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京都大学「研究林実習Ⅰ」実習報告

8月26~29日の日程で、京都大学農学部森林科学科の実習である2024年度「研究林実習I」を実施しました。8月26日~8月27日と、8月28日から~8月29日までの前半・後半の2グループに分かれての実習でした。前半グループの参加者は29名で、後半グループの参加者は30名でした。

当初は前半・後半ともにそれぞれ2泊3日の予定でしたが、台風接近のため、学生さんの安全を考慮し、急遽1泊2日に変更になりました。芦生研究林の宿泊所は築100年を超えており、老朽化が深刻で、修繕をしているものの、これまでも台風による雨漏りや戸が吹き飛ぶなどの被害が生じています。

前半・後半とも実習内容は同じで、実習1日目は研究林の奥にある標高が高い場所で樹木識別や防鹿柵の見学等を行いました。2日目は研究林の標高が低い場所で樹木識別を行いました。

樹木識別の実習では、代表的な樹木の腊葉(さくよう)標本作成を通じて、樹木の観察や識別のポイントを学びました。標高により自生している樹種に違いがあることや、鹿の影響による林内植生の変化等を、実際に現場で見ることで深く学ぶことができたと思います。

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京都大学学術情報メディアセンター「サイバーフィジカル混成によるフィールド実習記録とその分析」実習報告

 9月9日から9月11日の日程で、標記実習が行われました。
この実習はフィールドワークやフィールド実習を、個人視点カメラや高精細固定カメラ、手持ちの携帯電話カメラなどを用いて記録し、教育に活用するための研究開発の一環として行われています。

 9月9日は研究林到着後に、灰野まで軌道沿いを往復しました。
 実習に参加していた学生はヘルメットにアクションカメラを取り付けており、興味の向いたものへの目線や、解説の様子を撮影していました。灰野から戻った後は、データ処理を行っていました。

 9月10日は林内の防鹿柵の見学や、大カツラの見学を行いました。
 この日も同様に学生はアクションカメラをヘルメットに取り付け、柵の内外の様子や、解説の様子を記録していました。そして下山後にデータの処理を行っていました。

 9月11日は午前中だけデータ処理を行い、午後から大学に戻られました。

 データ処理では、位置情報を取得できる腕時計のデータをもとに、GIS(地理情報システム)上に、時間を持った位置情報とアクションカメラで撮影したデータを統合していました。

 位置情報と撮影日時を併せ持ったデータなので、ある時点、ある場所における芦生の環境を記述したデータとなります。こうしたデータを蓄積しておけば、将来、環境変化を把握することもできるようになるかもしれません。今後の発展が期待されます。

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公開実習「公開森林実習Ⅰ」実習報告

2024年公開森林実習Ⅰは、2024年9月4日(火)~6日(木)の3日間に開催されました。

実習の目的は、京都における里山と奥山の両方において、森林の歴史や現在の状況(ナラ枯れ・マツ枯れ・シカによる食害・人工林の管理)を体験学習し、森林をめぐる環境問題に対し、科学的な知識や研究手法を習得することです。本拠点事業では特に、地域の人々との交流や活動の体験を通じて、人間社会と森林の関係について考察し、持続的な人と森との関係のあり方を多面的に考えられるようになることを実習の特色として掲げています。

初日は京都市の里山について、上賀茂試験地で講義と実習を行いました。上賀茂試験地では、都市近郊林の自然植生とナラ枯れ・マツ枯れ被害、マツ類を中心とする外国産樹種とその特徴の解説に、受講生は興味深く耳を傾けていました。次に、イオン環境財団と協働で行っている「里山おーぷんらぼ」という、市民参加型の里山活動について、説明と活動場所の見学がありました。さらに、上賀茂試験地技術職員の指導のもと、一人ずつチェンソーを用いた木材の加工体験を行いました。

上賀茂試験地での実習の後、芦生研究林へ移動しました。夕食後に簡単な自己紹介のあと、二つの講義がありました。最初の松岡先生による「芦生研究林の概要説明」では、芦生の森林や生物多様性とその重要性、そしてシカの過採食による森の変化について解説が行われました。続いて、遠隔地会議システムを用いて、北海道研究林の小林先生による「北海道の森林と人との関わり」についての講義が行われました。京都とは自然環境が大きく異なる北海道の森林とその状況を深く掘り下げた内容でした。

