森里海連環学実習A 「芦生研究林-由良川-丹後海コース」

2011年 8月8~12日、芦生研究林および舞鶴水産実験所において、全学共通科目(1~4回生対象)森里海連環学実習A(芦生研究林-由良川-丹後海コース)を開講しました(日本財団助成・公開実習 京大8人、他大学5人)。

沿岸資源管理学分野 上野正博 助教
里山資源保全学分野 中西麻美 助教

 京都府の北部を流れる由良川は、京都大学芦生研究林を源流とし若狭湾西部の丹後海に注ぐ。本実習では、森林域、里域、農地、都市などの陸域の環境が、由良川の水質、生物多様性、沿岸域の生物環境にどのような影響を与えているかを分析し、川を通した森から海までを生態系の複合ユニットとして、科学的に捉える視点を育成することを目的としている。今年度は、芦生研究林における森林構造と生態系、鹿による食害の影響やナラ枯れ被害木の観察、由良川に沿って源流域から美山、和知、綾部、福知山を経由して河口域までの水質(水温、塩分、電気伝導度、溶存酸素、COD、硝酸態窒素、アンモニア態窒素、珪酸、懸濁物質)調査、魚類、水生昆虫などの水生生物の採集調査および土地利用様式の調査を行った。また,調査地点を若干変更し、森林域を流れる源流、農業地帯を流れる犀川、市街地を流れ下水処理場排水が流入する和久川の3ヶ所に配置し、流域の土地利用状況によって、水質がどのように変化し水生動物の群集構造にどのような影響を与えているかを、参加学生が理解しやすいように計画した。また、河川横断構造物の影響を見るために、大野ダム湖内とその下流の和知で水環境、水質、プランクトンを調査した。本年度は5月に2度発生した洪水によってダム湖内は流木に覆われ、またボート乗り場も破壊されたため湖上20m余りにかかる橋上からの調査となり、昨年度ほど詳しい調査は行えなかった。しかし、野外調査の困難さを体験する良い機会になった。全体としては標本分析とデータ処理のための時間を増やすことにより、参加学生がじっくりとデータを解析しレポートを作成できるよう配慮した。陸域から河川への物質流入、源流域から河口までの水圏環境の変化と水生動物の群集構造や多様性との関係を分析し、森林管理や人間活動との関係も含めて考察した。例年いくつかの班に分けてデータ分析と考察を行っているが、今年度は1班が懸濁物質の流入の特徴、2班が環境と魚類の食性、3班が環境と水生昆虫および魚類の量的関係に関する報告を行い、それぞれにユニークな着眼点が披露された。実習に参加した学生は13名(本学からは農学部7名、工学部1名。他大学は、群馬大、信州大、慶応大、北里大、奈良大の5大学から各1名)であった。教育関係共同利用拠点としての第一回の公開実習であったが、全国の大学から参加者がありまずまずのスタートであった。

 日程と実習内容は以下の通りである。 

8月8日(月)
 京大農学部発芦生研究林へ移動(出発前にガイダンス)、芦生研究林、由良川源流域調査、講義「実習の目的と内容」、「芦生研究林の概要」
8月9日(火)
 由良川上中流域調査(芦生~福知山)
8月10日(水)
 由良川河口調査(神崎)、標本分析及びデータ解析
8月11日(木)
 水質分析、魚類・水生昆虫同定、魚類胃内容物分析、データ解析、レポート作成
8月12日(金)  
 レポート作成と研究報告会、反省会の後京都大学農学部へ移動