報告「大学の森で学ぼう2012」

ひらめき☆ときめきサイエンス「大学の森で学ぼう2012」

北海道研究林長 舘野隆之輔


 「大学の森で学ぼう2012」は、日本学術振興会の研究成果の社会還元・普及事業「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~」の一環として、小学生(5・6年生)と中学生を対象として行ったプログラムである。開催日は、平成24年7月28日(土)で、参加者は8名(中学生5名、小学生3名)で標茶町内から3名、釧路市内から5名であった。実施代表者の舘野と実施分担者の北海道研究林職員8名に加えて、京都から森林情報学分野院生1名が実施協力者として、プログラム実施に携わった。また当日は地元新聞社2社の2名、学術振興会から委員と職員の2名、保護者1名の参加があった。
 本プログラムは、大学の研究林を使った自然観察や野外観測体験を通して、森のはたらきや樹木の不思議を学び、科学のおもしろさを感じてもらうとともに、身近な植物を使っての草木染めを受講生自らで体験することにより、自然と人の生活との関わりについて考えることを目的として行った。自然観察では、図鑑を片手に、実際に樹木の枝葉の実物を手に取って同定する方法について学んだり、野外観測体験では、森林の持つ様々な機能を観測する方法について、測器を手に取って受講生自らが森林観測を体験できるように工夫した。また草木染めでは、受講生自らが材料集めや模様づけなどを行い作品を作り上げるとともに、草木染めの化学的な原理について、試験管などの実験器具を用いた簡単な化学実験を行うなどの従来の草木染めのイベントとは違った工夫を行った。最後に受講生一人一人が一日学んだことや作品をみんなの前で紹介する時間を設け、その後「未来博士号」の授与式が行われた。
 子供たちは「ふだん何気なく見ている森林に様々なはたらきがあることを知り、今後も森林の勉強を続けていきたい」、「身近な植物から色々な染料がとれて楽しかった」などといった感想を述べており、苦労して準備した甲斐があり、研究成果の社会還元や地域貢献にも北海道研究林として一役買うことが出来たのではないかと考えている。また今回は、外部資金を獲得することが出来たため、例えば、釧路駅や標茶駅の構内に募集案内ポスターを掲示したり、新聞の広告欄に宣伝記事を掲載したりと、普段の社会貢献事業ではなかなかできない広報活動に力を入れることが出来たので、北海道研究林の存在を地域にアピールする良い機会になったのではないかと思う。また今回のプログラムを機に教育委員会や新聞社などとも、これまで以上に密接にコンタクトをとり、今後の社会貢献活動などの広報のご協力をお願いすることもできた。普段経験しない業務が多く大変であったが、技術班長中心に準備や当日の実施に取り組めたことは、今後の北海道研究林での社会貢献活動にも生かせるのではないかと考える。反省点としては、募集人数が当初の予定よりも少なかった点が挙げられ、広報方法やプログラム、スケジュールなどを改善していくなどを今後の課題としたい。