2日目は、松岡先生、石原先生、張先生よる講義が行われた後に、芦生研究林内の見学を行いました。講義では、菌類という目に見えない生き物の森でのはたらきや、人と森の関わりについての社会学的な分析について紹介されました。林内では原生的森林の残るエリアを歩きながら、天然林・人工林の観察をしたほか、大規模シカ排除柵の見学を行いました。午後はきのこ班とトチノキ班に分かれ、きのこ相の調査やトチノキの種子の結実量調査を体験しました。そして、芦生のシンボルである大かつらの見学を行いました。受講生からは、「普段立ち寄ることのできない森林で、実際に見聞きした体験は貴重でした。」などの感想がありました。

夕方に、受講生から、それぞれの身近な森についてパワーポイントを使って説明してもらいました。受講生は、異なる地域や視点を持っていることから、一人ひとり全く異なる「森」の姿や人との関わりの紹介が行われ、とても良い交流の契機となりました。夕飯には芦生研究林のある美山町で獲れたシカ肉の料理を味わいました。その後、そのシカを捕獲した美山町で暮らす猟師さんから、猟師としての暮らし、「狩猟」と「駆除」の間で生きる葛藤などについて話を伺いました。普段は交流する機会のない猟師のお話はとても興味深い内容で、講義後は多くの質問が寄せられました。

3日目は午前に茅葺の里での里山景観やその歴史を学んだ後、京都市右京区京北の原木市場を訪問し、原木の競りの現場を見学しました。午後には大学構内にある北白川試験地において北山台杉やナラ枯れの研究および j.Pod(リブフレームによる木造建築)の見学を行いました。最後に、実習の振り返りが行われ、解散となりました。

今年は10名の学生が集まりました。参加者の所属大学は北海道大学(1名)、千葉大学(1名)、筑波大学(1名)、信州大学(1名)、名古屋工業大学(1名)、大阪大学(1名)、近畿大学(1名)、福井県立大学(1名)、大阪産業大学(1名)、(台湾)中央大学(1名)でした。農学部で森林を学ぶ学生だけではなく、水産学部で水産を学ぶ学生や、生物資源学部や工学研究科で都市工学を学ぶ学生など多様な背景を持つ学生が参加してくれました。また、今年は韓国からの交換留学生と台湾からの日本人学生の参加もあり、グローバルな視点の意見交換もできました。

参加した学生からは「様々な角度から森へのアプローチを学ぶことができ、実際に関わっている人の話を聞くことができたのがよかった。」「実際に生活している人々とコミュニケーションをとったり、教員や学生だけでなく技術職員とも様々な話をすることができた点が、普段の実習とは全く違った新しいもので良かった。」「少人数であったため、より深い学びや交流が可能であり、何かしらで一人一人がフォーカスされる場があったためアウトプットをする機会があって良かった。」という感想があり、実習を通じて人と森の多様な関わりや視点を学んでもらえたと思います。

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人間環境大学「奥山・里山管理実習」実習報告

2024年8月21-23日の日程で人間環境大学の学生実習「奥山・里山管理実習」が開催され、学生17名が参加しました。

この実習では近畿地方の奥山・里山において、森林生態系の特徴と課題、森と人の関わりを理解することを目的としています

1日目は上賀茂試験地で行われました。新しい里山・里海共創プロジェクト(里山おーぷんらぼ) で取り組む工芸用の樹木の植樹エリアの下刈り体験や、技術職員による炭焼きの説明、チェンソーの使用見学などを通じて、里山の利用や維持管理について学びました。

2日目は芦生研究林で行われました。大規模シカ柵内外の植生変化の見学や、植物班ときのこ班に分かれての調査体験を行い、奥山の自然の特色や生物多様性とその課題について学びました。

3日目は美山かやぶきの里で里地での暮らしを見学しました。その後、北白川試験地に移動して、技術職員による試験地内の説明やj.Pod工法による建物の見学などを行いました。

