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カビ?粘菌?ツノホコリ?

梅雨がないと言われる北海道にしては蒸し蒸しとした昼下がり、アカエゾマツ造林地での作業中にカビのようなものが朽木についているのを見かけました。

キイロタマツノホコリとツノホコリで、キイロタマツノホコリの方はゲル状の変形体から胞子を作る子実体へ変わっている最中の姿かと思われます。

〇〇ホコリって一体何?生き物かどうかも疑わしいような名前ですが、粘菌の仲間によくつけられている名前です。粘菌の仲間は厳密にはいろいろあるのですが、胞子からアメーバ状になり移動しながらバクテリアなどを捕食し、変形体となって胞子をつける子実体を作るといったライフサイクルを持つ生物です。今回見つけたツノホコリは正確には粘菌とも言い切れず、端的に言うとツノホコリの仲間という分類になります。

ぱっと見、気持ち悪いと思う人もいるかもしれませんが、繊細かつドラスティックな姿は大変興味深いです。

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シマリス

林内で作業中に、シマリスと出会いました。
ほお袋にいっぱい何かを詰め込んで、かわいらしい姿です。
このシマリスはあまり警戒心がなく、近づいてもなかなか逃げませんでした。

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ササの花

標茶区にてササが一部開花しているのを見つけました。

一般的にタケやササは開花周期が長く、時には大面積で一斉に開花し、その後は枯死してしまいます。更新のメカニズムは分かっていないことも多い植物です。

同じフィールド研の芦生研究林ではうっそうと茂っていたササが一斉開花とシカの食害で壊滅状態となり、ササを守る活動も行われています。上賀茂試験地では様々な種類のササやタケを栽培したり、開花結実した種を播種して栽培し、開花周期を調べたりしています。

北海道では一面に地表を覆うササが樹木の更新を阻害するため、重機を用いてササを除去する施業を行うこともあります。

今回開花していたのはごく一部だけでしたが、またどこかで咲いている姿を見かけるかもしれません。とりあえず標本として採取しておきました。ミヤコザサの仲間だとは思うのですが、識別は難しいので標本を眺めてゆっくり種名を確定できればと思います。

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グイマツF1の植え付け

2020年にカラマツを皆伐した伐採跡地の再造林を行いました。

今回はカラマツ×グイマツのF1雑種を1,600本/haの密度で0.75haの面積に植え付けています。もとは12.66haという大きな造林地だったのですが、少しずつ伐採、再造林して林齢の異なる林分を造成していく計画です。

森林管理という仕事に携わりながら、植栽の経験が豊富とは言えないため、植栽の手順や方法など相互に意見交換しながらの植え付けとなりました。皆伐跡地ということで日陰がないため、暑いとしんどいのですが、この日は冷たい風が吹き、作業する分には快適でした。

今後しばらくは下刈や獣害(エゾヤチネズミ・エゾシカ)対策が必要となります。学生実習や研究に生かせるよう、しっかり管理、記録をしていきたいと思います。

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白い花

5月に入って桜前線が到着したと思ったら、一気に初夏の装いとなりました。

新緑の林内でひときわ目を引く白い花。エゾノウワミズザクラが満開です。桜といってもソメイヨシノやヤマザクラとは異なり、ブラシ状にたくさんの花をつけます。辺りには花の香りが漂い、昆虫たちも忙しそうに花から花へ飛び回っていました。

林床には特徴的なフォルムのオオバナノエンレイソウが咲き始めました。シュロソウ科の多年草で、葉も萼片も花びらも3枚づつつけることから、「3つのユリ」を意味するTrilliumという学名がエンレイソウ属にはつけられています。発芽から年ごとにつける葉を少しずつ大きくさせ、開花に至るまで10年以上かかる気の長い植物です。

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エゾキケマン

林内でエゾキケマンが咲いていました。
先日投稿したエゾエンゴサクと同じ仲間です。形が似ています。
標茶区の研究林内ではあまり多くないということで、ラッキーな気持ちになりました。

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春の息吹

標茶区ではいろいろな樹木が芽吹いています。
林内ではエゾニワトコやハシドイ、ホザキシモツケなどが芽吹き始めているのを見ました。

構内でもノリウツギの冬芽が緑色になってきています。
ハリギリの稚樹の先端を見て、芽吹いてきたのかと思いましたが、よく見ると枯れていて、去年の葉っぱの残りのようです。芽吹きはいつ頃でしょうか。
ハリギリの稚樹はトゲがとてもしっかりしていて痛そうです。
近くにあるミズキやオニグルミ、ノリウツギなどは結構シカにかじられていますが、ハリギリは無事です。

