2025年9月25日、令和7年度全国大学演習林協議会秋季総会がホテルニューイタヤ(栃木県宇都宮市)にて開催され、奥田 賢 技術係長および木本 惠周専門職(技術)が、第27回森林管理技術賞を受賞しました。
本協議会では、大学演習林等において教育・研究の支援や森林の維持管理に貢献した技術職員の業績を称えるため、1998(平成10)年に森林管理技術賞を制定し、翌1999年度から表彰を行っています。令和7年度の表彰者として、京都大学フィールド科学教育研究センターから奥田 賢 技術係長および木本 惠周専門職(技術)が選ばれました。
授賞理由は以下の通りです。
北海道研究林 奥田 賢 技術係長
技術貢献賞【GNSS・ドローンによる高精度森林計測に対する技術的貢献】
奥田氏は、京都大学フィールド研上賀茂試験地の技術職員として採用され、GIS、プログラミング、GNSS、ドローン、AIに関する知識と技術を積極的に学び、それらを活用し、試験地・研究林の業務の効率化・デジタル化・高精度化に大きく貢献してきた。その後、北海道研究林に異動になり、技術班長(のちに技術係長と名称変更)として北海道研究林の調査研究および造林土木までを統括し、造林地図や植生図等の各種図面を統合し、有償ソフトであるArcGISからフリーソフトであるqGISへの移行を指揮するなど、これまでに培った強みを生かしつつ、広範な業務を積極的にこなしていただいた。また、しばらく途絶えていた研究林内の植生調査や鳥類、哺乳類などのインベントリ調査を始めるなど、新たな取り組みも始めている。
さらに、2023年度より国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が推進する宇宙開発利用加速化戦略プログラム「カーボンニュートラルの実現に向けた森林バイオマス推定手法の確立と戦略的実装」(通称スターダスト)において、奥田氏は多大な貢献をした。毎木調査区の高精度GNSS測位や樹高測定を進めるため、奥田氏は、適切なLiDARドローンやGNSS測器を選定し、毎木調査区の高精度測位マニュアルを作成した。さらに、研修会等を通じ、京都大学の教職員だけでなく、他大学の演習林の教職員への技術の普及に尽力した。
近年、研究推進をサポートする専門性の高い技術職員が求められ、ならびに大学間連携が不可欠となる社会情勢において、森林計測技術に基づく演習林の研究教育の発展を支えていく人材として、活躍が期待できる。
北海道研究林 木本 惠周 専門職(技術)
若手奨励賞【デジタル技術を活用した利用者対応の効率化と国際プロジェクトへの貢献】
木本氏は京都大学フィールド研上賀茂試験地の技術職員として採用され、各種免許資格等を取得し、伐木から集材、林道整備といった基本業務にとどまらず、積極的に業務の課題を見つけ、改善に向けて取り組んでいる。
木本氏の特に大きな功績の一つに利用者対応システムの保守点検および改善への貢献があげられる。本学の各研究林試験地ではオンライン利用申請・報告システムを採用し、利用申請から報告、利用実績の集計を全てオンライン上で実施しているが、ほとんどの技術職員にとって内部システムの理解が難しく、利用は容易だが改善は困難であった。木本氏は利用担当者として、システムを利用するだけでなく、自らプログラミングを勉強して内部システムの理解に努め、予期せぬ挙動が起こる状況を発見した際には原因を特定し、またより効率良く利用するためにシステム設計時に想定していなかった利用への対応が可能な改善案を提示するなど、システムの改良に積極的に参加し、業務の効率化に貢献してきた。
加えて、木本氏は芦生研究林担当時に、生物多様性に関する国際プロジェクトLIFEPLANの日本唯一のサイトとしてプロジェクトの実施に尽力した。調査地の設定、試料及びデータの回収のほか、英語マニュアルの日本語化、独自マニュアルの作成、Xやウェブサイトでの広報、関係者間の調整などに尽力した。特に、タブレット端末アプリやクラウドサービスを活用し、ビッグデータを収集し、ヘルシンキ大学にあるプロジェクト本部へリアルタイムに共有するという先進的な技術を活用した本プロジェクトが滞りなく実施できたのは、木本氏の情報通信技術ならびに英語力に依るところが大きい。世界的な生物多様性の解明に貢献し、日本の今後の生物多様性研究・モニタリングの進展に不可欠な技術・知見の蓄積が進んだ。
(参考)全国大学演習林協議会 森林管理技術賞
