横山 壽

参考情報(2018-03-31 までの情報です)

yokoyama hisashi

フィールド科学教育研究センター 研究推進部門
森里海連環学分野 社会連携教授
学際融合教育研究推進センター 森里海連環学教育ユニット 特任教授
業績など(教育研究活動DB)

(2012-07-17 公開)


1.研究分野
 私がこれまでに行ってきた研究は、京都大学大学院博士課程でとりかかった(1)沿岸域における汚濁指標種の生態学的・分類学的研究(1974年~現在)、大阪市環境科学研究所において行った(2)生物群集による都市域水環境の評価・修復に関する研究(1983年~1994年)水産庁養殖研究所(現、水産総合研究センター増養殖研究所)に移籍したのちに行った(3)養殖漁場環境の評価・修復に関する研究(1997年~現在)と(4)沿岸生態系の生物生産構造に関する研究(2002年~現在)に分けることができます。その概要を説明します。

 (1)この研究を始めた1970年代は高度経済成長の弊害があらわれ、日本沿岸各地で有機汚濁が進んでいました。その進行により貧酸素となる水域において世界汎用種で1属1種の多毛類ヨツバネスピオParaprionospio pinnata が卓越的に出現することが知られていましたが、その生物学的な裏づけはされていませんでした。そこで、これを博士論文のテーマとすることにしました。試行錯誤の末、幼生が貧酸素水中に特異的に分布することから貧酸素環境を利用して個体群を維持していることがわかり、40歳でようやく学位にたどり着きました。この研究を進める中で、日本産の本種に形態が異なる4型が存在することに気がつきました。最近になり、これら4型は種が異なり、世界より4新種を含む10種が存在することがわかりました。生態研究を行う際に分類が大切であることを思い知らされました。

 (2)都市域水環境の評価・修復法を提案するために、大阪市内外の河川・港湾域における水生生物群集調査を行い、海面埋立と有機汚濁の進行により生物群集が遷移してきたことがわかりました。他方、大阪港に造成された野鳥公園内の人工干潟に必要な環境条件を求めるための調査も行いました。

 (3)海面魚類養殖場では多量の飼料が生簀に投入され、周辺海域の貧酸素や赤潮の発生の原因となります。これを防ぐための研究を進め、養殖が及ぼす環境へのインパクトを把握する、養殖許容量を求め環境容量範囲内で養殖する、複数の生物を組み合わせ(複合養殖)養殖由来の有機物を分解・回収することが大切であることがわかりました。これらの研究を進める中で、底生動物群集が環境容量を示す指標となること、炭素・窒素安定同位体比が養殖由来有機物の定量や複合養殖生物による養殖由来有機物・栄養塩類の摂取を評価するのに役立つことを見出しました。

 (4)生元素安定同位体比測定法は沿岸域における生物生産構造と物質循環を明らかにする有用なツールです。これまでの研究により、(1)動物組織と餌料間の炭素・窒素安定同位体濃縮係数が動物の種および組織に特異的で動物の試料採取部位や前処理法により同位体比値が変化すること、一次生産者の値も時空間的に大きく変化することがあり、本手法の適用にはこれらの点に留意する必要があること、(2)干潟、藻場および浅海に生息する底生動物の栄養源は主として底生微細藻と海洋植物プランクトンであることを示しました。

 フィールド科学教育研究センターは津波により破壊された気仙沼市の舞根湾において地盤沈下により塩性湿地化しつつある海陸境界域の環境と生物群集のモニタリングを進めています。この試みは干潟再生のモデルケースとして重要であり、私も底生動物の分野で貢献したいと思っています。一方、近年の有明海では堆積物の細粒化、貧酸素水塊の拡大、種多様性の低下、水産有用資源の減少などが指摘されており、かつての豊饒の海が瀕死の海へと変わりつつあります。豊饒の海を再生する手がかりを得たいと思います。

2.好きなもの、趣味
 好きなものはなんといってもお酒です。手っ取り早くいい気分になるには焼酎が一番ですが、最近は日本酒がおいしいと感じるようになりました。趣味は園芸です。引越しにより庭がなくなったのが残念です。

3.その他
 2011年東北地方を襲った巨大地震・津波と原発事故は私たちのあり方に再考を促しています。生活の利便性や物質的豊かさのための技術開発を偏重し過ぎたとの反省に立ち、自然への畏敬の念を取り戻し、循環的かつ持続的な社会への転換を目指す取り組みが必要と思います。


(フィールド研における経歴とページ履歴)
2012-07-01/2014-03-31 学際融合教育研究推進センター 森里海連環学教育ユニット 特定准教授
2012-07-01/2013-07-31 企画研究推進部門 森里海連環学分野 連携准教授
2012-07-17 http://fserc.kyoto-u.ac.jp/wp/staff/yokoyama でページ公開
2013-08-01/2014-03-31 研究推進部門 森里海連環学分野 連携准教授(部門分野名変更)
2013-08-21 ページにメールアドレスの追加
2014-04-01/2018-03-31 学際融合教育研究推進センター 森里海連環学教育ユニット 特定教授
2014-04-01/2018-03-31 企画研究推進部門 森里海連環学分野 連携教授
2014-10-09 ページに教育研究活動DBへのリンクを追加
2017-04-01/2021-03-31 社会連携教授