教育研究活動における小型船舶の運用

瀬戸臨海実験所 山本 恒紀


 瀬戸臨海実験所では2隻の船舶を所有し、研究者の調査・研究や年間約40回行われる臨海実習での利用用途に合わせ日々実験所周辺海域での運航を行っています。
 所有する船舶は、遠方での調査や深海での採集調査、海洋観測が行えるよう建造されたヤンチナ(定員26名、全長17m、総トン数12t)と、より浅い水深でも採集調査が行えるゾエア(定員12名、全長8.3m、総トン数1.3t)があり、用途に合わせた運航を行っています。
 田辺湾周辺の生物相は実験所創設以来調査されてきましたが、深海での採集調査はあまり進んでいませんでした。2008年に1000m のワイヤー付きウインチ、魚群探知機・レーダー等の機器を備えたヤンチナが建造された事により、先代の船に比べ、より深い水深での採集調査が可能となりました。
 近年実験所内外の研究者により、ヤンチナを使用した底生生物の採集がさかんに行われています。技術職員が自作したドレッジと呼ばれる底引型の採集機器を使用し、最大水深約300m までの採集調査を行い、ゴカイ類、魚類、ウニ類、ナマコ類、クモヒトデ類で希少種や未記種等の発見につながりました。
 臨海実習ではプランクトンの採集や海洋観測、また実験所の所有する無人島・畠島での磯観察の為の学生達の送迎もこの2隻が役割を担っています。
 船舶を運航時には、船舶免許等の資格がある技術職員が最低2名、調査等を行う場合には3名が乗船し航行・作業時の安全を確保しています。また年に1回船を陸に揚げ、船体・機器等の点検や、消耗品の交換、船底塗装などのメンテナンスを行い日々の安全運航に努めています。

ニュースレター51号 2020年7月 技術ノート