ILASセミナー報告2016「環境の評価」

森林情報学分野 教授 吉岡 崇仁


 このゼミは、自然環境を評価することの意味について、自然科学的、社会科学的側面から考えることを目的としている。教室では、講義形式で環境評価に関わる概念、環境哲学や倫理学に関する考察を、そしてフィールド科学教育研究センターの徳山試験地では合宿を実施した。受講生は、法学部・工学部・農学部各1名の計3名であった。
 講義室では、6回に渡って環境の価値や環境意識などについて解説するとともに、環境を評価する意味について議論した。また、最終レポート作成の予習として、新聞に掲載された環境関連の話題について、その要約、環境評価に関する記載、その記事内容に関する自らの考えなどを発表して、全員で議論し理解を深めた。フィールド合宿(8月18日〜19日)は、昨年度に続き山口県にある徳山試験地で行い、TA1名のほか、試験地の職員(技術班長、技術補佐員2名)も加わり、安全教育と森林整備方法の概要を学んだ後、檜皮(ひわだ)生産のために維持されているヒノキ人工林の整備作業(林床植生の刈り取り)を行った。作業には、地元の県立徳山高校生物部員6名(1〜3年生)と担当教職員2名も体験学習の一環として参加した。酷暑のなか、給水と休憩を何度もはさみながらの作業ではあったが、ヒノキ人工林は見違えるように明るくきれいになった。
 翌日の午前中は、周南市の西緑地を訪れ、元の徳山試験地が整備した外来樹種を含む見本園で、樹木実習を行うとともに、景観の構成について見学し、森林に対する人間の関わりについて意見交換をした。午後は、徳山高校の教室を借りて最終レポートの発表を行った。森林整備作業に参加した徳山高校生物部の生徒5名と教職員2名も議論に参加した。レポートの内容は、ゴマダラカミキリの繁殖防除法、ジカ熱を媒介するカの防除、諫早湾潮受け堤防の開門に関する話題であった。生物種の保全と駆除、農業と漁業の間のトレードオフなどについて、それぞれ、人間中心主義、非人間中心主義の観点から発表があり、活発な議論が行われた。徳山高校の生徒に対して、事前(6月8日)に環境を評価することについての意義や方法に関する説明を行っていたことから、質疑に積極的に加わることができ、本質的な質問に大学生は真摯に答えていたのが印象に残った。
 フィールド合宿では、徳山試験地の境技術班長、技術補佐員の石丸さん、徳原さんにお世話になった。また、林内作業およびゼミ発表でお世話になった徳山高校の爲國先生、実習助手の松田さんにもお礼申し上げる。