実習報告2014「森里海連環学実習 II 」

森林情報学分野 教授 吉岡 崇仁

 平成26年度の森里海連環学実習IIは、京都大学フィールド科学教育研究センターの北海道研究林標茶区と北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの厚岸臨海実験所を拠点として、8月30日から9月5日の日程で実施した。

【実習日程】
 2014年8月30日 実習生集合、ガイダンス、安全教育、講義、樹木識別実習
 2014年8月31日 天然林毎木調査、土壌調査、講義
 2014年9月 1日 パイロットフォレスト視察、牧草地土壌調査、水源域調査、
          講義
 2014年9月 2日 別寒辺牛川の水生生物・水質調査、講義、水質分析実習
 2014年9月 3日 厚岸湾および厚岸湖の水質・底質・水生生物調査、グループ発表準備
 2014年9月 4日 グループ発表(愛冠自然史博物館)、レポート作成
 2014年9月 5日 レポートとアンケートの作成・提出、解散

【実習生とスタッフ】
 受講した実習生は、京都大学と北海道大学からそれぞれ10名ずつ、男子学生15名、女子学生5名の計20名であった。「森」「川」「里」「海」の4つの班を構成した。教員・TAスタッフは、京大・北大それぞれ7名、技術職員は、それぞれ7名と2名であった。また、今回、酪農学園大学の吉村氏の協力を得て、GISの利活用に関する講義を実施した。

【野外実習の内容】
 標茶研究林では、葉や枝の特徴から樹木の種を識別する方法を学んだのち、天然生林の尾根と谷部に設定したプロット(20×10m)において、胸高直径5cm以上のすべての木の胸高直径と種類を記録した。また、土壌観察を行った。尾根と谷では生育する樹種や種数に違いがあり、また、土壌の形成過程にも違いがあることを土壌断面の観察から読み取る実習を行った。谷部の土壌断面作成においては、掘り進むにつれて水分が増え、やがて水が湧いてきた。土壌中に見られる褐色や灰黒色の色の変化が、土壌中の酸素条件との関係について考察した。天然林遊歩道では、樹種の判別実習を行い、1時間の間に各班で15〜20種類の同定を行うことができた。トドマツやカラマツの人工林では、シカによる樹皮の食害や間伐施業の現場を視察し、食害回避の方法について学んだ。また、国の事業として取り組まれてきたパイロットフォレストを視察し、林業とその歴史についても学ぶことができた。水質調査では、別寒辺牛川流域及び研究林周辺で採取した河川試料について、デジタル・パックテスト・マルチと携帯型イオンクロマトグラフィーを併用して分析の原理と実際の試料測定を実習し、森林、牧草地といった流域環境と水質の関係について考察した。また、講義で取り上げたGISによる採水地点の集水域の空間情報を用いて、水質と土地利用の関係についても考察に加えることができた。
 別寒辺牛川および厚岸湖における水生生物実習では、河川の上流から下流、さらには厚岸湖に向かって魚類やエビの消化管内容物に見られる餌生物の変化から、森林由来と水域由来の餌の寄与を推定し、森・川・湖(海)のつながりについて考察した。また、厚岸湾では、測器による物理化学観測を行うとともに、プランクトン採集を行い、顕微鏡観察に供した。厚岸湾ではうねりが大きく、初めて海洋調査に取り組んだ受講生にはかなり困難な実習となったが、陸に上がるとすぐに元気になり、実習を続けていた。

【レポート作成と発表会】
 毎木調査、土壌調査、食性調査についてそれぞれレポートをまとめるとともに実習全体について、「森」「川」「里」「海」の各班それぞれに異なる場の視点から森里海の連環について考察しグループ発表を行った。とりまとめる時間は限られていたが、各班とも特徴のある発表となった。