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武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園と連携協定を締結しました

2026年5月22日に、芦生研究林と武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園(以下、京都薬用植物園)は、植物の保全に関する連携協定を締結しました。この協定は、相互に連携協力することにより、芦生希少植物域外保全プロジェクトをはじめ、植物の保全、栽培、展示、教育、研究、社会貢献活動を進めることを目的としています。

芦生研究林では、1990年代後半からニホンジカによる植物の過採食が続いています。多くの植物が食べられ、これまで普通に見られた植物さえも見かけなくなってきています。そこで芦生研究林は、研究者、行政、猟友会、市民ボランティア、企業などと連携し、2006年から防鹿柵による植生保護、2008年からシカの捕獲を実施しています。

特に深刻な状況なのが、もともと個体数が少なく、限られた場所にのみ生育している希少植物のさらなる減少です。そこで、2018年から、京都大学人間・環境学研究科の阪口翔太助教(現・農学研究科・教授)の呼びかけのもと、京都大学と京都府立植物園が連携し、芦生希少植物域外保全プロジェクトが始まりました。研究林内で絶滅に瀕している貴重で希少な植物種の種子や株を遺伝的多様性に配慮し採取し、生育地の外(域外)で、緊急避難的処置として育て保護しています。緊急度が高く、比較的栽培が容易なゼンテイカ、タヌキラン、ヒメシャガ、コバノトンボソウ、タイミンガサ、クルマバハグマ、マルバスミレ、チョウジギク、リュウキンカ、ミヤマキスミレを対象種としています。京都薬用植物園には、2022年からプロジェクトにご協力いただき、タイミンガサ(コアコレクション)、タヌキラン・ゼンテイカ・ヒメシャガ(サブコレクション)を栽培いただいています。

さらに、2025年10月に開園した芦生保全植物園の植物観察エリアの整備においても京都薬用植物園にご協力いただきました。保全・栽培・展示を行う京都薬用植物園が保有するノウハウを活かし、エリア内に生えている植物や地形を活かした観察路の設計・工法・管理から、種名板に至るまで数多くのアドバイスをいただきました。

京都薬用植物園では、アシウアザミ・ハイイヌガヤなど芦生を特徴づける植物を植栽した芦生エリアを2025年に開設されました。芦生研究林内の特徴的な木本や草本を一つの場所に展示し、来訪園者へ研究林の多様な植生を紹介することを目的としています。植栽されているのは、芦生研究林で種子が採取され上賀茂試験地で栽培されていた植物(コミネカエデ、ハイイヌガヤなど)、芦生希少植物域外保全プロジェクトの域外保全株からの増殖個体(チョウジギク、クルマバハグマ、ヒメシャガ、ゼンテイカ)、芦生研究林より提供した植物(アシウアザミなど)などです。

また、京都薬用植物園では、きょうと生物多様性センター、京都府立植物園、京都大学上賀茂試験地などと連携し、薬用植物及び、京都府レッドリスト掲載種(府内の希少植物)の種子保存事業を展開してきています。芦生研究林の植物についても、野外での絶滅に備え、種子の長期保存を進めていきます。

 なお、京都薬用植物園と京都大学フィールド科学教育研究センター上賀茂試験地は、国際種子交換事業をはじめとする植物の栽培や植物資源の栽培・保全にかかわる分野での事業連携をすることにより、国際的な社会貢献活動の展開や生物多様性の保全、植物園機能の充実、専門人材の育成、環境教育の発展などに寄与することを目的に2024年1月に連携協定を締結しました。

■ 本協定の内容
1. 協定の名称:京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林と武田薬品京都薬用植物園の連携に関する協定書

2. 協定締結日:2026年5月22日(生物多様性の日)

3. 協定締結の目的:芦生希少植物域外保全プロジェクトをはじめ、植物の栽培、植物資源収集・保存などの分野で、両者が相互に連携協力することにより、生物多様性の保全を図り、それぞれの機能の充実、専門人材の育成、環境教育の発展に寄与することを目的とする。

