張 曼青 (チョウ マンセイ)

zhang
フィールド科学教育研究センター森林生態系部門
森林育成学分野 特定助教
E-mail: zhang.manqing.8f*kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)
業績など(教育研究活動DB)

(2023-04-25 公開)

1. 研究分野
 専門は、環境社会学と村落社会学です。これまでは、中国安徽省、浙江省、河北省の農村地域、そして日本の宮城県大崎市周辺農村を中心にしたフィールドワークをもとに、近代化に伴った農業面源汚染および農民の施肥行為を調査してきました。詳細は以下となります。

◆興味のあるテーマ
 1.中国の畜産廃棄物処理問題と内陸地域における近代化への対応
 畜産廃棄物の処理とバイオガス消化液の地域受容性について研究しています。特に注目したのは、中国全国で推進された環境保護を目的とした「飼育場立ち退き政策」が、一部の地域の実情と齟齬が生じた点です。立ち退き政策により、飼育場は従来の場所から引っ越しすることになりますが、バイオガス消化液がどうしても近くの農民に受け入れられない原因はそこにあります。中国内陸農村では、「郷土性」に基づいた「なじみ関係」が耕畜連携に大きく左右するのですが、立ち退き政策による飼育場の引っ越しは、むしろこの関係を無くしてしまいます。こうした環境政策と現場とのズレについて引き続き研究を進めていきたいです。

 2.新中国建国後の肥料農法の漸進的な転換の歴史と農民の主体性
 歴史資料の分析と高齢者農民への聞き取りを通して、中国の特殊な農法転換の歴史を明らかにしました。すなわち、伝統農法から近代農法への単線的な変遷ではなく、「土着的な化学肥料」という段階を挟んだ漸進的な転換過程です。「土着的な化学肥料」の製造過程への参与により、中国農民の化学肥料という近代農法に対する認識は、実は経験知に近い部分があると考えられます。こうした歴史を踏まえたうえで、農民の肥料観そして肥料技術における農民の主体性を分析しています。また、調査地では、「有機農法」や「有機農業」という言葉を使わず、代わりに、方言や具体的な表現を使用していることも調査により分かり、文字・標準語による調査方法ではなく、徹底的に方言による調査を続けています。

 3.中国県域社会における都市共有地での「アウトロー」的な農作業
 生業構造の変化と非農業戸籍への転換などの背景の元で、農民出身者は、都市住民に転身したにもかかわらず、都市での芝生や空き地で野菜を育てるという「アウトロー」的な行為を行っています。耕作者は外発的要因により生活空間が都市に移ったとしても、以前の経験知を活かしながら農家肥の使用を主体的に維持していることが見えてきました。農家肥及び農業に対する農民の意味付与は、経済面を超え、自ら「農的つながり」の再構築および自分のアイデンティティの再確認に見いだされます。本来手間のかかる農家肥は、都市空間において更なる苦労を要すると考えられます。さらに言えば、構造的制限下の選択(「行為」)とは別に、経験レベルに埋もれた農民が本来持ってきた肥料に関する経験知及び主体性が「アウトロー」的な「農」に限って、顕在化してくるのです。特に、「アウトロー」的な「農」では、「農業」と区別する「農」の本質が凝縮されていると筆者は考えています。 

 4.宮城県田尻地域の冬水田んぼ農民のライフストーリーと山間地小農の環境保全型農業
 日本宮城県大崎市田尻地域の冬水田んぼ (有機農業)において、有機農業を導入するまでのプロセスではなく、むしろ導入した後農家の直面する困難や試行錯誤こと重要であることを明らかにしました。冬水田んぼを15年以上続けてきた農家のライフストーリーの調査をしています。また、同じく大崎市鳴子温泉地域における環境保全型農業、特にNPO「鳴子の米プロジェクト」を事例に調査しました。これまで、成功例として語られることが多かったのですが、本研究では、注目されていなかった2011年以降の状況に着目しつつ、米プロジェクトが危機に対応する詳細な過程や組織自体の長期的変容を明確化しました。鳴子の事例から、地域主体となる地域再生事業において、外部の力を借りることとは決して矛盾するのではないことが見えてきました。

2.好きなもの
 趣味はガーデニング、ヨガ、猫と遊ぶことです。

3.その他
 中国の内陸農村出身で、農村と動植物が大好きです。
 研究について詳しくは、researchmapをご覧いただければ嬉しいです。
 https://researchmap.jp/zmqchocobana


(フィールド研における経歴とページ履歴)
2023-04-16 森林生態系部門 森林育成学分野 特定助教