田川 正朋

参考情報(2013-03-31 までの情報です)


 フィールド科学教育研究センター里域生態系部門
 河口域生態学分野 准教授
 (農学研究科応用生物科学専攻 海洋生物増殖学分野)

1.研究分野 魚類生理学
 魚類の発生に伴って個体レベルでおこる「面白い」現象を、実験生物学的にいろいろと明らかにしたいと考えている。現在取り組んでいる主なテ-マは、

1)卵中に含まれる母親由来のホルモン
 魚類の未受精卵中には各種のホルモンが含まれていることが明らかとなってきたが、その存在意義等は明らかにされていない。これまで甲状腺ホルモンとコルチゾルについて、母親体内での卵細胞への取り込み機構、発生過程での消長、種間比較などを行ってきた。生物学的な意味についてであるが、魚類の初期発生に重要であるとする知見が報告されている。多くの海産魚類では、放流や養殖のために卵から稚魚を育てる試みが各地で行われているが、孵化後10日までに多くの魚が死亡してしまう現象が問題となっている。そこで、甲状腺ホルモンを投与すること等により、これらの死亡が軽減できないかを、主にヒラメ類やハタ類を用いて実験的に検討を続けている。

2)魚類の変態の調節機構
 a) ヒラメ・カレイ類の左右非対称な変態
 ヒラメ・カレイ類は動物界全体で最も顕著な左右非対称性を示す。この非対称性は変態期に生ずるが、どのようなメカニズムで体の左右が異なった形態を発現するかについて、これまで内分泌学的な検討は皆無であった。魚類や両生類で変態現象の中心となる甲状腺ホルモンの作用が、体の左右で異なっている可能性が高い。現在、ホシガレイやヒラメを用いて、変態期の眼の移動機構や左右分化の形態異常の分析を行っている。
 b) シロウオ・シラウオに見られる幼型成熟(ネオテニ-)
 両生類ではウ-パ-ル-パ-などが一般的に良く知られるが、子供の時の形態(たとえば外鰓)を残したままで成熟する現象(幼型成熟・ネオテニ-)がある。通常のサンショウウオならば外鰓は変態期に消失するが、幼型成熟性のサンショウウオでは変態を司る甲状腺系の機能が不十分であるため、完全な変態とならないことがわかっている。魚類でも、シラウオやシロウオのように他種の子供のような形態のままで産卵する幼型成熟が知られているが、生理学的な研究例が無い。甲状腺やその調節系の分化、ホルモン受容体の有無などを検討している。

3)海と川を移動する魚類の生理学的な検討
 淡水や海水などのように魚類の血液の塩分とは異なるような環境水のなかで、体内の塩分や水分のバランスをとることを一般的に浸透圧調節という。サケ科魚類をはじめとして、生活史の節目となる時期に海と川を行き来する多くの種類が知られているが、このような異なった塩分環境に適応するための浸透圧調節機構を、コルチゾルを中心とした内分泌学的な検討や鰓の微細形態から研究している。また、魚類の回遊行動の引き金としても甲状腺ホルモンが働いていることが知られている。現在では回遊に直接関係した研究は行ってはいないが、サケ科魚類の川下りを甲状腺ホルモンから検討していたこともある。

 その他、魚類の初期生活史(気分的には5cmになるくらいまで)におこる、回遊や環境適応現象における内分泌系の関与等についても興味をもっている。生きた魚を材料にして実験しているホルモンの研究者といえばイメ-ジしてもらいやすいかと思う。

2.好きなもの、趣味
 いちかばちかの実験、よろず修理、道具・工具、夏のビ-ル、田ぼのオタマジャクシ、等は病的に。
 釣り、旅行、工作(木工・電子)、写真(デジタル・銀塩)、天文、紙飛行機、等も周期的・一過的に。
 剣道、キャンプ、各駅停車の旅行、ユ-スホステル、酵母の培養、等も昔は。
 ジャズ・ニュ-ミュ-ジック、焼き物、木工芸品、タイ料理、等は受動的に。

3.その他
 毎年9月14-15日は岸和田だんじり祭りのため、アタマがいっさい働かなくなります。しばらくは仕事ができない状態になりますが御了承下さい。
 キャリア20年以上の阪神ファンです。


(フィールド研における経歴 情報整理 2016-03-31)
2003-04-01 里域生態系部門 河口域生態学分野 准教授 (流動分野)
 (農学研究科応用生物科学専攻 海洋生物増殖学分野)
2013-04-01 流動分野の交代により、農学研究科へ異動