ポケゼミ報告2013「森林の動態と再生」

森林育成学分野 准教授 安藤 信


 京都市市街地周辺,奥山の芦生研究林,その中間に位置する北山・八丁平湿原周辺の森林を踏査,調査し,森林帯,地形,遷移過程の違いに伴う林分構造の変化とその動態,そして近年の環境変化,とりわけ「マツ枯れ」,「ナラ枯れ」,シカ等の動物による森林被害の実態,さらに防除に関する取り組みや森林の再生法についての講義・実習を行った。セミナーは4,5月の土・日・祝日を中心に実施した。

○4月19日(金)昼:ガイダンス
 日程及びフィールド実習における注意事項を説明した。
○4月20日(土):上賀茂試験地における樹木識別実習と京都市市街地北部二次林の植生とその変化
 午前中は試験地で行われた「春の自然観察会」に参加し,京都付近の里山にみられる代表的な樹種や海外から導入されたマツ属をはじめとする多くの樹木の観察を行った。午後は樹木の識別・分類とわが国の代表的樹種の分布,近年被害が著しい「ナラ枯れ」についての講義を行った。
○4月27日(土):大文字山におけるアカマツ林の再生と森林調査法
 午前中は暖温帯に位置する京都の過去からの森林の変遷,近年の「マツ枯れ」による急激な変化,さらに古都の景観回復と伝統的な文化を継承するため行われている森林施業,大文字山の「マツ枯れ」進行林分で行われているアカマツ林の再生試験についての講義を行った。午後は大文字山に登り,その道中において樹木の識別実習を行うとともに,アカマツ林再生試験地においてアカマツや,コナラなどの落葉樹残存木の毎木調査や更新してきたマツ稚樹の成長量調査を経験し,森林調査法についても学んだ。
○4月28日(日):八丁平二次林の林分構造と動態
 冷温帯域の北山・八丁平湿原に出かけ,午前中は周辺林で被害が進行している「ナラ枯れ」被害木の調査に参加し,午後は地形や攪乱の歴史が異なるいくつかのタイプの二次林を踏査して遷移過程や林分構造の違い,「シカ害」の実態を視察した。
○5月3日(祝):東山シイ林の林相改善
 午前中に,「マツ枯れ」や森林の放置によってシイ等の常緑樹の分布が拡大している東山で行われている,落葉広葉樹が混交し,種多様性が高い森林に導くための林相改善事業ついての講義を行った。その後,東山に赴き,シイ林の群状伐採や小面積伐採地に天然更新してきた稚樹の調査を行って,森林施業法について検証した。
○5月18日(土):芦生の天然林,二次林の林分構造と動態
 芦生研究林のブナやスギが優占する冷温帯の天然林・二次林の構成種や動態について,現地で解説した。長年継続されている二次林の毎木調査を行って,フィールド調査の難しさを体験した。

 本セミナーには経済学部,工学部,農学部の4名の学生が参加し,農学部研究科の山崎理正助教,フィールド研上賀茂試験地の藤井弘明技術班長,農学部研究科M1の海野大和君,田下直人君,農学部3回生の成田あゆさん,理学部2回生の上野賢也君が協力してくれた。