4. 連携事項:主に以下分野について、連携し協働します。

(1)芦生研究林の希少植物種の生息域外保全事業の連携に関する事項

(2)植物の栽培・展示に関する事項

(3)植物資源の収集・保全に関する事項

(4)植物資源を用いた教育・研究・社会貢献活動に関する事項

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学生実習

カセサート大学「Summer Program」実習報告

6月16日にタイのカセサート大学の実習が行われ、学生16名、スタッフ2名の計18名が参加しました。

研究林到着後、初めに鈴木華実助教による芦生研究林の概要や歴史、研究林内で行われている教育研究活動などについて説明がありました。

その後、構内から軌道沿いの林内散策を行いました。道中は、鈴木助教からスギやヒノキなどの樹木紹介があった他、シカによる食害やクマによる樹皮剥ぎ、それらに対して実践されている被害防除について説明を受け、学生たちは熱心に聞いていました。参加した学生からは、「日本の森林を見るのは初めてで、コケや川の奇麗さに感動した」「(タイ国内も含め、) これまで森林に入る機会がなかったため、貴重な経験になった」というような声が聞かれました。

軌道散策終了後は、芦生保全植物園の植物観察エリアと希少植物の域外保全エリア、斧蛇館を見学しました。斧蛇館では、芦生研究林でみられる動物や植物の標本、昔使われていた小道具を興味深く見学し、鈴木助教に質問をする姿も見られました。

 タイでは見られない暖温帯・冷温帯ならではの植生、スギやヒノキを中心とした日本特有の人工林、またこれらを活用した地域の産業と動物被害の現状など、普段の生活の中ではなかなか学ぶことができない貴重な経験になったのではないかと思います。今回のようなタイとは異なる日本の森林を訪ねる体験学習は、新しい知見を身に着け、グローバルな視野を持つ良い機会になったのではないでしょうか。

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学生実習

東邦大学「野外生態学実習Ⅱ」実習報告

2026年5月25日~29日の日程で東邦大学の学生実習「野外生態学実習Ⅱ」が行われ、13名の学生が参加しました。

25日に現地入りした一行は、26日の午前中に森林軌道沿いの由良川で水生昆虫の調査を行い、午後からは灰野まで足を延ばして爬虫類・両生類の調査を実施しました。また、惣田特定助教の解説のもと、鳥類の調査を行いました。

27日は、長治谷からウツロ谷までの区間を移動しながら、松岡講師の解説のもと、関西地域の森林の特徴や、クマ剥ぎ、シカ過採食による植生被害と排除柵による保全について現場を見ながら学びました。その後、技術職員の指導のもと、長治谷のイヌカラマツ人工林で毎木調査を行い、森林調査の方法について学びました。調査後は、同地に生息しているハコネサンショウウオの調査を行い、最後に芦生のシンボルツリーである大カツラを見学しました。

28日は午前中に、松岡講師と惣田特定助教の指導のもと芦生研究林で行われたモニタリングサイト1000の過去の毎木調査データを用いて森林のモニタリングデータ解析に取り組みました。午後からは解析結果の発表が行われました。

29日はかやぶきの里を見学し、美山町の歴史や文化について学び、帰路につきました。

芦生研究林の豊かな生態系や植生は、東邦大学のある関東地方とは大きく異なっており、学生たちにとって多くの経験を積む貴重な機会となったことでしょう。この実習での学びが、将来の研究に役立つことを願っています。

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お知らせ 安全情報

一般入林ルート変更のお知らせ/Notice: Changes to Public Entry Routes

タケヤクリ橋の老朽化に伴い、通行の安全を確保するため、タケヤクリ橋を通行禁止にします。それに伴い、今年度より軌道方面の一般入林可能ルートを以下の通り変更いたします。

  • 変更前: 軌道小ヨモギまで
  • 変更後: 軌道タケヤクリ橋手前まで

Due to the deterioration of the Takeyakuri Bridge, the bridge is now closed
for safety. Accordingly, the rail road route is passable up to the bridge. No access beyond the bridge.

