森里海連環学勉強会 第2回 2017-03

2017年3月8日、第2回森里海連環学勉強会を開催しました。

参照 森里海連環学に関する意見交換会(第1回) (2016年10月12日開催)


第2回森里海連環学勉強会の記録

センター長 吉岡崇仁

【プログラム】
 日時:平成29年3月8日(水) 15:00〜18:00
 場所:フィールド研第1会議室(N283)および第2会議室(N285)
参加者:会議室31人、瀬戸9人、舞鶴1人、北海道1人 計42人
 内容:
  話題提供1 山下洋「由良川・丹後海における森里海連環学研究」
  話題提供2 市川光太郎「ニホンウナギの活動量の季節変化と水温の関係」
  話題提供3 舘野隆之輔「森里海連環学について考えたこと」
  話題提供4 徳地直子「ミャンマーの金採掘の現状」
  話題提供5 吉積巳貴「研究提案」
  質疑応答

(提供された話題の概要)

〇話題提供1 山下洋「由良川・丹後海における森里海連環学研究」
 フィールド研で取り組んだ木文化プロジェクトの中から、由良川丹後海における物質循環のつながりが紹介された。
 河川水中の溶存鉄、溶存態窒素栄養塩、溶存態リンの濃度は、集水域の森林率と負の相関、耕作地率・市街地率とは正の相関を示しており、これらの溶存成分の起源は森林とは言えないことが明らかとなってきた。一方、丹後海における生物生産(一次生産)を律速している物質は、窒素>リン>鉄の順番であり、森里海連環学でよくいわれる鉄は制限因子としては重要でないことが分かった。
 話題提供者からの質問:「健康な森は栄養塩を系外に出さない」と言われている。また、「豊かな森の栄養が豊かな海を育てる」とも言われる。矛盾しているのだが、森林研究者に意見を聞きたい。

〇話題提供2 市川光太郎「ニホンウナギの活動量の季節変化と水温の関係」
 海から回帰してきたニホンウナギは黄ウナギと呼ばれるが、淡水で生育するものはそのうちの2割に過ぎず、その生態にはまだ不明の点が多い。天然状態でのウナギの行動を調査することは非常に困難であり、実験池を用い、音響測位手法を用いてウナギの行動を調査した。泥中に潜ると検知できないことがあるが、体長と行動に関連があるなどの示唆が得られた。塩ビチューブには、複数のウナギが長時間滞在しており、居心地がいいと思われる。

〇話題提供3 舘野隆之輔「森里海連環学について考えたこと」
 フィールド研創設の理念と目標を再考し、里の視点で森と海の生態系サービスを見ることに意義のあることを示した。文理融合、学際研究は永らく重要性が指摘されてきたが、お互いの言葉を理解することにも多大の時間が必要であることなどが紹介された。また、科学ができることとしては、環境に関するシナリオやオプションを提示し、人々が選択できるようにすることではないかとの意見も出された。
 加えて、センター長裁量経費を原資として、フィールド研が公募研究(会)を設けることが提案された。

〇話題提供4 徳地直子「ミャンマーの金採掘の現状」
 ミャンマーからの留学生が、研究テーマにミャンマーでの金採掘に関わる問題を取り上げることになった。そのための調査の模様が報告された。金精錬のために使用される水銀による環境汚染、人体影響が懸念されている。金採掘を行っている企業への聴き取りと水質分析用の試料採取を実施。土地利用権利の問題解決に関する住民合意の取り組みの必要性などが紹介された。

〇話題提供5 吉積巳貴「研究提案」
 「里」(第1次産業を生業とする場所)が、第1次産業が衰退しつつある中で消滅して行く現状に関心を持ち、持続可能なまちづくり、地域資源の管理運用を通した住民自立型のまちづくりを考えたい。流域コミュニティ連携の構築が必要であるが、地域の資源に関する情報が、住民に共有されていないことに課題があると考えている。和歌山とベトナムでのプロジェクトについて紹介された。

〇質疑応答
 質疑応答では、山下さんから提起された『「健康な森は栄養塩を系外に出さない」と「豊かな森の栄養が豊かな海を育てる」の間の矛盾』について、議論された。
 健康な森、豊かな森や海の意味するところ(定義)を共有しないと議論できないという意見、定義するに時間を費やすより、いろいろな考え方があることを疲労しあう(多様であることを認識する)方が重要であるという意見などがあった。

 次年度以降もこの勉強会を継続するが、研究プログラム委員会を中心とし、2018年度からの新体制の科研費基盤SやAに、研究課題を申請する方向で検討することになった。