2021年にスタートしました。詳細はこちら