向井宏

参考情報(2013-11-30 までの情報です)

向井宏特任教授
フィールド科学教育研究センター 研究推進部門
森里海連環学分野 連携教授
学際融合教育研究推進センター 森里海連環学教育ユニット 特任教授
E-mail:mukaih*kais.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)

(2008年度公開)

1.研究分野(過去、現在、未来)

  広島大学では卒業研究に動物プランクトンの研究をし、大学院修士課程でガラモ場の葉上動物群集を研究、博士課程では泥底の二枚貝の生産生態学を研究しました。東京大学海洋研究所に就職して深海の動物たちも覗きましたが、自分で潜って見えるものの方が性に合っていると思い、浅海の藻場の研究を始めました。北海道大学厚岸臨海実験所に移ってから、森と海の関係に注目して研究を始めました。現在はこれまでの研究のまとめを行い、成果を社会に還元することに主眼をおいている。

(1)海草藻場(アマモ場)の生物群集

  (ア)海草の生長様式と生長・生産速度の研究

  (イ)アマモ場の分布と現存量(環境省のモニタリング1000プロジェクトでも調査に参加している)

  (ウ)海草上に生息するモエビ類の共存に関する研究

  (エ)葉上動物群集の地理的変化と群集の組織化についての研究

  (オ)熱帯海草藻場の生産力に関する研究(オーストラリア、パプア・ニューギニア、フィジー、タイなど)

  (カ)海草による環境浄化作用の研究

  などをやってきました。これからもアマモ場の研究と保全活動には関わり続ける予定です。

(2)ジュゴンの生態

 この研究は、(1)のアマモ場の研究と関連した研究で、ジュゴンは海草だけを専食する動物であり、絶滅が危惧されている。ジュゴンの保全のためには、海草藻場の保全が必須であり、海草藻場の保全には陸上生態系の利用をうまく管理することが必要であり、(3)とも関係しており、また、(4)のテーマとしても象徴的な意味を持っていると考えている。

(3)陸上生態系と沿岸生態系の相互作用についての研究

 (ア)北海道厚岸水系における陸域の利用形態と河川を通して沿岸の汽水域(厚岸湖)に与える影響を調べてきた。利用形態の違う流域を持つ別寒辺牛川の三つの支流の河口で1年以上にわたって、流量と有機物・栄養塩含量を測定し、流入した物質が厚岸湖でどのような物質循環をしているかについて明らかにした。また、大雨が降り始めた後、1週間ほど河口部での測定から、厚岸湖への物質流入パターンの違いと厚岸湖での物質循環経路(生態系の反応)の違いを明らかにした。数値シミュレーションによってもその結果を説明することができた。

 (イ)上記(ア)の研究を通して湿原が持つ重要性を認識した。そのために、湿原における窒素の動態を調べるために、年間を通した湿原水の測定と植物量を調べ、湿原の持つ役割を研究している。
 (ウ)さらに、陸と海の関係を調べるために、アムール川-オホーツク海プロジェクトや、北方四島の調査に参加した。

(4)海域陸域統合管理の研究

  沿岸の生態系を理解するためにも環境を保全するためにも、陸上生態系をどのように利用していくかを考えることが求められている。沿岸や湿地帯の保全を目指すラムサール条約では、「賢明な利用」が求められ、生物多様性条約では、「持続可能な利用」が要求されている。沿岸を考えるためには陸をどうするか、総合的な流域管理が必要であり、それをどうしていくかを考えるのが、私が属する海域陸域統合管理学研究部門の課題である。言うは易く行うは難し。一緒に考えましょう。

2.好きなもの、趣味

  好きなもの:手つかずの自然、人のいない風景、野生の花、紅茶、美人。嫌いなもの:酒、煙草、肉、ゴルフ、美人。山と温泉が趣味。海に潜って生き物と戯れるのも趣味の一つですが、もっぱら仕事で潜っているので、趣味では山に登っています。これまでに登った山の数は延べ約450座。そのうち日本百名山は現在54座。これまで入った温泉は約370カ所。延べにすると1000回は超えそうです。休みには山へ出かけたいのですが、関西は山と温泉に恵まれず、ちょっと残念。

3.その他

 研究をする中で海の環境がきわめて悪くなってきていること、しかも陸における人間の所業が海の生き物に悪影響を与えているにも関わらず、陸に生きる人はまったく加害者意識がないことにいらだちを覚え、北大を定年退職後「海の生き物を守る会」という団体を立ち上げて、全国の海岸で観察会・講演会・シンポジウム・砂浜生物調査などの活動を行ってきました。今後もこの活動を続ける予定ですが、忙しくなってきたこともあり、いっしょに活動をしてくれる人を探しています。また、研究その他でいつでも部屋に訪ねてきてください。誰でも大歓迎。また、お酒はだめですが、お茶を飲みに行こうと誘っていただければいつでも出かけます。誘ってください。


(フィールド研に関連する経歴)
2003-08-08/13 少人数セミナー「北海道東部根釧地方の自然景観」において「森と海の相互作用」を講義(北大厚岸臨海実験所を訪問)
2003-12-08 北海道大学,京都大学,琉球大学連携フィールド科学シンポジウム(舞鶴水産実験所にて開催)において発表
2004年度から 全学共通科目「森里海連環学実習II」を北海道大学と共同で実施
 (北大側担当教員:2006年度からは「森里海連環学実習C」に科目名変更)
2006-03-17 海域・陸域統合管理論セミナー 講師
(2007-03-31 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター教授 定年退職)

2008-10-01 海域陸域統合管理学研究部門 特任教授
2012-04-01 企画研究推進部門 連携教授 ・ 学際融合教育研究推進センター 森里海連環学教育ユニット 特任教授 (組織改編につき)
2013-08-01 研究推進部門 連携教授(組織改編につき)
2013-11-30 辞職