ILASセミナー報告2017「原生的な森林の働き」

森林情報学分野 講師 中島 皇


 今年度は参加人数が少なく調整が容易だったので4月に開講出来た。4月19日(水)初回:顔合わせ・オリエンテーション。5月17日(水)2回目:北白川試験地のj.Podで「森林の働きについて」のゼミ。6月10日(土)1dayゼミ:上賀茂試験地見学(都市近郊林と見本林:人為の影響と人の関わり・作られた森林)。最終が芦生研究林で7月初めの合宿形式ゼミ(2泊3日)になる。参加者は男子2人,学部別は農1,総人1,出身地は大阪市,さいたま市と今年も関東出身者の参加があった。TAは森林育成学研究室の大学院生(M1)である。この他に調査隊として森林情報学研究室のB4と大阪教育大学のB4が同行し,総勢6人での実施になった。フィールド(森林)に出て,自ら体験し,考え,自然と人間の関わり方に興味を持つ契機とすることがこのゼミの目的である。
 6月30日(金):集中ゼミは京都市左京区の北端広河原バス停集合で始まる。昨年も書いたが32番の京都バス(出町柳発)は鞍馬温泉から北では自由乗降バスになる。このバスの最終広河原行きは昔と違って回送となって京都市内へ帰っているようだ。このバスを「ネコバス」として売り出せば・・・。これまで30年以上,芦生と京都を行き来して来た者の空言である。例年なら芦生研究林からの迎車で芦生へとなるが,今年はスタッフの車に同乗した。芦生研究林到着後は昼食。午後から身支度を整えて由良川本流沿い(芦生では標高が低い谷沿い)の自然を観察しながら,トロッコ道を歩く。夕食はロールキャベツ。TAと調査隊の先輩達の協力もあって合格点の食事が出来上がった。自分の「始末」は自分ですることもゼミの重要な要素である。夜は,芦生の概要説明と研究林が抱える問題点を話し合った。
 7月1日(土):雨模様。それはそれでOK。調査隊に同行し,幽仙谷集水域天然林研究区(暖温帯と冷温帯の移行帯の大面積・長期プロット)の粗粒状流出有機物観測場所で,調査内容や量水堰の説明も受けた。この他,内杉谷にある伏条台杉や雪崩道も見た。事務所より400m程標高の高い稜線にある林道は霧の中。今年は眺めどころか視界も危ない。それでも杉尾峠に近い福井県境からは日本海(若狭湾)が見えて,薄日も射して来た。由良川最源流の斜面下端から水が湧いている。原生的と言われる上谷の森で,途中昼食を取って,由良川を下って行く。原生的な森林そのものは時間とその他多くの要素に支配されているが,それを実感することがこのゼミを開講している意味である。幽仙谷とは異なるタイプの量水堰,下谷の大桂,二次林と人工林を観察した。下山後,事務所構内で芦生研究林の技術職員による指導で「木を測る」実習を実施した。物事を定量的に知る基本になる「もの測り方」は重要かつ基本的な技術である。夕食は炒め物。腹一杯になったのか?食後は大学院生TAである先輩の研究紹介を毎年のことであるが眠気と戦いながらも耳を傾け,質問をしていた。
 7月2日(日) 最終日はこの3日間のまとめ。レポートと片付けである。幽仙谷で回収してきた天然林からの流出物と水生昆虫の観察とデッサン。アンケートに答えて感想文を書いた後,パスタの昼食。宿舎・食堂の片付けをして,セミナーは終了となった。