構内ではバイケイソウも生えてきています。
芽出しの時期は、ギョウジャニンニクと似ていますが、毒があるので食べないようご注意ください。

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エゾエンゴサク

エゾエンゴサクが咲いています。
林道巡視中に撮影しました。
林道をふさぐ倒木を処理し、久々の体力作業に疲れている中、爽やかな青紫色の花に癒されました。

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春の林道巡視

標茶区は冬に土壌が凍結します。凍結すると水分がより深い土壌中から氷に引き寄せられます。

春になると凍ってカチコチだった路面が表面から解け、さらに冬の間の積雪が融解することで、たっぷりと水を含んだ路面はとても緩くなり、春の大型連休あたりまで車両の通行ができません。

緩んでいた路面も落ち着いた様子だったので、例年より若干早いですが林道の巡視に行きました。

冬の間の強風や着雪によって発生した倒木や、無数にある落枝、林道に残されたシカの角を除去し、路面、路盤に異常がないかも確認しました。研究者や学生が安全に利用できるよう、受け入れの準備を進めています。

車に乗っては少し移動して降り、中腰で枝を拾っては路外に捨ての繰り返しです。室内仕事が続いて体がなまったところにこの作業。疲れがにじむ四十路の背中です。

そして、そんな作業をした翌日には得てして大荒れの天気になるものです。

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研究ハイライト

標茶区における外生菌根菌相調査

京都大学フィールド科学教育研究センター 杉山 賢子

 2022年より、標茶区で外生菌根菌に関する調査を始めました。
 我々が普段見かける植物のほとんどは、根で何かしらの菌類と共生しています。中でも、ブナ科・マツ科・カバノキ科など森林の主要な樹種の根に感染し、相利的な養分の授受を行っているのが、今回の研究対象である外生菌根菌です。これら樹木の定着や生育には外生菌根菌との共生が不可欠であることから、外生菌根菌は森林の管理においても無視できない存在といえます。

 北海道研究林で植栽されているカラマツ・トドマツ・アカエゾマツといった樹種はいずれも外生菌根菌と共生する樹種です。林にどのような外生菌根菌が定着するかは、その林の樹種組成や土壌環境といった林自体の環境要因に加え、外からどのような菌が加入してくるかといった周囲の林の影響も受けて変化すると考えられています (より広域には気候なども影響)。しかしこれまでの研究では、調査対象となる林自体の環境が着目されることが多く、周囲の林の影響についてはわかっていない部分が大きいです。

 外生菌根菌は胞子を飛ばして新たな林に定着します。加えて菌種によって感染可能な樹木分類群が異なるため、どのような距離にどのような樹種組成の林があるかによって加入してくる外生菌根菌の種組成やその定着率が変化することが予想されます。本研究では、異なる樹種組成の林がモザイク状に広がる標茶区において外生菌根菌相の継続的な調査を行うことで、距離と樹種組成の影響を分離して周囲の林の影響を評価していきたいと考えています。

 2022年は、標茶区で最も植栽面積の広いカラマツに着目し、同じ樹種でも林分間の位置関係や隣接する林分の樹種組成の違いにより外生菌根菌相が変化するのかを調査しました。調査は地図に示したカラマツ人工林9林分で、6月、8月、11月の計3回行ないました。
 調査により、カラマツ林分間で外生菌根菌組成が異なること、その組成の違いは隣接する林分の樹種組成では説明されず、調査林分間の位置関係により一部説明されるということが示されました。しかし、どの林分間で外生菌根菌組成が類似する (または異なる) かというパターンは月によって異なっていました。大まかに、8月は北 (A, B) と南 (G-I) でも組成が似ていたのに対し、11月は北から南にかけて組成が変化していくという傾向が見られました (6月は空間構造見られず)。また、林分間で共有される外生菌根菌OTU (塩基配列の相同性に基づくグループ、今回はおよそ種に相当) 数も月によって変化していました。月により傾向が変わった理由は単年の調査ではわからないため、継続的な調査が必要です。

 また、興味深い結果として、林分間で共通のOTUが優占するという結果も得られました。中でも、9林分全てで得られたラシャタケ属のOTU (11月は8林分のみから検出) は、林分ごとの出現頻度も最も高く、カラマツの生育に対する影響が気になるところです。

 2022年はカラマツ林のみで調査を行いましたが、周囲の林からどのような菌種が加入してきているかを知るためには、他の樹種の外生菌根菌組成も調査する必要があります。2023年は樹種を増やして調査を継続する予定です。また現在は、定着済みの外生菌根菌に着目していますが、今後、林間での菌の移動分散も評価するべく、方法を検討中です。

北海道研究林標茶区内の調査地図示。研究林内を広くカバーする
調査地同士での外生菌根菌組成同異関係図。調査地間距離が関係か
調査地同士での外生菌根菌組成関係図
線が太い林分間で共通のOTUが多く見られた
調査地に繁茂するササの隙間から調査者の帽子がわずかに覗く様子
調査の様子
ササの隙間から被っているヘルメットが垣間見える