ポケゼミ報告2011「森林の再生と動態」

森林資源管理学分野 准教授 安藤 信


 京都市市街地周辺林、奥山の芦生研究林、その中間に位置する北山・八丁平湿原周辺の天然林・二次林を踏査、調査し、森林帯、地形、遷移過程の違いに伴う種組成や林分構造の変化と動態、そして近年の森林被害の実態について、講義・実習を行った。セミナーは4、5月の土・日・祝日を中心に実施した。

○4月16日(土)午後:ガイダンスおよび樹木識別実習
 ガイダンスでは日程、野外実習における注意事項を説明した。樹木の分類と識別法、わが国の代表的樹種の分布について概説し、北白川試験地の樹木園において実習を行った。
○4月17日(日)1日:京都市周辺の森林の動態と再生
 古都京都の過去からの森林の変遷、近年の「マツ枯れ」・「ナラ枯れ」被害の実態、さらに近年東山を対象に行われている景観回復のための森林施業について、解説した。吉田山では「マツ枯れ」後に広葉樹林化した里山の現況を視察し、大文字山ではマツ枯れ跡地でアカマツ林再生のための取り組みについて解説し、ともに「ナラ枯れ」被害の現況を視察した。
○4月23日(土):上賀茂における樹木識別実習
 試験地で行われた「春の自然観察会」に参加した。「マツ枯れ」後にヒノキ林に変化した森林を観察するとともに、近畿地方で代表的な里山構成種の識別実習および海外から導入された多くの樹木種の観察を行った。
○4月29日(祝):東山シイ林の林相改善
 東山では森林の放置によってシイ林が拡大している。落葉広葉樹が混交し、多様性が高い森林に導くための森林施業が行われている。このような施業地の森林調査を行って、施業の検証を行った。
○4月30日(土):「マツ枯れ」「ナラ枯れ」被害林調査
 市内北部の里山を踏査した。上賀茂試験地において、「ナラ枯れ」被害林の樹種構成や被害状況について、実態調査を行った。
○5月3日(祝):芦生の天然林、二次林の林分構造と動態
 冷温帯域の芦生研究林において、天然林、伐採後30年を経過した二次林の森林調査を行った。天然林の構成樹種や森林の再生過程、さらにフィールド調査の難しさを体験した。
○5月7日(土):八丁平二次林の林分構造と動態
 冷温帯域の北山・八丁平二次林の踏査を行い、地形や攪乱の歴史が異なる森林の遷移過程、近年増加している「シカ害」「ナラ枯れ」の現況を視察した。
 本セミナーでは、総合人間学部M1の棚田史彦君、農学部4回生の中野周平君が協力してくれた。