ポケゼミ報告2014「瀬戸内に見る森里海連環」

森林情報学分野 講師 中島 皇

  
 メンバーの顔合わせ、動機付け、予備知識や課題・レポートの事前準備のゼミを5月、6月に1回ずつ北部キャンパスで行い、8月7日~10日に徳山試験地で合宿形式ゼミ(3泊4日)を行う予定だった。参加者は定員の7名(文1、法2、理1、工3)で、キャンセルはなかった。メンバーは大阪府池田市、東大阪市、広島市の瀬戸内出身者と福知山市、栃木市、飯田市の内陸部出身者そして瀬戸内に続く九州福岡市の出身者であった。フレッシュな新入生諸君が瀬戸内の恵まれたフィールド(環境:森・里・海)に出て、自ら体験し、自然と人間の関わり方、里の意味を考えることがこのゼミの目的である。このゼミを当初から一緒に作って頂いた特任教授の向井宏先生が退職されたため、今年からは瀨戸臨海実験所の久保田信先生に、海の部分の担当をお願いした。
 集中ゼミは、8/7(木)15:30にJR徳山駅集合で始まったが、台風11号が南方海上からこちらをうかがっている。早々に試験地へ。施設の簡単な説明の後、飯炊き班と買い出し班に分かれ、食事の準備。夕食後は、課題となっている「瀬戸内の人と自然の関わりに関するレポート」の発表会第1部。
 今年は徳山高校から高大連携を探る試みとして、生物部部員が本ポケゼミの海の部に同行したいとの希望が出され、顧問の先生が引率して参加の予定であったが、台風の影響で早々に中止の連絡が入った。8/8は午後の天気も勘案して朝から山に。先日来の雨の影響か、赤松ヶ平への林道は車が入れず、登山道を魚切ノ滝・烏帽子岳(696.6m)・大将軍神社まで歩いて往復した。神社が鎮座する頂(標高680m?)からは、南側に熊毛(高水)、光、田布施の平地、その向こうに瀬戸内海に浮かぶ上関の祝島がよく見えた。見晴らしの良い山頂で食べる握り飯は最高のご馳走。台風の影響はまだそれ程でもなく、動きもほとんどない低めの黒い雲から、時折雨が落ちてくるような天気だった。今回初めて烏帽子に登ったが、尾根筋に残る立派なアカマツが印象的。お昼過ぎには朝の登山口に下山。午後は末武川に沿って八代の盆地から温見ダムへ。ダム湖へは昨年からかなり砂が流入し、一段と砂の堆積が進んでいる。昭和30年建設のダム(水道水源)とその下流に作られた末武ダム(多目的)を見学し、その意味を考えることが出来た。その後末武川の河口干潟に。翌日は大潮になるので、十分な干潮を予想していたが、いまひとつ引きが甘い。それでも久保田先生の指導によって、多くの生物を確認し、いわゆる環境と自然は生き物にもディペンドしていることを実感した。実習終了の最終判断は翌朝行うことにして、事前レポートの発表会・TAの研究紹介・久保田先生の解説等、勉強会は深夜まで続いた。
 翌朝5時過ぎの台風情報からするととても足が遅いようである。予定の8/10までゼミを実施していると、解散後に学生(多くは青春18切符利用)が帰洛できなくなることも考えられるので、予定を1日繰り上げて8/9のお昼に終了・解散した。
季節はずれの台風によって予定が大いに狂った。今後とも台風の大型化・強力化・鈍足化(言葉は怪しい)は懸念され、フィールドで教育・研究を行う者にとっては頭の痛い問題である。