徳山試験地の「ふるさと文化財の森(檜皮)」

徳山試験地長 中島 皇

 徳山試験地では1998年から全国大学演習林協議会のメンバー大学と協力して、文化財建造物の修理に必要な大径材や檜皮などの材料供給に関する研究を推進し、ヒノキの剥皮試験林で檜皮採取試験や伐倒調査を行っています(ニュースレターNo14参照)。その甲斐あってヒノキ林8.68haが2007年度に「ふるさと文化財の森(檜皮)」に選定され、この度立派な説明板(写真1)が設置されました。選定されたヒノキ林のうち主要な部分は昭和の初めに植栽されたといわれる人工林で、1966年に徳山試験地が現在地に再移転するまでは、市有林として管理されていたようです。伐倒調査のデータから推定すると、現在の樹齢は80年になります。試験地の遠景を写した空中写真に、大まかな位置を示しました(写真2)。西側の尾根に広がる照葉樹天然林と見事なコントラストがみられ、それぞれの特徴が良く表れています。照葉樹林では優占種であるタブノキが大きな樹冠を構成し、他にも常緑広葉樹や落葉広葉樹が混交しています。一方ヒノキ林では過去に何度か台風被害を受けたり植栽試験を行ったりしたために幾つかのギャップは見られるものの比較的成長が良く壮齢の林となっています。どちらもしっかりした林です。
 山口県内では初めて選定された「ふるさと文化財の森」で、大学演習林関係では2006年度の岩手大学滝沢演習林(アカマツ)に次いで、2番目です。2007年度は東京大学秩父演習林(サワラ)も同時に選定されました。徳山試験地では周南市教育委員会と協力して記者発表や説明会を開催し、社会貢献に努めると同時に、檜皮剥皮試験の成果も含めて、モデル研修林(檜皮採取技能者の養成や研修会の開催が可能な林)として文化財保護活動にも貢献したいと考えています。

*ふるさと文化財の森とは
「国宝や重要文化財などの文化財建造物を修理し、後世に伝えていくためには、木材や檜皮(ひわだ)、茅(かや)、 漆(うるし)などの資材の確保と、これに関する技能者を育成することが必要です。このため、文化庁では、文化財建造物の修理に必要な資材のモデル供給林及び研修林となる「ふるさと文化財の森」を設定しています。(文化庁のHPより)

ニュースレター17号  2009年8月 ニュース