日本水産学会論文賞 受賞

2004年4月1~5日、日本水産学会において、中山慎之介ほかによる論文が日本水産学会論文賞を受賞しました。

 この度、センターの大学院生およびスタッフの手による以下の論文が、日本水産学会論文賞に選ばれた。
 中山 慎之介・益田 玲爾・竹内 俊郎・田中 克 (2003). Effects of highly unsaturated fatty acids on escape ability from moon jellyfish Aurelia aurita in red sea bream Pagrus major larvae. Fisheries Science 69 (5): 903-909.
 主著者である中山 慎之介君(河口域生態学分野博士課程1年)は水産学会の会員ではないため、第二著者である益田が日本水産学会大会(2004年4月1日-5日、鹿児島大学)において賞状および副賞を受賞してきた。同学会では昨年発行の学会誌全12巻230余編の論文から論文賞の選考を行っており、その第1回の受賞論文7編の中の一つに加わる栄誉に浴した。
 上記論文は、マダイの仔魚が体長7mmに至るまでは容易にクラゲに捕食されること、および仔魚の栄養状態が悪いときにはより捕食されやすいことを室内実験で示したものである。プランは益田が立て、データは当時卒論生であった中山 慎之介君がとり、餌の栄養分析を東京水産大学の竹内 俊郎教授らのグループが行い、そしてマダイの生態に関して田中 克センター長が入念に考察した。限られたデータ量の割には、諸先生のご指導により良い形の論文に仕上がったと思う。
 クラゲの研究はその後、益田が継続しており、また河口域生態学分野の小路 淳博士が低酸素下でもクラゲが仔魚を捕食することを実験的に確かめ、上記学会で発表している。さらに、本年の同分野の卒論生である木村 千秋さんも、クラゲを指標として森里海の連環を探ろうとの意欲的な研究にとりかかった。従来の水産研究の枠では単なる邪魔者として無視されがちであったクラゲを、フィールド研究という視点でとらえていくと、実に奥深い研究対象であることがわかりつつある。今後の研究の展開が楽しみな分野といえよう。なお、主著者の中山 慎之介君は本年よりアメリカ留学を予定しており、副賞の2万円は渡航費用の足しとなろうか。
 (舞鶴水産実験所 助教授 益田玲爾)