  • Previous Route: Accessible up to Kido Koyomogi
  • New Route: Accessible up to just before the Takeyakuri Bridge

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お知らせ 学生実習

(終了しました/Completed.)2026年度公開森林実習I「近畿地方の奥山・里山の森林とその特徴」 受講者募集のお知らせ

現在、2026年度公開森林実習I「近畿地方の奥山・里山の森林とその特徴」の受講者を募集しております。

参加を希望される場合はこちらをご覧の上、

特別聴講学生として受講する場合は2026年6月15日(月)

特別聴講学生とならずに受講する場合は2026年7月13日(月) までに必要書類をご提出ください。

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お知らせ 安全情報

(終了しました/Finished)銃器の使用による入林制限のお知らせ/Notice Regarding Restrictions on Entering the Forest Due to the Use of Firearms

芦生研究林の貴重な植生を維持することを目的に、下記日程で銃器による捕獲を行います。
つきましては入林者の安全を確保するため、下記のとおり終日入林を禁止します。

実施日:令和8年4月28日(火)、5月1日(金)(予備日)

実施日は終日銃器捕獲を行いますので、大変危険です。
下記日程におきまして間に関係なく絶対に研究林内へ立ち入らないで下さい。

In order to preserve the valuable vegetation of the Ashiu Research Forest, we will be conducting a cull using firearms on the dates listed below.
Therefore, to ensure the safety of visitors, access to the forest will be prohibited all day on the dates listed below.

Dates: Tuesday, April 28, 2026; Friday, May 1, 2026 (Reserve Date)

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研究ハイライト

希少植物保全のためのハイスループット遺伝分析法の検討

(元)京都大学人間・環境学研究科
相関環境学専攻
増田 和俊

芦生研究林は西日本最大級の天然林が残っており、1000種を超える維管束植物が生育しているなど極めて種多様性の高い地域として知られています。その中には各種レッドデータブックに記載されるような希少植物が多数生育していますが、これらの希少植物の多くはもともとの個体数が少ないうえ、2000年前後より問題となっているニホンジカの食害によって絶滅の危機に瀕しています。私たちは、こうした希少植物の地域絶滅を回避するため、自生地から種子を採取して食害の危険性がない安全な避難場所で栽培する「域外保全」を行っています。

適切な域外保全を行うにあたって、気を付けなければならない点の1つに採取する種子親の血縁関係があります。一般に生物は血のつながりが近い(クローン、兄弟など)もの同士が交配すると、その子孫の成長や繁殖に悪影響が出ることが知られています。従って、せっかく野外でたくさんの種子を採ってきても、それらすべてが同じ親由来の兄弟であった場合は、世代更新が上手くいかずに域外保全集団が途絶えてしまうかもしれません。このような危険性を回避するためには、事前に域外保全を行う個体やその親が持つDNA情報から血縁関係を調べる遺伝分析が必要です。しかし、従来の方法では種ごとに解析をカスタマイズする必要があることやデータ取得に時間と手間がかかることから、スピーディーに保全を進めにくいという欠点がありました。最新の遺伝分析手法の1つ(MIG-seq法)はこれらの欠点を改善できる可能性があったため、私たちはこの手法が域外保全に適用できるかどうかを、芦生研究林に自生し京都府絶滅寸前種であるヒメシャガ(アヤメ科)を研究対象として調査しました。

ヒメシャガの自生地は研究林の奥深くであり私たち研究者だけではアクセスが難しかったため、現地調査の際は林内に詳しい技術職員の皆様にご同行いただきました。自生地から採取した種子は大学の圃場で栽培し、これらの血縁関係を調べるため種子親に対して遺伝分析を行いました。その結果、最新の手法は従来の手法と遜色なく域外保全に適用でき、例えば現地では別株だと思っていた種子親の中にクローンが含まれていることや、ある種子親由来の種子は全て母親と父親が同じである自殖によって生まれたことなどが分かりました。今後は今回使った遺伝分析手法を他の希少植物に対しても用いることで、域外保全を行う種を増やしていきたいと考えています。

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研究ハイライト

123種の鳥類が生息する芦生研究林―鳥類の多様性保全に果たす役割―

京都大学 大学院 理学研究科
生物科学専攻 動物行動学研究室
惣田 彩可

鳥類は食物連鎖の上位に位置しており、自然環境の変動を反映する指標となる生物です。広大な面積の原生的な森林を残す芦生研究林には、多様な鳥類が生息していることが期待されます。一方で、2000年以降はニホンジカが増加したことにより、下層植生が減少してしまっています。これにより、下層植生を利用する種が減少することが懸念されています。

芦生研究林の鳥類相を体系的に調べた研究は、1971年のものと1989年のものが最後であり、合計108種が記録されています。しかし、これらの記録はシカの食害によって芦生研究林の景観が大きく変化する前のものであり、研究林の鳥類相の現状は明らかになっていません。そこで、私たちは、芦生研究林内を歩きながら観察した鳥類を記録するルートセンサス、かすみ網を用いて鳥類を捕獲する標識調査、さらに文献調査を行い、2000年以降に記録された鳥類を整理しました。

