白浜水族館企画展示「ドレッジ調査」

瀬戸臨海実験所 技術職員 山内 洋紀


 瀬戸臨海実験所附属水族館(京大白浜水族館)において,2016年7月28日から11月6日まで特別展「ドレッジ調査-白浜沖海底の生物相を探る-」を行った。これは瀬戸臨海実験所が2012年11月より定期的に行ってきたドレッジ調査の成果を公表し,実験所周辺の多様な生物相を認知してもらうための企画である。ドレッジとは底生生物の採集に用いられる器具の一種で,下の写真(左)のウォールケース内展示品の左側二つにあるような金属製の採泥装置を,ワイヤーを使って海底まで落とした後,船で曳行することにより底質およびそこに生息する底生生物を採取するものである。
 水族館館内の展示場所として,「ウォールケース」と第3水槽室302号水槽を選んだ。ウォールケースは第2水槽室と第3水槽室のつなぎ廊下の壁をガラスケースで囲ったもので,普段は実験所教員の研究紹介を行っている。特別展では,ウォールケース内にドレッジ調査の成果をまとめたB1サイズのパネル7枚,実際の調査に使用したドレッジ2点,調査で採集された生物標本18点(サンゴ類2点,貝類7点,棘皮動物2点,頭足類1点,甲殻類1点,魚類5点)を展示すると共に,2016年6月27日に実施したドレッジ調査の様子を撮影した動画をモニターで映写した(写真左)。ドレッジによって採集された生物は小型のものが多いので,展示標本の前にルーペを置いて,見やすくなるよう工夫をした。302号水槽には,調査で採集した生物11種(サンゴ類1種,巻貝2種,ウミグモの仲間1種,甲殻類5種,ヒトデ類2種)を生きた状態で展示した(写真右)。これら飼育展示した生物の一部は,採集から一年以上経った2017年8月現在も元気に生きている。また特別展の開催を広く周知するために,広報用のポスターを作成し,近隣の教育委員会,商工会,旅館組合,観光協会等に配布すると共に,地元の記者クラブにも開催を通知した。その結果,新聞4社とテレビ局2社から取材を受けた。
 入館者へのアンケート等は特に実施しなかったが,海底にひっそりと暮らす小さな生き物達は多くの人々の興味を引いたのではないかと感じている。実際,水族館の閉館時間には標本の前のガラスが指紋だらけになっていることがよくあった他,成果をまとめたパネルを食い入るように見る人や,展示物を一つ一つ丁寧に写真に収めていく人もしばしば見受けられた。今後も,このような企画展・特別展を積極的に行って実験所の研究成果を宣揚すると共に,社会教育の場としての白浜水族館の価値を更に高めていきたいと考えている。
 なお今回の特別展の準備にあたっては,実験所元教員の宮﨑勝己博士(現新潟大学理学部教授)と,元研究員の岡西政典博士(現茨城大学理学部助教)および千徳明日香博士(現豪州クイーンズランド大学海外学振特別研究員)の協力を得た。

年報14号