実習報告2016「森里海連環学実習III:暖地性積雪地域における冬の自然環境」

2017年2月10日~13日、芦生研究林標茶区において、全学共通科目「暖地性積雪地域における冬の自然環境」を実施しました(7人)。

報告

森林情報学分野 講師 中島 皇

 実習(全学共通科目の後期集中講義)は2017年2月10日~13日に3泊4日の日程で行われた。テーマは「暖地性の積雪(山間)地域における冬の自然環境を体感する。雪氷調査法(入門)を習得し,水が態を変えた雪や氷について理解を深めその影響を考究する。特に人間をはじめとする生物への影響をフィールドで実感する。」(シラバス)である。
 この冬は1月中頃に由良川下流の美山でも積雪が50cm近くになったので安心していたが,節分の頃には融けてしまい,積雪量は少し不安であった。定員15名に対して,参加者は7名(理2(1),医2(2),農3(1),:カッコは女子(内数))とやや少なめであったが,TAはB1の時(4年前)に本実習の受講経験がある森林科学専攻の男子院生2名と実習経験はないが元気者の女子院生1名である。他にフィールド研の東先生(特定助教)とこの実習を10年程前に一緒に始めてくれた福島先生(首都大学東京・特定助教)が自身の調査を兼ねて参加してくれたので充実したスタッフとなった。
 集中実習は例年のようにJRバス周山駅集合で始まった。芦生へは研究林からの乗用車に分乗して,途中の自然環境や人間の暮らしを確認しながら移動した(写真左)。各自が準備してきた昼食をとり,宿舎の利用法を教えてもらった後,午後実習に出る。長靴とカンジキを装着して,歩行訓練と宿舎周辺の積雪・降雪の観察及び写真に撮ってくるプログラム。夕食はキムチ鍋。夕食後のセミナーでは足慣らしの間に各自が撮ってきた写真の発表会と芦生研究林の概要説明。
 夜中降った雪は雪としては十分であるが,実習を行う立場からすれば,難儀なことである。詳細は後述する。朝握り飯を作って,太陽も顔を見せる銀世界に皆興奮。内杉林道に足を踏み入れると進めないことを実体験する。場所によっては腰より上まで沈んでしまう状況である。結果はラッセル実習となる。全てのものを雪が覆い隠している。モミの木の下は積雪が少ない(写真右)。樹幹遮断である。足慣らしはしてるというものの,レベルの違う積雪に四苦八苦。固体の水の威力を身を持って体験することも重要な目的ではある。今年は龍王橋までで昼食。カンジキをなくす者まで出て来たので,午後は早めに宿舎へ。夕食はハンバーグを皆で作っていた。これまでで女子の比率が一番高いが,食料は順調に減っていった。夜のセミナーはTAの研究紹介。それぞれ異なったテーマの研究の紹介で刺激になったようだ。
 3日目は積雪調査とスノーモービルの試乗に挑戦した。クラブ前の積雪に縦穴を掘って断面を作りそれを観察,測定して科学的なデータを取る。スノーモービルの構造と走る原理などの解説を受けた後,各自で動かしてみた。打ち上げの夕食はすき焼きで気分は豪華。夜のセミナーは,東先生と福島先生の研究紹介。芦生研究林の中川先生(特定助教)が水生昆虫について夜の実験施設で話をしてくれた。
 最終日は班毎に積雪調査レポートの作成及び発表。樹木の葉のデッサン,各自の感想文,アンケートそして宿舎の片付けと掃除を行った。雪はやんで頑張って作ったかまくらに見送られて陽光の中,芦生研究林の車でJR山陰線の園部駅まで送ってもらって解散となった。感想文には驚きや感動などが率直に述べられていた。皆さんの協力に感謝したい。