瀬戸臨海実験所を利用して

奈良女子大学理系女性教育開発共同機構 特任助教 和田 葉子

 波の音と磯の香り、広大な海と岩場、そこに生息する数え切れない種類の生物。私が学生時代の6年間、心を躍らせ、発見の喜び、研究の大変さ、苦しさ、楽しさを学んだのは、そんな美しい、瀬戸臨海実験所近くの岩礁潮間帯であった。
 瀬戸臨海実験所は、我々のように臨海実験所を有しない大学に在籍する学生・教員が、海洋生物の研究をできるよう、“教育関係共同利用拠点”としてその施設を開放している。場所を提供してくださるだけでもありがたいことなのだが、この実験所の所員の皆様は、我々外来研究員の研究の成功を常に願い、研究への協力や、生活面でのサポートをしてくださっている。そんなすばらしい環境で私は、群集生態学の研究を行ってきた。
 地球上には無数の生物が生息し、それらは互いに関係しあい、生態系を作り上げている。磯にもまた複雑な生態系が存在し、多くの種類の生物が様々に関係しあっているのだが、環境問題が深刻化し、自然環境の保全や管理が重要視されるようになった現在、その構造を「読み解く」ことは、生態系自体の維持機構を理解するためだけでなく、その動態を予測する上でも重要視されている。本研究では、ある種が、一見何のかかわりもない種と間接的かつ相互に影響を与えあっている“間接効果”に注目し、正しく評価することで、多くの生物が共存する生態系の構造や動態を明らかにすることを目的としている。そのため、岩礁潮間帯に生息する、捕食者巻貝-被食者笠貝-藍藻・緑藻からなる生態系に注目し、間接効果の大きさを野外で長期的に評価してきた。その結果、捕食者が間接的に藻類の群集構造を変えること、さらにはその大きさが季節変動し、夏に大きかった間接効果が冬には弱まり、春には見られなくなることが分かった。これらはいずれも、これまで軽視されてきた野外での実証研究を実現させたことによって得られた結果であると考えている。
 在籍する大学に臨海実験所がなくても瀬戸臨海実験所のような海洋生物を学べる場所がある、そのことは、多くの学生や研究者が学ぶ機会を多分に広げ、研究を進歩させる。そして、所員の方々の協力体制はその可能性をさらに広げる。海の生物について学びたいという気持ちさえあれば様々な研究ができる、そんな素敵な場所、瀬戸臨海実験所に、これからも多くの学生・研究者が集まり、すばらしい研究がなされることを心から望んでいるし、私もその一人であり続けたいと思う。

ニュースレター41号 2017年2月