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研究ハイライト

心材成分および薬用成分であるリグナンの生合成に関する研究

京都大学生存圏研究所
梅澤俊明

私たちは植物が産生する生理活性成分の1つであるリグナンという化合物群の生合成について研究しています。リグナンの1種であるポドフィロトキシンは抗腫瘍性活性を示す化合物であり、臨床的に抗がん剤として利用されています。しかし、ポドフィロトキシン産生植物は希少であるため、将来的には同化合物の生合成を解明し、微生物などによって安定的に大量生産させることが期待されています。それゆえ、近年では、ポドフィロトキシンの生合成経路についての研究が盛んに行われており、同生合成経路に関与する生合成酵素遺伝子も多く見出されましたが、未だ完全な解明には至っていません。

芦生研究林内における由良川の川原に自生しているセリ科植物のシャクは、ポドフィロトキシン生合成経路を有していることから、私たちはこれまでシャクを用いて同生合成経路解明に向け研究に取り組んできました(Sakakibara et al., 2003; Ragamustari et al., 2013, 2014)。近年、一度に膨大な遺伝子情報を得ることが可能な次世代シーケンサーという分析機器を使用し、様々なシャクのサンプルから遺伝子情報を取得しました。そして、これら遺伝子情報とポドフィロトキシン生合成に関連するその他のデータとの相関解析を行うことによって、数十万という遺伝子群からポドフィロトキシン生合成遺伝子を絞り込み、標的とする遺伝子を同定することに成功しました(Kumatani et al., 2016, 2017)。しかし、未だに同生合成経路には見出せていない遺伝子も存在することから、現在それら遺伝子の取得を試みています。

掲載論文及び学会発表
Sakakibara et al. (2003) Org. Biomol. Chem. 1: 2474-2485
Ragamustari et al. (2013) Plant Biotechnol. 30: 375-384
Ragamustari et al. (2014) Plant Biotechnol. 31: 257-267
熊谷ら(2016)第34回日本植物細胞分子生物学会(上田大会)
熊谷ら(2017)第67回日本木材学会(福岡大会)

2018年1月17日