センター長挨拶

京都大学フィールド科学教育研究センター長 德地 直子

tokuchi2019

 フィールド科学教育研究センター(略称「フィールド研」)は、森の施設4か所、里の施設4か所、海の施設2か所のあわせて10のフィールド施設を運営しています。芦生研究林は来年度(2020年)地上権が設定されて99年になり、瀬戸臨海実験所は2022年に100周年を迎えます。それぞれの施設はこのような長い歴史の中で、背景となった自然と地域との関係を構築し、変わらない部分を維持しながら、それでも、その役割を時代や教育研究の要請に合わせて少しずつ変化させてきました。その結果、各施設はそれぞれの場所での京都大学のフィールドとして、また、地域を代表するフィールドとして、かけがえのないものになっています。次の100年、次の世代に向けて、さらにその意義を考えていきたいと思っております。
 近年新たに加わりました意義としては、2003年からフィールド研が推進している森里海連環学があります。社会や経済が急速に地球規模で繋がるようになった一方、人と自然は離れていってしまっています。森里海連環学はSDGs(Sustainable Development Goals)の基盤といえるものでもあり、森と海はつながっていること、そして、人はそのつながりの中で在り方を考えなければならないことを再認識し、自然と人との持続可能な共存原理を考えていくものです。言い換えれば、森里海連環学とは、今ある(かつてあった、と言ってもよいかもしれません)自然資源を、私たちも使わせていただくけれど、(そのまま)将来世代にも残せるように、科学的な知見に基づいてみんなで考え、行動することかと考えます。一方で、人も生態系もレジリエンスを備えています。レジリエンスとは、逆境(人の場合はストレス、自然の場合はかく乱といえるでしょうか)に対して、しなやかに適応していく力をいいます。これまで人類と自然がともにあったことを考えると、互いにそのレジリエンスを損なわないようなあり方について、先人はすでに気づいていたこと(伝統知)があるのではないでしょうか。私たちはその伝統知を科学的に紐解いて、より適応的な自然との共存の方法を考えていきたいと思います。
 現在フィールド研では、たくさんの研究者や協力者が力を合わせて森や里や海で多様なデータを集め、森や里が海に与える影響を科学的に明らかにし、地域の皆様と森里海連環学に基づいた地域作りをはじめています。既存の施設での教育研究だけでなく、2012年度に森里海連環学教育ユニットを作って人材を育成し、2018年度からはそのユニットを森里海連環学教育研究ユニットに発展させ、実践や研究を行ってきました。少しずつ新しい知見が得られておりますので、また皆様にご報告させていただきたいと思っております。
 森里海の連環に基づいた持続可能な社会の構築には、まだまだ考えなければならないこと、しなければならないことがたくさんあります。しかし、それはフィールド研だけで達成できるものではありません。皆様からの今後のさらなるご協力、ご支援をお願いいたします。

(センター長就任の挨拶 2019年4月)