天然林と人工林が水生無脊椎動物の食物網構造へ及ぼす影響の違い

2018年5月18日、徳地直子教授、冨樫博幸元研究員、神松幸弘元研究員らが、和歌山研究林などで調査された水生無脊椎動物の食物網構造についての論文が、国際学術誌「Ecology Letters」に掲載されました。

Kato,Yoshikazu; Kondoh,Michio; Ishikawa,Naoto F.; Togashi,Hiroyuki; Kohmatsu,Yukihiro; Yoshimura,Mayumi; Yoshimizu,Chikage; Haraguchi,Takashi F.; Osada,Yutaka; Ohte,Nobuhito; Tokuchi,Naoko; Okuda,Noboru; Miki,Takeshi; Tayasu,Ichiro
(加藤義和・近藤倫生・石川尚人・冨樫博幸・神松幸弘・吉村真由美・由水千景・原口岳・長田穣・大手信人・徳地直子・奥田昇・三木健・陀安一郎)
Using food network unfolding to evaluate food-web complexity in terms of biodiversity: theory and applications
(栄養ネットワークの解きほぐしを使って食物網構造を生物多様性の観点から評価する:理論と応用)
Ecology Letters, (2018)

DOI: 10.1111/ele.12973 (電子ジャーナル閲覧のための認証が必要です)

 本論文は、季節の違いや人間活動の影響が、水生無脊椎動物の多様性にどのような影響を及ぼすかという点について、和歌山研究林を中心とした多様なサイトを用いて調査を行っています。そのような研究では、基準となる人間活動の影響の小さい森林生態系での情報を得るのが困難な場合が多いのですが、和歌山研究林は研究林の設定以来、モミ・ツガを主体とする天然林には手を入れないように管理・保全しています。そのため、この研究では和歌山研究林の天然林を利用して、様々な人間活動の影響について考察することができました。
 その結果、この研究で用いられた「栄養ネットワークの解きほぐし」の手法を用いると、天然林に囲まれた河川と皆伐が行われた人工林に囲まれた河川で、従来の多様性指標では違いが示されなかった水生無脊椎動物にも、食物網構造には大きな違いがあることなどを初めて示すことができました。(徳地直子)

 詳しくは、京都大学ページの研究成果発表「食物網のかたちを捉える新手法-河川で生態系の変化を捉えることに成功- 」、および 解説PDFファイル を参照下さい。