第4回時計台対話集会「むしに教わる森里海連環学」

森林資源管理学分野 吉岡 崇仁

森林環境情報学分野 中島  皇


今回の時計台対話集会は、京都大学の21世紀COEプログラム「昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生」と共催で実施した。タイトルである「むしに教わる森里海連環学」は、人類誕生のはるか以前から地球で生まれ、多様性、生息数ともにきわめて大きな昆虫が、その進化の中で勝ち取ってきた智恵と環境への対処法を学ぶべきであり、フィールド研が掲げる「森里海連環学」の構築にも資するものがあるのではないかとの発想で採用された。
 白山義久センター長による開会の挨拶、尾池和夫総長の挨拶に続き、解剖学者で昆虫にも造詣の深い養老孟司氏(東大名誉教授)による基調講演I「虫から見える“森里海”連環」があった。数多くの珍しい昆虫の写真を前に、参加者に語りかけるような講演で、昆虫分類学者顔負けの内容に加えて、地球環境問題に対する考え方は多くの共感を呼ぶものであった。
 来賓講話は村田泰隆氏((株)村田製作所会長)にお願いした。「蝶と環境」と題して、海外での観察経験も含めて、楽しそうに話された。また、自転車型ロボット「ムラタセイサク君」の実演もあり、休憩時間には演台周辺に多くの参加者が集まり、「彼」の動きに見入っていた。
 21世紀COEプログラムの拠点リーダーである藤崎憲治教授による基調講演II「昆虫から見える地球温暖化」では、京都周辺の山でシカの食害によって森のようすが大きく変化していることが紹介され、気温の上昇によって昆虫の分布が変化してきていることを実感させられた。
 引き続いて、フィールド研における森里海連環学の研究プロジェクトに関する流域圏ごとの現地報告が、仁淀川:柴田昌三教授、由良川:山下洋教授、古座川:梅本信也准教授によってなされた。
 最後に、会場との対話が、アウトドア・ライターの天野礼子氏の司会により、会場からの質問に各講演者が答えるという形で進められた。また、2階の国際交流ホールにおいては、フィールド研・昆虫COEの活動紹介やフィールド研の各施設の紹介、村田会長の「蝶の写真」のパネル展が開催された。
 当日の参加者は、430名を越え、時計台記念館のホールはほぼ満席となった。環境を語るには、次世代を担う子供たちや若者にも訴えかけることが重要であると考え、京都市内の中学校、府内の高等学校にも直接ポスターやチラシを配布して参加を呼びかけた。その甲斐あってか例年は少ない10代から20代の年齢層の参加が多い結果となった。今回、フィールド研の取組を現地報告という形で紹介したが、参加者へのアンケート結果では、具体的な話が聞けたことを高く評価する意見が多く、今後も積極的に成果の発信を心がける必要が強く感じられた。

ニュースレター14号 2008年7月 ニュース

白山 義久センター長の報告は こちら