京都大学白浜水族館「水族館バックヤード体験」と「水族館の磯採集体験」

瀬戸臨海実験所 加藤哲哉


 瀬戸臨海実験所に併設されている京都大学白浜水族館(以下:水族館)は、一般対象の体験型イベント「バックヤード体験学習」と「水族館の磯採集体験」を、和歌山県教育委員会主催の「きのくに県民カレッジ」の連携講座として開催している。
 「バックヤード体験」は2006年10月より開催しており、水族館の日常管理から生き物について学ぶことをテーマに、水槽設備・飼育水の給排水システムの見学、餌やり体験、生物標本の同定、飼育個体数の集計などを体験する。特に好評なのは餌やり体験だが、標本同定や個体数集計もやってみると面白かったという声が多い。生物の同定というと図鑑を使うことが多いが、水族館には生きている実物がいるので標本片手に館内を探し回って同じものを探すのである。標本はカニの抜け殻など生きた状態そっくりなものから、サンゴの骨格など全く見た目が違うものを用意し難易度の幅を持たせている。生物集計は飼育生物の個体数を数えるのだが、あまり動かず数えやすいものから、数が多く動き回るもの、似た種との区別が必要なものなどを用意している。どちらも、子供の方が大人より成績がいいようである。
 2007年6月から開始した「水族館の磯採集体験」は、水族館の生物収集活動を体験する。採集は水族館のすぐ前の磯で行うが、エビ、カニ、ヤドカリ、貝類、魚類のほか、ウニ、ホヤ、アメフラシなど様々な生物を採集できる。参加者は、自ら採集した生き物を自宅で飼っているセミプロから、ナマコを初めて触っておっかなびっくりの初心者まで様々だが、生き物を捕まえるのに夢中になるのは共通のようだ。1時間ほど観察・採集したあと、採集した生物の名前を調べて記録してもらう。時間がないのでほとんど教えることになるが、配布したハンドブックに収録している種については自力で調べてもらっている。そのあと、飼育可能な生物を選んで持ち帰り、水族館の水槽に収容する。自分の採集した生き物が水族館で展示されることも、非常に好評だ。
 これまでに両イベントを合わせ、22回を開催し、延べ232名に参加いただいた。イベントを行うには宣伝を含め準備が多く、かなりの労力が必要であるが、イベントを機会に海の生き物に関心を持つ人が増えれば非常に有意義なことであるし、また当水族館について宣伝し入場者数の増加につながればとも考えている。

ニュースレター17号  2009年8月 教育ノート