2025年9月10日から12日で、京都大学のILASセミナー「京都の文化を支える森林:地域の知恵と生態学的知見」が開催され、総合人間学部・理学部・工学部・農学部・公共政策大学院の学生12名が参加しました。
京都は豊かな森林・水などの自然に支えられ、その資源を利用することによって古より発展を遂げてきました。多くの文明が環境破壊と生態系サービスの劣化によって失われた事実とは対照的に、京都の周辺は現在でも多くの森林や渓流が残り、京都の文化を支えています。
本科目は、京都文化を支えるこれらの自然の利用方法や森林に対する人々の知恵を知り、森林と人間の関係を科学的に捉える研究手法を実習を通して学び、人間社会と森林との新しい関係を考えることを目的としています。
1日目は、かつての里山、現在は都市近郊林である上賀茂試験地で行いました。里山の典型的な樹種やナラ枯れを観察し、炭焼き窯を見学し「新しい里山」としてのイオン環境財団との連携事業を学び、チェーンソー体験を行いました。その後、芦生研究林へ向かい、夜は芦生研究林の概要について講義を行いました。講義後は学生さん同士で交流を深めていました。
2日目は、原生的な森林である芦生研究林で、天然林とそこに生育する樹木などの生き物や大規模シカ柵内外の植生の見学を行いました。午後からは、栃の実の生産量や利用に関する調査を行いました。下山してから、「猟師として野生動物と向き合う」と題して、合同会社田歌舎の藤原誉さんに講演していただきました。夜は、「京都の文化を支えてきた森林−森と人の歴史−」と題して講義を行いました。
3日目は、美山町の茅葺の里、京北町の木材市場「北桑木材センター」を見学しました。その後、北白川試験地へと移動し、北山台杉、間伐材を有効利用した建物を見学しました。その後、フィールド科学教育研究センターの会議室で、振り返りを行いました。
参加した学生さんの感想からは、フィールドでの学びの意義が浮き上がりました。一例を紹介します。
「実習で最も良かった点は、フィールドに出て実際の生態系に触れることで、自分の中に『生物の命が宿る』という感覚を持てたことである。
私たち人間の生命は、決して個人だけで成り立っているのではなく、目に見えない微生物や、実習中に私たちに取りついていた蛭や蜂、さらには害獣とされるシカやイノシシといった多様な生物とつながっている。その感覚を実体験として改めて得られたことが、私にとって大きな学びであった。(中略)
自らの心が動きにくい自然から隔絶された環境では、いくら概念として「生物多様性」を学び研究しても、人の心を動かす言葉は生まれにくい。その結果として、人々は里山や奥山の現状に目を向けることがなくなり、こうした里山や奥山の危機に立ち向かう様子はあまり見られない。 そこには、ヘレン・ケラーが述べた『科学は人類の困難をたくさん解決してきたけれども、最悪のもの―それは人間の無関心―には無力である』という言葉が重なってくる。だからこそ、本セミナーのようにフィールドで学ぶ機会の重要性を改めて強く感じた。」




