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森林再生(樹木の更新・土壌回復)にむけて野外実験を開始

 芦生研究林ではシカによる過採食(いわゆる食害)による下層植生の衰退、樹木の更新阻害や土壌流出が課題となっています。この度、獣害対策用の特殊樹脂ネット「イノシカスライダー」(前田工繊株式会社)による新たな森林再生の実験を開始しました。

 当研究林ではこれまでも下層植生回復や生物多様性保全のため、各所に防鹿柵を設置してきました(総面積約30ha)。柵内では多様な植物や水質が回復し、樹木の更新も見られ、昆虫相なども柵外と違いがみられるようになりました。しかし、当地域は多雪地であるため、積雪前後に行うネットの上げ下ろしや補修・見回り等、維持管理に多くの労力を割いており、さらに保全エリアを拡大することは難しくなっています。

 柵外では、四半世紀にわたる食害により、土壌流亡が進み、樹木の更新も阻害され、林冠ギャップの拡大や、森林から不嗜好性植物の草地・裸地への遷移が危惧されています。こうした広域で樹木を更新させ、森林生態系の機能を回復させていくことが求められています。

 そこで、今回、試験的に「イノシカスライダー」を設置しました。この製品は樹脂ネットで、急傾斜地に設置すると、シカが滑りやすく、侵入を防ぐとされています。防鹿柵とは違い、ネットの上げ下ろしが不要で、倒木によるネット下がりのおそれがないため見回り回数を減らすことができ、維持管理コストの削減が期待されます。

 今回は、林冠ギャップが多く、土壌流出が進んでおり、まだブナの大木が残っている場所に設置しました。今年はブナの豊作年と予想され、今後、ブナが更新し林冠ギャップが埋まっていくことを期待し、ブナの更新状況や植物・菌類の変化を長期的にモニタリングし、回復力が失われつつある森林の効率的な回復策の開発を進めていきます。(旭硝子財団サステイナブルな未来への研究助成「シカの過採食により回復力を失った森林生態系の統合的再生策の確立」研究代表者:石原正恵)

 当日の設置作業には教職員、本学学生含め総勢16名が参加し、約5時間かけて、面積225平方メートル四方のプロットを2カ所設置しました。

 設置現場まで1人あたり約20kgの資材を担ぎ、高低差約200mを運搬、急斜面地で足場の安定しない場所での設置作業は研究林の業務の中でもハードな作業となりました。
 苦労の分、極めて高い効果が現れることを期待しています。

 現場技術指導ならびに一部資材提供を前田工繊株式会社さまにご協力いただきました。お礼申し上げます。
 このように、芦生研究林では貴重な森を守り再生していくための活動を進めています。合わせて、芦生研究林基金へのご寄付をお願いいたします。