森里海連環学実習B 「紀伊半島の森と里と海」

2011年9月14~18日、紀伊大島実験所において、全学共通科目(1~4回生対象)森里海連環学実習B(紀伊半島の森と里と海)を開講しました(8人)。(日本財団助成実習)

里地生態保全学分野 梅本信也 准教授

 本実習は、紀伊半島南部の古座川流域と串本湾岸域に指交的に広がる自然域と里域(里海、里地、里川、里池、里谷、里原、里山、里空)を対象に、フィールド調査の理論と実践的手法を体感させ、現地観察や聞き取り、各域から得られるサンプルの分析に基づいて、地域連環の諸相について考究し、観光振興と環境保全との関係を総合的に把握しながら、今後の地域適正化対策を検討させることが主眼である。今回で9回目となった。2011年度は京大フィールド研・紀伊大島実験所を活動拠点とし、9月14日(水)から9月18日(日)に開催された。京都大学学生8名(工学部1名、農学部7名)が参加した。担当職員は准教授3名、講師1名、助教1名であった。後半には環境省職員がオブザーバ参加した。日程と実習概要は以下の通りである。
 14日(水)JR紀勢線串本駅に12時10分に集合の予定であったが、上旬に西日本に上陸、縦走した大型台風第12号による大規模風水害によって、紀伊半島の大動脈である紀勢本線が90ヶ所で寸断されて白浜駅以南が不通となり、集合場所を白浜駅11時半に変更、公用車等で拠点の紀伊大島実験所に移動した。13時から全体ガイダンスを行ない、「古座川合同調査報告集・第1~5巻」や「地域フィールドガイド」「里域連環学入門」「里域食文化論入門」「里域震災論入門」など資料を配布、該当地域の諸相連環を考察する上で効果的で相互に関連する参考テーマを提供しながら、課題に取り組むための仮の班分けを行った。今回は実習地域が台風被災地であり、したがって、当初予定のテーマから台風被害を軸にした取り組み内容となった。また、台風第15号および第16号、さらに秋雨前線の活発化に伴う天候不安定性が予測されたので、日程を一日短縮した。
 15日(木)里域と自然域各系およびその相互連環性を把握し易いテーマを作成、それぞれの担当教員と共に実習・現地調査に入った。宿泊しながら取り組んだテーマは「2011年台風第12号によるライフライン切断から見た地域連環構造の変容」「2011年台風第12号による河川水質変動と水生昆虫相の変容」「2011年台風第12号と防災意識-パットナム法の適用-」であった。
 16日(金)テーマ別に調査、分析、検証、作戦会議、議論を続けた。
 17日(土)調査結果を分析し、仮報告書を作成、班ごとに調査内容の発表を行った。森里海連環学的視座からの活発な質疑応答が行われた。
 18日(日)清掃や報告書・アンケート用紙を提出、記念撮影して解散、前日に奇跡的に串本駅まで復旧した紀勢線で学生達は全員無事に帰京した。なお、A4で約80ページにもおよぶ各班の正式報告書は、京大1回生向けポケットセミナー「清流古座川に森里海のつながりを見る」で提出された報告書とともに「古座川合同調査報告集第6巻」(2011)に掲載された。