実習を通じて、奥山の原生的な自然と都市近郊林の里山を五感で感じ、学んでもらえたと思います。

学生からは「シカ柵内外の植生の違いなど、実際に環境を見ることでしか学べないことが多く学べた」「環境だけでなく、その地域の森と人との歴史について学べたのが良かった」といった感想をもらいました。

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京都大学「ILASセミナー:有人宇宙学実習」実習報告

2024年8月19~20日に、京都大学全学部生向けのILASセミナー*「有人宇宙学実習」が開催され、9名の学生が参加しました。

1日目は枡上谷にある環境省モニタリングサイト1000の調査プロットへ行き、毎木調査を体験しました。その日の夜には枡上谷の毎木調査データの解析を行い、森林の炭素蓄積量を推定しました。

2日目は集水域全体を防鹿柵で囲った試験地を見学して、シカによる過食採を通じ、生物間相互作用や、森林生態系の機能の安定性と回復力について学びました。

参加者の多くは森林分野を専門としていませんでしたが、実地で学ぶことで宇宙分野と森林や生態系の関連性を実感してもらえたかと思います。

実習を引率された土井隆雄先生は、世界で初めての木造人工衛星の開発に携わられており、宇宙開発での木材の有用性の話も聞くことができ、木材の新しい可能性を学ばさせていただきました。芦生研究林のホオノキも人工衛星に活用していただくため提供しています。

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公開実習「森里海連環学Ⅰ」実習報告

2024年8月6日~8月10日

 上記日程で2024年度森里海連環学実習Iを開催し、京都大学から5名、他大学から4名の計9名の学生が参加しました。この実習はフィールド研が開催している公開実習の一つで、京都大学に所属する大学生のみならず、他大学の大学生も参加することができます。
 この実習では芦生研究林内から若狭湾にそそぐ「由良川」を調査フィールドに設定しています。実習の目的は、水生生物の調査や水質分析を通じ、森から海までの流域を複合したひとつの生態系として捉える視点を育成する事です。

 1日目はまず、研究林内にて大カツラの見学や、河川源流域(由良川支流)での生物観察などを行いました。見学等を行った後、事務所付近(由良川上流部)に移動し、魚類・水生昆虫・付着藻類・河川水のサンプリングと水質調査を行いました。その後、由良川の中流域である京丹波町和知B&G海洋センターで同様の調査を行いました。
 この日は2地点で調査を行った後、フィールド科学教育研究センターの施設である舞鶴水産実験所に移動しました。

 2日目は由良川中流域から若狭湾まで、初日と同様の調査を4地点で行いました(河口と海では魚類、プランクトンおよび水試料のサンプリングと水質調査)。2日間で森から海までの6地点で調査を行いました。

 3日目は採取した水試料および付着藻類の分析と水生昆虫と魚類の観察と同定を行いました。
 なお,芦生研究林の技術職員2名が実習3日目まで、実習補助と実習中の安全確保を目的として同行していました。また、実習の事前準備として、中流域の調査地点の河川敷の安全確保のための草刈りと下見を技術職員4名で行いました。

 4日目は水試料および付着藻類の分析を行った後、得られたデータの整理と発表に向けてのまとめを行い、5日目に実習成果の発表を行いました。

 実習成果の発表は3つのテーマ(魚、水生昆虫、一次生産者(付着藻類とプランクトン))を設定し、各テーマと水質を関連付けた解析とまとめを発表してもらいました。解析時間もデータも限られたものの、グループごとに集中して発表準備を進めていました。

 今回初めて付着藻類の調査を実施しました。分析には時間や手間がかかったものの、定量的なデータ(河川の付着藻類量と、全地点のクロロフィルa)を得ることができ、河川の一次生産者についての解析と地点間比較が可能になりました。
 参加した学生からは「一つの川の上流、中流、下流、支流など様々な地点から観察を行うことでその繋がりを見出し理解できるようにスケジュールが組まれていたこと。そのおかげで、実習の内容がより深く理解できたと思います。」といった実習内容に関する感想の他に「先生やTAの方がしっかり付いてくださって、お話をしやすい空気だったのがよかったと思う。」といった、実習の雰囲気も良かったという感想も複数いただきました。

