京都大学 大学院 理学研究科
生物科学専攻 動物行動学研究室
惣田 彩可
鳥類は食物連鎖の上位に位置しており、自然環境の変動を反映する指標となる生物です。広大な面積の原生的な森林を残す芦生研究林には、多様な鳥類が生息していることが期待されます。一方で、2000年以降はニホンジカが増加したことにより、下層植生が減少してしまっています。これにより、下層植生を利用する種が減少することが懸念されています。
芦生研究林の鳥類相を体系的に調べた研究は、1971年のものと1989年のものが最後であり、合計108種が記録されています。しかし、これらの記録はシカの食害によって芦生研究林の景観が大きく変化する前のものであり、研究林の鳥類相の現状は明らかになっていません。そこで、私たちは、芦生研究林内を歩きながら観察した鳥類を記録するルートセンサス、かすみ網を用いて鳥類を捕獲する標識調査、さらに文献調査を行い、2000年以降に記録された鳥類を整理しました。
その結果、芦生研究林には16目44科123種の鳥類が生息することが明らかになりました。1971年と1989年の記録と比較すると、23種が新たに追加された一方で、8種は今回の調査では確認できませんでした。新たに確認された種の一つであるソウシチョウは外来種であり、芦生研究林には2006年以降に定着したと考えられます。また、今回の研究で記録された種のうち、ノジコ、ウグイス、コルリ、ヤブサメなどの下層植生を営巣や採餌に利用する種は、今後の個体数の減少が懸念されます。
今回の研究で記録された123種のうち、環境省レッドリストに掲載されていたのは17種、京都府改訂版レッドリスト2021に掲載されていたのは45種でした。このことから、全国的にも、京都府内においても、芦生研究林は鳥類の多様性保全において重要な役割を果たしていると考えられます。
本研究は、芦生研究林の公募研究事業のご支援を受けて行いました。研究の遂行にあたり、ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。









上段左からヨタカ1・ヤマドリ1・ジュウイチ1、中段左からキバシリ1・アカゲラ2・クマタカ2、下段左からアカショウビン3・カヤクグリ3・ゴジュウカラ4
撮影者:1梶田あまね、2堀尾岳行、3國近誠、4谷口正一
<掲載論文>
惣田彩可, 梶田あまね, 梶田学, 今井健二, 堀尾岳行, 坂根勝美, 谷口正一, 國近誠, 藤井睦美. (2025) 芦生研究林における鳥類相の現状:改訂目録と保全への示唆. 森林研究. 84:11-20. http://hdl.handle.net/2433/298306
