ポケゼミ報告2012「原生的な森林の働き」

森林環境情報学分野 講師 中島 皇


 今年度も昨年度のスケジュールと同様に1コマセミナーを4月、5月の後半に1回ずつ、いずれも北部キャンパスで行った。6/9(土)には都市近郊林と見本林の見学のために上賀茂試験地で1dayセミナーを、7月に芦生研究林で合宿形式セミナー(2泊3日)を行った。参加者は6名(文1(1)、理2、農3(1):カッコは女子数)、出身地は姫路市、舞鶴市、京都市、奈良市、静岡市、石川県能登町。自然環境が違う場所からやって来たフレッシュな新入生諸君が芦生研究林のフィールド(森林)に出て、自ら体験し、考え、自然と人間の関わり方に興味を持つ契機とすることがこのセミナーの目的である。
 芦生での集中セミナーは、7/7(土)の広河原バス停集合で始まった。梅雨のさなか、雨が皆を迎えた。芦生研究林の技術職員が車で迎えてくれて、佐々里峠を越え30分程で芦生に。昼食をとり、身支度を整えて由良川本流沿い(芦生では標高が低い谷沿い)の自然を観察しながらトロッコ道を歩く。今年は「根返りスギ」に会いにタケヤクリまで足をのばした。小雨ではあったがその大きさと生命力に感動したようである。夕食はお好み焼き、6人でワイワイ言いながらの楽しい時間である。自分の「始末」は自分ですることを実体験するのもこのゼミの重要な要素である。夜は、芦生研究林の概要説明とTAの研究紹介。
 7/8(日):雨はそれ程は降っていなが、雨具は必要。昼食のおにぎりを作って出発した。幽仙谷の大面積・長期プロットや暖温帯と冷温帯の移行帯についての説明を受け、事務所からは400m程高い丹波高地へ。杉尾峠は雲の中のようである。日本海は到底望めないが、府県境の尾根道は若狭側から上がってくる霧で、非常に幻想的な雰囲気が醸し出されていた。由良川最源流の「最初の一滴」を自分の目で見た後、途中で昼食をとって約2時間半で長治谷まで。トチの木の実や葉のつき方をじっくり観察したり、ナラ枯れにあったミズナラの幹に圧倒されたり、大きなブナの倒木の橋を渡ったりと、人為の影響が少ない原生的な森林を満喫していた。しかし、上谷でも、明治時代まであったという木地師の住居跡、現在は鹿の激増による林床植生の激減やシカが好まない木草本のみになっている場所など、人為や人間の影響?も見られる。それらも含めて原生的な森林を実感し、考えてくれれば良い。長治谷に着く頃には雨も上がり、量水堰の近くで流量観測を行った。その後、下谷では大桂、二次林と人工林を観察し、幽仙谷では天然林からの流出物を回収した。夕食はすき焼き、少し贅沢か。といってもちゃんと安い肉を仕入れたので問題はない。腹一杯食べて、食後にはTAの大学院生や研究員である先輩たちの話を眠気と戦いながらも真剣に聞き、それぞれに要を得た質問をしていた。
 7/9(月) 流量観測データをレポートにまとめ、回収してきた流出物と水生昆虫の観察とデッサン。最後に宿舎・食堂の片付けとフィールド研からのアンケートを書いて、広河原バス停までの送りでセミナーは終了となった。