2018年2月8日、益田玲爾准教授らによる研究論文が英国科学雑誌「Nature」ウェブページにオンライン公開されました。2月15日発売号に掲載されます。
Ushio, Masayuki; Hsieh, Chih-hao; Masuda, Reiji; Deyle, Ethan R.; Ye, Hao; Chang, Chun-Wei; Sugihara, George; Kondoh, Michio
Fluctuating interaction network and time-varying stability of a natural fish community
(野外の魚類群集における種間相互作用ネットワークと安定性の時間変動)
Nature: 554(7692), p.360–363 (15 February 2018)
https://www.nature.com/articles/nature25504 (2018-03-13 追記)
DOI: 10.1038/nature25504 (電子ジャーナル閲覧のための認証が必要です)
益田准教授は、舞鶴水産実験所の沿岸に設定した600mの調査ラインで2002年から2週間おきに潜水調査し、観測した生物の種類、体長、数を記録しています。この論文は、その12年間(計285回)のデータ(観測個体数の増減)から、非線形力学理論を利用した数理的データ解析手法によって、魚類14種とクラゲの間の関係性(どの種が増えればどの種が増えるのか減るのか、その影響力はどれぐらい強いのか)と、その生物群集の総体としての安定性を数値化するとともに、さらにその数値の時間変動を解析し、種の多様性とそのゆるやかな相互作用によって生態系が安定していることを示したものです。たとえば、アミメハギが増えればマアジは減る、マアジが増えればミズクラゲとアカカマスが増える、逆にアカカマスが増えてもマアジは増える、といった関係にあることが示されました。また、生物群集としての安定性は夏に高まり、冬は不安定になるという季節変動があり、その変動が、夏に種の多様性が高まり種間相互作用がゆるくなる変動と連動していることが示されました。この解析結果は、直接観測することの難しい種間の関係性を示すものですが、なぜそのような関係性になるかということを示すものではありません。しかし、生態観測による推測を裏付けるものが多くあり、逆に想定とは異なる結果もあるため、今後こうした解析を踏まえてさらなる観測や行動実験によって研究が進む可能性があります。
詳しくは、京都大学ページの研究成果発表「海に生息する魚種間にはたらく複雑な関係性を捉えることに成功 -緩い種間関係と種の多様性が生態系を安定化- 」、および 解説PDFファイル を参照下さい。
Capturing the balance of nature (Research Result at Kyoto Univ. English website / 2018-03-13 追記)