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教育活動

公開森林実習III -森林・里山の生態系サービスを学ぶ-

森林育成学分野 特定助教 赤石 大輔

【実習の概要と目的】
 公開森林実習III-森林・里山の生態系サービスを学ぶ-では、里山がエネルギーや食糧の供給場所として日本人の生活を支えてきた重要な生態系の一つであること、またその生態系サービスに関する学術的知見を体験的に学び、教員及び技術職員との対話を通して、実習計画を自ら立案できるノウハウを修得するとともに、計画の実施を自らの責任で行う能力を醸成することを目標にしている。さらに今後10年20年と続く里山整備計画として、次年度以降につなげることを目指している。
 なお本実習は京都大学フィールド科学教育研究センター、里域ステーション上賀茂試験地にて実施した。当初は、5月24日(日)〜 6月28日(日)の期間に実施する予定であったが、新型コロナ感染症の流行を受けて中止とした。その後、感染者数が減少したことから、後期に本実習を試行的に実施することとし、前期に受講希望を出していた学生を対象に実施した。

【受講生】計 5人
和歌山大学観光学部1名、京都先端科学大学バイオ環境学部1名、京都大学医学部1名、京都大学大学院医学研究科1名、京都大学工学部1名

【スタッフ】吉岡崇仁・舘野隆之輔・赤石大輔(京大フィールド研),京大フィールド研上賀茂試験地技術職員

【日程】2020年 10 月 24 日(土)~12月19 日(土)
10月24日:ガイダンス、上賀茂試験地の紹介、植物分類実習。
11月8日:講義、実習:しいたけの収穫体験。現地での境界線確認。
11月14日:講義、実習:炭窯の見学、毎木調査。
11月21日:講義、実習:資料館見学、里山のバイオマス測定。
12月6日:講義、実習:炭窯の炭出し。里山林の整備。
12月19日:全体振り返り(オンライン)。

【実習の内容】
 公開森林実習として募集したところ、京大以外の2大学(和歌山大学と京都先端科学大学)から2名の学生が参加した。京大からは医学部から2名(1名は大学院生)と工学部から1名が参加した。特別聴講学生での受講希望者はいなかった。
 第1回は上賀茂試験地の紹介と植物分類実習、そして里山づくりを行う現場を見て、今後の活動イメージを共有した。
 第2回は、午前中は上賀茂試験地内のコナラを使った原木シイタケの収穫体験を行なった。収穫後に事務所に帰って薪ストーブで焼いて試食も行い、シイタケの原木や調理のためのエネルギーも試験地内のコナラという木質バイオマスを活用している点を学んだ。午後は実習地である第19林班、通称「里山エリア」での初めての作業として、林内に作業区域の境界を設定した。その後、今後の里山エリアの整備案を検討した。
 第3回は、炭窯の見学を行なった。毎年、技術職員が試験地内の風倒木などを炭にして有効活用しており、今回はすでに点火した炭窯を見学し、第5回で行う炭出し作業など今後の予定を確認した。その後、里山エリアの毎木調査や、保全すべき樹木の選定などを行った。
 第4回は、まず試験地内にある資料館を見学した。上賀茂試験地にはさまざまな竹の標本が展示されており、それを使って近年の里山での竹林の放置と拡大の問題について紹介した。午後は、里山エリアにて、里山から得られる資源の一つである燃料としての木材などが、地上部にどのくらい存在するのか推定するため、1平方メートル内にある地上部の生きた植物を全て刈り取り、さらに枯れ葉や落ち葉などを持ち帰り、バイオマスの総量を計測した。
 第5回は、里山のバイオマスを燃料として利用する体験として、炭窯からの炭出し、薪割り、そしてロケットストーブの使い方を学んだ。ロケットストーブで試験地内の間伐材であるスギを燃料としてお湯を沸かした。午後は、里山エリアでの整備作業を行なった。秋に落葉した松葉を熊手で一箇所に集めた。ロケットストーブの使用と落ち葉掻きを通して、松葉が有用な燃料となることを学んだ。
 第6回は、再び新型コロナ感染症の感染者数が増加したことを受けて、オンラインでの開催となった。これまでの里山エリアでの実習のまとめとして、まずは里山エリアで収集したバイオマスの乾燥重量から、里山エリアに存在するバイオマスの推定を行った。また、毎木調査のデータと、過去に上賀茂試験地で行われていたマツやヒノキの材積の推定式を使い、里山エリアにある立木の材積を求めた。その後、里山エリアで果樹の植樹を職員のみで行い、zoomを介して学生にその様子を中継した。参加学生の希望から、イチジク、梅、柿、栗を2本ずつ植えた。最後に、今回の里山エリア内で行なった整備と、今後整備していきたいものを整理し、将来ビジョンについて意見交換した。
 本実習の特徴として、次年度の学生は前年度の作業を引き継ぐ形となるため、毎年整備によって変化していく里山の様子を記録し、受講者や将来の受講希望者が共有できるように、フェイスブックに特設ページを設けて発信した。また作業の記録のために、ヘルメットに360度カメラをつけて作業した。今後は、VRゴーグル等も活用して、里山整備の前後での変化や、草刈り、落ち葉掻きなど整備作業の様子がわかる資料を整理していく予定である。
 実習の効果として、終了後の学生のレポートにも反映されていた通り、里山づくりのアイディアが、当初は里山での遊びなど文化的サービスに偏重していたが、実習を通して次第に食に関することや、エネルギー源として里山をとらえる視点が増えたことがわかった。
 参加した学生は意欲の高い学生達で、実習の満足度も高く、実習終了後にも上賀茂を訪れたいという意見が多かった。修了者が継続して活動に参加できる手立ても検討したい。
 次年度は、大学コンソーシアム京都への提供科目となり、より多くの学生が参加できるよう実習内容の向上と情報発信に努める。
 実習に当たっては、上賀茂試験地の技術職員の協力により、効率よくまた安全に実施することができました。新型コロナの影響下においても適切に対応いただきました。お礼申し上げます。