その結果、芦生研究林には16目44科123種の鳥類が生息することが明らかになりました。1971年と1989年の記録と比較すると、23種が新たに追加された一方で、8種は今回の調査では確認できませんでした。新たに確認された種の一つであるソウシチョウは外来種であり、芦生研究林には2006年以降に定着したと考えられます。また、今回の研究で記録された種のうち、ノジコ、ウグイス、コルリ、ヤブサメなどの下層植生を営巣や採餌に利用する種は、今後の個体数の減少が懸念されます。

今回の研究で記録された123種のうち、環境省レッドリストに掲載されていたのは17種、京都府改訂版レッドリスト2021に掲載されていたのは45種でした。このことから、全国的にも、京都府内においても、芦生研究林は鳥類の多様性保全において重要な役割を果たしていると考えられます。

本研究は、芦生研究林の公募研究事業のご支援を受けて行いました。研究の遂行にあたり、ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。

上段左からヨタカ1・ヤマドリ1・ジュウイチ1、中段左からキバシリ1・アカゲラ2・クマタカ2、下段左からアカショウビン3・カヤクグリ3・ゴジュウカラ4

撮影者:1梶田あまね、2堀尾岳行、3國近誠、4谷口正一

<掲載論文>

惣田彩可, 梶田あまね, 梶田学, 今井健二, 堀尾岳行, 坂根勝美, 谷口正一, 國近誠, 藤井睦美. (2025) 芦生研究林における鳥類相の現状:改訂目録と保全への示唆. 森林研究. 84:11-20.  http://hdl.handle.net/2433/298306

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近畿大学「環境管理学専門実験・実習Ⅱ」実習報告

 11月5日~7日にかけて、近畿大学農学部環境管理学専門実験・実習Ⅱが行われ、教員2名、TA1名、19名の生徒が参加しました。

 この実習は森林生態系を成す植物・動物・菌などの多様な生物のほか、化学物質や無機的環境を含む森林資源について、これを持続的に利用し保全することを目標に、森林管理,林業,生物多様性,地域振興,環境教育など,多面的な視点から学ぶことを目的としています。芦生研究林では、原生的な森林植生、生物相、長期動態プロットなどの研究サイト、植生保護柵などを通じた生態系保全を見学しました。

 初日は研究林到着後、芦生研究林の概要及び原生的な森の植生、気候等特徴について石原林長の講義を受けた後、暖温帯林の植生観察をするべく、森林軌道沿いを灰野集落跡地まで見学しました。スギやヒノキの人工林からコナラ、カシ、トチノキ、カエデ等多くの樹種の説明を加えながら熱心に見学が行われました。

 2日目は、大面積長期森林動態プロットを見学し、そこでの研究成果を石原林長が解説しました。その後、長治谷で昼食をはさみ、大規模防鹿柵、小型柵の見学を行いました。芦生の山を特徴づけるアシウスギ・ブナ・トチノキについて、シカやクマなど獣害による被害状況について、人と森の関わり(かつて森で生活していた木地師)についてなど、多様な視点から残された貴重な植生と併せて学習しました。学生たちは、植生や芦生研究林の歴史について積極的に質問を行い、解説を聞きながらメモを取ったりと非常に熱心に学んでいました。

 最後に見学を行った芦生研究林のシンボルでもある大カツラでは、木の大きさと着生している植物、その種類の多さに驚くとともに、木や植物の持つ力に興味津々の様子でした。
今年は紅葉が遅かったこともあり、学生さんは紅葉を楽しみながら、近大の講義で学んできたことを自然のなかで再確認したりと、五感を使い、とても熱心に受講していました。この実習での経験を活かし、生態系の在り方を多様な視点から考えられる人材となり、森林の持続的利用と保全が進むことを期待しています。

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お知らせ

京都大学の広報室の取材がありました

京都大学の広報室の取材がありました。広報誌「紅萠」第48号に芦生研究林の紹介と石原林長のインタビュー記事が掲載されました。

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また、京都大学の公式SNSに芦生研究林の紹介動画を掲載していただきました。