採集実習船「ゾエア」ZOEA進水

瀬戸臨海実験所 山本 善万


 瀬戸臨海実験所(以下:実験所)では、紀伊水道・熊野灘・大阪湾・瀬戸内海・田辺湾・鉛山湾・芳養湾等の海域において、生物学専攻の学生実習や、海洋生物学ならびに海洋生態学等の多目的な調査研究のために船舶を使用する機会が多い。
 実験所の所有船舶の沿革年表には、1922年(大正11年)に就航した当時では大型船であった研究船(木製)入神丸19トン・48PSをはじめPELAGIA、JANTHINA、OBELIA、そして最も小型のZOEAが登場する。初代のゾエアは、1935年(昭和10年)10月16日進水の採集船(端艇)で木製。ろかいの伝馬船で、主に田辺湾の湾央から湾奥および実験所周辺海域でのプランクトン採集に使用した。1961年(昭和36年)の第2室戸台風にも持ち堪え長期にわたり使用してきたが、1972年(昭和47年)老朽のため用途廃止とした。
 次に登場したのがゾエアIIである。ゾエアIIは1979年(昭和54年)1月11日進水の採集実習船でFRP製ヤマハ W-18AF-1・長さ4.82m・幅1.45m・深さ0.59m、最大搭載人員5名(船員1名、旅客4名)、主機関ヤマハ船外機9.5PSを搭載。航行区域も平水区域から限定沿海区域へと範囲を広げ、ろかいと船外機を併用して使用していたが、建造から30年経過し、主要部に著しく老朽化が進んだため用途廃止とした。
 その為ゾエアIIの代船として新たに採集実習船が建造された。船体が倍近く大きくなったことから、実験所内で船名の公募を行った結果、再度「ゾエア」が選ばれた。田辺造船(和歌山県田辺市立戸)で艤装工事を終え平成21年4月13日に進水した。
 ゾエアの船体は、FRP製マリンシックス SW-28F・総トン数1.3トン・長さ8.34m・幅2.28m・深さ0.87m、最大搭載人員12名(船員2名、その他乗船者10名)、主機関スズキ船外機DF40T最大出力40PSへパワーアップした。また、油圧式操舵機、舷側ブーム、電動ウインチ、潜水用梯子などを装備する。実習におけるプランクトン採集、磯採集、底生生物の定量採集や潜水調査時の警戒支援船、畠島実験地および畠島分室の管理、水族館での展示に適した浅海産の海産生物などの採取を主用途とするほか、和歌山県漁業調整規則特別採補許可を得た漁具等を使用し、浅海産の海産生物のサンプリングのため漁船登録を取得している。船舶を利用した野外調査は研究の中核をなすものであるから、ゾエアは生物学専攻学生の臨海実習や専任教職員、大学院学生、外来研究者などの海洋生物学、水産学、海洋学に関する研究に利用されることであろう。

ニュースレター18号  2009年12月 ニュース