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大阪産業大学「生物資源活用演習」実習報告

 6月29日に大阪産業大学の実習が行われ、10名の学生が芦生研究林を訪れました。 林内では植生回復のための防鹿柵、大カツラの見学を行いました。学生たちはニホンジカの食害や柵による植生の回復、ツキノワグマがスギの樹皮を剥いだクマ剥ぎなどを見学し、技術職員や赤石大輔准教授(大阪産業大学)から解説を受けました。学生たちはカメ、昆虫などを見つけて写真を撮ったり、触れてみたり、興味津津でした。
 下山後にはリニューアルオープンした資料館の見学を行いました。資料館の剥製や昆虫標本などを熱心に見学されていました。

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京都府立林業大学校「森林科学Ⅰ」実習報告

 6月10日に京都府立林業大学校の実習が行われ、12名の学生が参加しました。「森林科学Ⅰ」という科目の一環で行われた実習です。京都府立林業大学校は、2012年に設立された西日本初の林業大学校です。詳細につきましては京都府HPよりご確認下さい。

 当日は杉尾峠から長治谷までの上谷エリアを歩きつつ技術職員の宮城(京林大卒業生)が解説を行い、その後 大カツラの見学を行いました。

 事前に石原林長が京林大で気候と植物の分布・遷移・森林生態系と生物多様性等について講義を行っており、座学での学びを実際に山に入り観察することで、より学習を深化させる狙いがあります。

 杉尾峠までの道中では暖温帯から冷温帯への植生の変化や林道の整備等についての解説を行いました。

 上谷エリアでは芦生の山を特徴づけるアシウスギ・ブナ・トチノキの解説、獣害による被害状況の解説、人と森の関りなど幅広い解説を行いました。解説に対してメモを取る学生もおり、非常に熱心な様子が伝わってきました。
 大カツラでは今まで目にしたことのないような巨木を前に歓声が上がりました。約100年前に撮られた写真とほぼ同じ姿で、現在の場所に立ち続けているその様子に感動していた学生もいました。

 下山後には特別に資料館の見学も行いました。オープン前のため一部資料の解説がない状態でしたが、学生さんは全ての展示物に興味をもって見学されていました。

 実習全体を通して、林道の整備や重機操縦、特用林産物についてなど、技術職員ならではの解説もあり、よかったとご意見いただきました。

 京林大の実習では人工林の見学が非常に多く、芦生の山のような原生的な森に入ることは少ないです。芦生の原生的な自然やそこでの保全・教育・研究活動を学んでいただき、卒業後には生態系の在り方などについても考えられる、広い視野を持った森林・林業技術者になって活躍されることを期待します。

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東邦大学「野外生態学実習」実習報告

 2024年5月27-31日 東邦大学の学生実習「野外生態学実習Ⅱ」が行われ、20名の学生が参加しました。
 
 29日には上谷で植生や生物相を見学しました。参加した学生は普段見ることができない冷温帯林の構成樹種であるミズナラやブナの解説を興味深く聞いていました。また、上谷の支流で水生生物の観察を行いました。
全員で一生懸命に石の下を探し、サンショウウオの幼生や水生昆虫を見つけました。
 
 他の日程は森林軌道で爬虫類、両生類の観察を行いました。学生達は興味のある植物や動物を見つけると写真を撮影し、同定していました。

 芦生研究林での経験や生物観察から、大学に帰った後も学びを深めてもらえたらと思います。

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大阪公立大学「緑地保全学研究グループ実習」実習報告

 2023年10月17日~10月19日

 上記日程で大阪公立大学の実習「緑地保全学研究グループ実習」が行われ、学生15名が参
加しました。

 1日目は森林軌道で植物採集、2日目は大規模防鹿柵の見学と植生調査、3日目は幽仙谷か
ら落合橋の区間で植物採集を行いました。
 参加学生は植物への関心が高く、普段は見ることができない日本海型の植生を意欲的に学
んでいました。
 
 3日間とも秋晴れに恵まれ、紅葉が始まった芦生研究林の植生を堪能してもらえたと思い 
ます。